News 2001年5月28日 09:57 PM 更新

“オープン化戦略”が効果をあげるメモリースティック──ソニーが賛同企業向けカンファレンスを開催

この5月で対応機器が1000万台に到達するメモリースティック。ソニーが,ライセンシー企業を集めてメモリースティックの今後について語った。

 ソニーは5月28日,メモリースティックライセンシー企業向けカンファレンスの「メモリースティックパートナーズフォーラム」を開催。ハードウェアベンダーやソフトウェア企業,部品メーカーなど現在157社いるメモリースティック賛同企業に対し,メモリースティックビジネスの現状や今後のロードマップについて説明した。

 ワールドワイドでのメモリースティック出荷枚数は,2000年度に1000万枚を突破,対応機器も,この5月で1000万台に達する見込みだ(3月16日の記事参照)。ソニーでは,メモリースティック関連機器の市場規模は,2000年度で8000億円,2002年度には2兆円規模になると予測している。


今年3月に出荷枚数が1000万枚を突破したメモリースティック。イメージング機器以外での積極的な採用が成長のカギとなる

 メモリースティックへの対応は,デジタルカメラやDVカメラなど,イメージング機器を中心に進んでいるが,ソニーでメモリースティック事業センター長を務める中川裕氏は,「ノートPCやPDA,ならびに携帯電話というマーケットがまだまだ残されている」と述べ,メモリースティックの本格的な普及はまだこれからだと強調した。

 コンパクトフラッシュ,MMC,スマートメディア,SDカードといったように小型メモリカードが乱立する中,対応製品の充実はユーザーの囲い込みを可能にし,シェアの増大に直結する。例えば,メモリースティック対応のノートPCを持っていれば,デジタルカメラの購入を考えた際,メモリースティックが使えるものにしようと考えるのは自然のこと。さらに,そのほかにもメモリースティックが使える製品を連鎖的に購入する可能性もある。

 「ワールドワイドの出荷枚数では,コンパクトフラッシュが大きなシェアを取っているが,メモリースティックも2003年には1億2500万枚を超え,対応機器も6000万台に到達するだろう。また,ここ最近,次世代メモリ媒体としてSDカードとメモリースティックが比較されているが,SDカードのシェアは現在2%程度。メモリースティックが大きく先行している」(中川氏)

 また,ソニーは6月にメモリースティック対応機器の接続検証を行える施設「メモリースティック互換性検証ラボ」を開設する予定(5月25日の記事参照)で,今後もメモリースティックの普及に向けて積極的にコミットしていくとした。

2004年には4Gバイトへ

 メモリースティックのロードマップとしては,2004年に4Gバイトに到達することが明らかにされた。メモリースティックは現在,128Mバイト版までリリースされているが,2002年に512Mバイト版が,2003年には1G,2Gバイト版がそれぞれ登場する予定だ。また,現行メモリースティックでは2.5Mbpsの転送レートも,容量の拡大にともない20Mbpsまで引き上げられるという。


メモリースティックDuoは2001年中に登場する予定。メモリースティックと同じタイミングで容量が拡大されていく

 またソニーは同日,メモリースティックビジネスの新展開として,マスクROMを搭載したメモリースティック「メモリースティックROM」(仮称)を提供することを発表した。書き換え可能なフラッシュメモリではなく,読み込みだけのマスクROMを採用することで,「比較的低価格で供給できるはず。既存のメモリースティック対応機器と完全に互換性があり,各種プロモーションなどで利用可能だ」(ソニーメモリースティック事業部長の矢永雅治氏)。なおROMバージョンは,6月に試作をリリースし,7月より受注可能になるという。


ソニーでは,プロモーション以外にもパッケージメディアとしてメモリースティックROMを普及させたいという。「ネットワークを介さなくても音楽コンテンツを入手可能になる」(ソニー)

 そのほかメモリースティックパートナーズフォーラムでは,プレゼンテーション会場とは別に,展示会場が用意され,各種メモリースティック関連製品が一同に並べられていた。


AcerのLinux OS搭載PDA。CPUにはDragonBallを採用し,本体上部にメモリースティックスロットを備えている


First International Computerのメモリースティック対応Webpad。CPUには,TM5400/500MHzを搭載する

 ソニーがメモリースティックの“オープン化”を提唱したのが昨年の10月。それ以降,メモリースティックの出荷枚数ならびに対応機器ともに順調な拡大を続け,先週末には,米Motorolaがメモリースティックのライセンス供給を受けた(5月25日の記事参照)。さらに今回,多くのライセンシー企業を集めてカンファレンスを開催するに至ったことで,ソニーのライセンス戦略が一定の成果を上げていると見ることができるだろう。

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[中村琢磨, ITmedia]

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