News 2001年6月27日 04:27 PM 更新

ピカピカのThinkPadがつや消しになった理由

今回発表された日本IBMのThinkPadは,前回の発表で話題を呼んだ鏡のように映りこむピカピカの塗装ではなく,ごく普通のつや消しになっていた。それには,ある理由があったらしい……。

 日本アイ・ビー・エム(IBM)のパソコン部門にとって,「今年最大の発表のひとつ」(一部関係者)だった「ThinkPad i Series s30」。その最大の売り物だったのが,ピカピカしていて鏡のように映りこむ,「ミラージュブラック」という,きょう体の特徴的な黒色塗装だった。

 ところが,今回発表された同シリーズの企業向けモデルでは,せっかくのそのきょう体の塗装が,元のつや消しになってしまっている(別記事参照)。


ピカピカのコンシューマー機「i Series s30」

つや消しになった法人向け機

 ピカピカのマシンが受けなかった……わけではない。実際,「ThinkPad i Series s30」の滑り出しは好調で,店頭でも同社のWebサイトでも,注文しても直ぐには納品されないぐらいだ。同社の通販サイトの担当者が,納品できない言い訳と,納期が遅れるお詫びのノベルティの調達に知恵を絞っている,なんてウワサもある。

 では,なぜ?

 実は,この「納期が遅れている」という点に,その理由が隠されている。同社自慢のこの塗装だが,実はこのテカリを出すために,まるで漆塗りのような工程を踏んでいるらしいのだ。つまり,下地を一回塗ってはしばらく乾かし,それから上塗りをして,また,当分乾かす――といった具合にやっているわけだ。

 いまどき,ノートパソコンのきょう体にそんな妙なこだわりを持つのも同社らしいが(同社には,往年の名機「ThinkPad 220」でマグネシウム合金を使うことを決めたはよいが,材料が手に入らず,世界中の金属商社に電話をかけまくったという“前科”がある。ようやく探し出したが,その後一時期,マグネシウム合金は同社の中で禁句になった,とされる),それでは確かに間尺にあわない。

 予想以上の人気だったため,生産が追いつかない,というのも,何を隠そう,この工程があるため。そうそうスピードがアップできないのだ(納品されない人,あなたのマシンは“乾かし中”なのだ)。同社は個人向けにも企業向けと同じつや消し(「フラットブラック」という)を出すことを急遽発表したが,これも塗装のボトルネックを何とか軽減しようという事情がその裏にあると囁かれている。

 となれば,外装よりコストや納期が重視される法人向けに,そんな手間隙はかけられない。今回は「つや消しで行け」となったのも,当然といえば当然の話だ。

 それともうひとつ,法人向けの場合,企業の購買担当者が「クリーニングクロス」まで標準バンドルされているピカピカの塗装に,贅沢の匂いを感じ,買うのを逡巡してしまう,ということもあるらしい。イマドキの企業にとって,贅沢は敵なのだ。もっとも,そうした購買担当者も,必ず自分のマシンだけは「ミラージュブラックにして」と頼むらしいのだが……。

 このドタバタ劇もピカピカ人気ゆえ。同社がこれに懲りずに次のコンシューマー機もピカピカ路線を踏襲できるのかどうかが,ちょっと気になるところだが,いずれにせよ,ピカピカした奴をもう手に入れている人たちというのは,これを考えると結構ラッキーな人たちなのかもしれない。

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[中川純一, ITmedia]

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