News 2001年6月28日 10:24 PM 更新

ビットバレーは死なず?

ネットバブル崩壊以後,あまり話題にならないビットバレーだが,決して死んだというわけではなさそうだ。

 ビットバレーは死んでいなかったのか?

 ネットバブル崩壊以降,東京・渋谷のネット企業集積地帯を示すビットバレーという言葉を聞く機会はめっきり減った。「ビットバレー=ネットバブル」というイメージが定着し,誰も使いたがらなくなってしまったからだろう。

 ところが,富士通総研(FRI)が,ネットビジネスに関わる人々の交流を図るNPOのビットバレー・アソシエーションなどがまとめた「東京のネット企業の実態調査」を見ると,ビットバレーはまだまだ過去の遺物ではないようだ。というのも,ビットバレーにオフィスを構えるネットベンチャーの数が,以前と変わらず増え続けているからだ。しかも,群を抜いてだ。

 FRIの調査によると,ビットバレーを拠点とするネットベンチャーの数は,121社(渋谷区全体では295社)。同2000年5月末時点の同じ調査では68社(渋谷区全体では204社)だったから,この1年間でほぼ倍増した。昨年のはビットバレーを上回っていた赤坂・六本木エリアも,今回の調査では95社で,ビットバレーに逆転されている。

 調査対象企業には,売上が年間10億円以上の企業も14%程度あるが,多くは5億円未満。丸の内や大手町ほど物件は高くないものの,決して安いわけではない。それなんのに,なぜベンチャー企業は,ネットバブル崩壊以降もビットバレーに集中するのだろうか。

 それは,ビットバレーの特徴的なビジネススタイルと関係がある。FRIが行った調査によると,人材採用方法についてビットバレーの企業は51%が「知人・同業者からの紹介」と回答。さらに,「業務のアウトソース先」についても,87.9%が「知人・同業者からの紹介」としている。特筆すべきは,これが都内ベンチャー企業の平均値を10〜20%も上回る数字ということだ。例えば赤坂・六本木エリアでは,人材採用方法について半数以上の企業が「新聞・インターネット媒体による広告募集」と回答。知り合いからの紹介と答えたのは4割に満たない。

 つまり,“友達の友達はみな友達だ”というビットバレー独特のビジネスの進め方があり,それがネットベンチャーの支持を得ているということになるのだろう。実際,渋谷区・富ヶ谷でWebサイトのシステム構築を行っているあるネットベンチャーは,「同業者が多いこのエリアだと,横のつながりが使えて,ビジネス上いろいろと便利だ。紹介の紹介で仕事が回って来ることもあるし,その逆もある」と話す。

 ただ,このベンチャー企業の社長は,「富ヶ谷がビットバレーに入るかは知らないし,自分たちはビットバレーの一員だとは思っていない。私の知る限り,ビットバレーと呼ばれることを好むベンチャー企業の経営者はいない」と付け加える。

 なるほど。仲間内でビジネスをするビットバレーの「精神」は死んでいない。死んだのは,ビットバレーという「言葉」だったようだ。

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[中村琢磨, ITmedia]

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