News 2001年6月29日 08:03 PM 更新

斜陽のデスクトップPC,未来はワイヤレスモバイルに(1)

PC EXPOからTECHXNYに名を変えたが,実は,中身は昨年よりも“PCっぽい”。アプライアンスは,PCに取って代われなかったようだ。

 「PC EXPO」が「TECHXNY」に変わり,PCは死んでしまったのか? いや,未だにPCの価値は変わっていない。PCの代わりになるデバイスがないからだ。その証拠に,昨年は「PCではなくアプライアンスエキスポだ」と揶揄されたこのイベントも,今年はすっかりアプライアンスが影を潜めた。せっかく名前を変えたというのに,中身は昨年より“PCっぽい”というのも皮肉な話だ。

 といっても,PCが活気を取り戻しているというわけではない。日本ではまだ元気な面も見せるPC業界も,米国ではマイナス成長が見込まれるほど市況が冷え込んでいる。急激なハードウェアの性能アップがソフトウェアの進化を追い越している状況が,この冷え込みを誘っている一因だだろう。

「デスクトップPCは斜陽の時を迎える」

 別件で話をしていた米Transmetaの上級副社長Jim Chapman氏に,TECHXNYの感想を聞いてみたが,その第一声が見出しにある言葉だ。確かにデスクトップPCは,端的に言えば「何でもいい」ものになってきた。


Transmeta上級副社長のJim Chapman氏

 もちろん,テレビチューナ内蔵やDVD-Rドライブの搭載など,トレンドやトピックスには事欠かないものの,どれも決定的にデスクトップPCを変える要素とはなり得ていない。ユーザーが触れるほとんどの部分に関して,デスクトップはどの機種も代わり映えがしない。この意見には筆者も同意するところだ。

 一方でノートPCは,その価値を高めており,市場での伸びも大きいとChapman氏はいう。これも多くの人が同じことを考えているように,うなずくところである。

 そして米国におけるスターバックス,日本におけるモスバーガーのように,スポット的にカバーされる802.11による無線インターネットアクセスや,同じく802.11を使った家庭内の無線LAN,PHSや次世代携帯電話による高速WAN接続,携帯機器同士を結ぶBluetoothなど,ワイヤレスモバイルの環境が整ってくるだろう。

 ノートPCが,人それぞれの使い方を映し出し,さまざまな形が存在するように,モバイルの形もさまざまだ。家庭内を動きながら,街を歩きながら,車で移動しながら,街のカフェでコーヒーを飲みながら,どんな場所でもPCなどのネット端末が利用されるようになる。そうした使い方がされるようになるために,ワイヤレスは必須の技術といえる。

 そしてワイヤレスに不可欠な要素が,バッテリライフだとChapman氏は続ける。もちろん,結論はCrusoeが,「次世代のワイヤレス環境に必要なプロセッサ」であるというものだ。(話がバッテリライフに向かうと,Tualatinベースの超低電圧プロセッサが登場しつつある今,話がややこしくなる。さらに将来のロードマップとなれば,推測,予測を織り交ぜて別のコラムになってしまうので,ここでは省略したい)。

 せっかくあらゆる場面でワイヤレスで自由にネットに接続できる環境が整っても,バッテリライフが短くては意味の半分はなくなってしまう。電源コードをつながなければならないのなら,ワイヤの数は2から1へと減るだけで,ワイヤ“レス”"ではないではないか。

 Chapman氏の話に新味があるわけではない。当たり前のことである。PCがこれからも価値を高め,より便利なツールとして受け入れられていくために,バッテリライフを延長するための努力は,(ソフトウェアが遅れている現状では)プロセッサパワーの進化よりも優先されるべきだろう。

 省電力プロセッサに本腰を入れる素振りを見せているIntelを,Chapman氏は「ようこそ」と歓迎する。まだ戦いは始まったばかりで,ゴールは遙か彼方にある。

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