News 2001年6月29日 08:03 PM 更新

斜陽のデスクトップPC,未来はワイヤレスモバイルに(2)

あらゆる場面で高品質の映像を楽しむ

 もっとも,ワイヤレスが今後のPC(あるいはデジタルデバイス)業界の未来を担っていることは,言うまでもないことだ。問題はそれをどのように使うのかである。今のまま,インターネットをワイヤレスで使えるようになればいいのか? 家電業界に身を置くソニーは,PC業界のお堅い考え方とはひと味違うビジョンを持っている。

 ソニー・モバイル・ネットワーク・カンパニーのプレジデント,島田啓一郎氏と食事をしながら雑談していると,ちょうどワイヤレスの話になった。「個々の機器をアドホックで接続するのも802.11ベースにして,プロトコルをアドオンすることで実装してしまった方がシンプルでいいんじゃないか,消費電力は出力を絞ればいいんだから」と水を向けたところから始まった。

 ハッキリと結論が出たわけではないが,ソニーとしては街中のスポット的なアクセスポイントは802.11b,機器間接続はBluetooth,これに次世代携帯電話やPHSによるWAN接続を組み合わせる方向のようだ。「機器間接続はBluetoothを使うことで合意している。その部分では間違いなく普及するはず」と,島田氏は話す。さらに「家庭内は802.11aをオファーしていく。映像を楽しんでもらうためには802.11aの帯域が必須だから」と続けた。

 ソニーのノートPCと言えば,一風変わったデザインや独自のソフトウェア,最近でこそ一般的になったものの,早期からIEEE1394を標準搭載してきたこと,ビデオカメラとPCを融合したVAIOノートGTなど,他とは違う発想の製品を世に送り出している。

 また,Net Walkman,メモリスティック,ネット上の画像共有サービス,先日発表されたNetMDなどなど,実にさまざまな,面白そうな,ソニーらしい(?)ことをやり続けている。

 「それぞれ好き勝手に遊び的要素を含めながらやっているように見えるかもしれないが,向かっている場所は一緒。あらゆる場所で,映像や音楽,写真を楽しんで欲しい。まだまだ,やれていない,楽しいことがたくさんある。我々のカンパニーが作っているのはバイオノートだが,映像をネットワークの中で楽しむためには,PCのようなキーボードが付いた汎用のデバイスは実に都合がいい。そのうち,きちんとすべての話がつながってくる」(島田氏)

 余談だが,島田氏は元々,パスポートサイズハンディカムの開発に携わっていた人物。本人は同時のことを話したがらないが,ソニー社内の人間によると「エース格」。昔はPCをほとんど使わず,オアシスを使ってドキュメント作成を行っていたとか。

 「PCの事業部に来て,さまざまなPCを日々使ってきた。これほど便利なものはない」と話す言葉の端々には,バイオがソニーのワイヤレスネット戦略の中核に位置することを匂わせている。「われわれは,映像中心にアプリケーションを考えている。Windows XPでデジタルメディアのサポートが強化され,各社はこの分野にどんどん入ってくるだろう。しかし,映像の世界はソニーが得意とする分野。自分のフィールドで戦えるのは好都合」(島田氏)

 ソニーの戦略は別にしても,PCを核にネットワークでさまざまなデジタルデバイスが接続され,新しい使い方を提案していくという考え方は,現在のPC業界の流行でもある。しかし,単に繋がるだけでは,そこでストップしてしまう。そこで何をやろうとしているのか,きちんと意図して物事を進めることの重要性を,島田氏との話でひしひしと感じた。

 ハッキリとした意図を感じる物作りは重要だが,それだけでは足りない。その足りない何かを埋めることが,PCの価値を再び高めることになる。

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[本田雅一, ITmedia]