News 2001年8月24日 11:16 PM 更新

リアルすぎて怖いくらい――セガトイズの手型ロボット「芸手」

虫型ロボット,犬型ロボットなどなど,玩具業界ではハイテクものが大流行。中でも,手首から上を石膏で固めたようなセガトイズの「芸手〜ゲーテ〜」は,リアリティあふれる動きで,異彩を放っている。

 バンダイの自立型虫ロボット「ワンダーボーグ」,セガトイズの犬型ロボット「プーチ」など,ハイテク玩具が注目を集めているのはご存知の通りだ。夏休み中,子どもたちで賑わうデーパートの玩具売り場に行ってみると,これらハイテク玩具は,売り場入り口という“一等地”にディスプレイされており,業界の期待がいかに大きいかがよく分かる。

 知ってるもの,知らないものを含め,想像した以上にさまざまなハイテク玩具がある。ZDNNで取り上げるのは,いちおう“テクノロジーの香りがするもの”に限っているため,“ボーダーライン”の製品はけっこう見落としていたようだ。


謎のハイテク玩具「芸手〜ゲーテ〜」。パッケージには「驚異の手クニック」と子供向けなのに親父ギャグ
 そんな中,“不審”な動きを見せているある玩具が目にとまった。セガトイズの「芸手〜ゲーテ〜」である。PTAのおばちゃんが見たら,「玩具売り場にはふさわしくありませんわ!」と激怒しそうなほどの,“怪しい動き”なのだ。

 もちろん,買うしかない!……のだが,ヒット商品なのか在庫がないとのこと。無理矢理ディスプレイ品を売ってもらった次第である。価格は1980円。単3型アルカリ乾電池×2本をおまけしてもらったことが唯一の救いだ(東急東横店のお姉さん,どうもありがとう)。

ゲーテが阿波踊り

 では,芸手〜ゲーテ〜を紹介しよう。

 ちょうど,手首から上を石膏で固めたようなデザイン。芸手〜ゲーテ〜は,本体スピーカーから流れる曲にあわせて,人差し指・中指・薬指・小指・親指の5本が動く。単に指が動くだけなら,わざわざレビュー(?)などしないのだが,とにかくこの動きが滑らかなのだ。むしろ,激しいといったほうが正しいかもしれない。 あまりにもリアルなので,気味が悪いほどだ(もっとも,真っ白な手なんて,それだけで気味がいいはずもないのだが)。対象年齢が12歳と,ロボット玩具にしては高めなのも,もしかしたらこの動きが関係あるのかもしれない。


「芸手」のネーミングは,もちろん,ドイツ古典主義で知られる詩人,ゲーテからきている。まさか21世紀になってこんなかたちで名前が使われることになるとは……(動画を見る【mpeg1形式】

 プリセットされる曲は,幻想即興曲・子犬のワルツ・別れの曲・主よ人の望みのよろこびよ・ねこふんじゃった・阿波踊りの6種類。曲によって,指の動きもそれぞれ異なる。クラシックから童謡,それに阿波踊りとは,ゲーテも災難だ……。

14自由度で,力強いタッチ

 ロボットの性能を計る一つの指標に,可動部分の数を示す「自由度」というものがある。例えば第2世代の「AIBO」の場合は20自由度。つまり,全部で20カ所を動かすことができるという意味だ。当然,自由度が多ければ多いほど,動きは本物に近くなっていく。また,AIBOの場合だと通常はあまり動かさないはずの耳も可動式にするなど,現実に縛られない表現方法もある。

 翻って芸手〜ゲーテ〜はどうだろうか。自由度について公式な数値は出されていないが,かなりの数があるに違いない。が,数えてみたところ,芸手は14自由度。本物の指と同じだ。そんなはずはないと,再び数えてみるもやはり14自由度しかない。それでも,本物よりもスムーズな動きをする芸手〜ゲーテ〜。うーん謎だ。どうしてこんな動きができるのか不思議である。


手の甲(写真上)は,血管がものすごく浮き出ていてこれまた気持ち悪い。「なんか力が入りすぎってかんじ!」(セガトイズ)。本物の指と同じだけ間接がある(写真下)

押しつけるとソフトタッチに

 やはり玩具といったところか,芸手〜ゲーテ〜の芸はこれだけだ。曲にあわせて指を動かす以外には,何にもできない。ただ,高い完成度を誇る芸手だけに,今後,この技術を応用した手型ロボットが登場することに期待しよう。それに,1980円という値段を考えれば,これだけでも満足である。

 でも,せっかくなので,ほかに何か使い道がないか考えてみた。

 やはり,まず思いつくのは,キーボードを打たせてみることだ。指を器用に動かす芸手〜ゲーテ〜には,もってこいのはず。最近,腱鞘炎気味なので,芸手〜ゲーテ〜が代わりに打ってくれたら大助かりだ――「gんbgjh,フィghbmdfvfhんjrfvcbんkm。hj,,n」――やっぱりだめか。それに,激しすぎてキーボードが壊れそうだ


キーボードを打つ芸手〜ゲーテ〜の図。当然のごとく,失敗

 じゃあ,ベタではあるが,マッサージ器としてはどうだろうか。芸手〜ゲーテ〜の動きは,なかなか力強い。子どもが眠ったあとは,お父さんがマッサージ用に使えば,まさに一家に一台,なくてはならない玩具となるだろう。そこで,新人記者で試してみたが,芸手〜ゲーテ〜は意外とソフトタッチであることが判明。押し付けてしまうと,動きが遅くなる。

 それでもこの新人記者によれば,「ちょっと浮かす感じで使うと,バッチリっす,なんか変な感じになってしまいました」とのこと。これが「手クニック」の実力か。


「意外と,気持ちいいっす」(新人記者のS浦君)。セガトイズさん,芸手〜ゲーテ〜の応用で,「自律型マッサージロボット」なんて作ってみたら売れるかもしれませんよ

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関連リンク
▼ 芸手〜ゲーテ〜ホームページ

[中村琢磨, ITmedia]

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