News 2001年8月31日 09:01 PM 更新

こっちを向いてよ,Pentium 4

 米カリフォルニア・サンノゼで開催されているIntel Developer Forum(IDF)Fall2001で,「Intel Innovative PC Award」の受賞製品が発表された。IDFに関しては,すでにたくさん記事があがっているので,そちらを参照していただくことにして,ここでは,前回に引き続き,その雑感をレポートしておこう。


「Intel Innovative PC Award」授賞式

 まず,受賞製品は,次の7製品だった。

カテゴリ 受賞製品
ノートカテゴリ HP「Omnibook 6100」
IBM「ThinkPad A Series」
IBM「TransNote」
Samsung「Matrix II + GT -9000」
デスクトップカテゴリ HP 「Vectra vl800」
IBM「NetVista X Series」
ソーテック「PC Station E4150AV」

 もはや,説明の必要がないくらいに有名なメーカーの有名な製品ばかりだ。今回からは,ノートとデスクトップのカテゴリに分類され,受賞7製品のうち,4製品がノートPCになっているというのも時代の流れなんだろう。日本のメーカーは前回に引き続き,ソーテックが受賞しているが,ムラマサでおなじみのシャープの「メビウスPC-MT1-H1」くらいは,壇上で表彰される実力は十分に持っていたんじゃないかと思う。

 このアワードは,Intelの提唱する“Ease of Use イニシアティブ”の一環として開催されているものだが,前回までは,「かっこいいPC」系の製品が選ばれることが多かった。でも,今回の受賞製品を見ると,かなり堅実な路線を感じるのだ。

 選ばれた製品も,IBMとHPという“業界の巨人”によるものが4製品を占めている。IBMのTransNoteのように,従来のPCとは明らかに違う路線のものも含まれているとはいえ,明らかに面白みがスポイルされている。

 今年から,選考に,第三者機関として Ziff-Davis PC Laboratories が加わり,選考過程に同社のシステム・テストが採用されたということだが,それも選考結果に影響を与えているのだろうか。うがった見方をすると,ベンチャーに近いようなメーカーは今,特徴があり他社製品と差別化できる製品を,作れなくなってきているという考え方もできる。

 別記事ですでにレポートされているように,IDFの会場には,Intel自身が提案しているコンセプトモデルも展示されていた。これらは,すべてPentium 4/2GHzを搭載しているが,驚くほどコンパクトにまとめられている。

 各モデルともに,電源ユニットが外付けなのは,ちょっとずるい気がするが,大きなヒートシンクが必要で,発熱量の高いPentium 4を,これだけコンパクトなボディに「かっこよく」まとめることのできるパッケージング技術は評価できる。

 来年初頭には,Northwoodのコードネームで知られるモバイルPentium 4が登場するそうだが,そのパッケージングは各メーカーの腕の見せどころだ。メルコなどのメモリモジュールメーカーの話を聞くと,デスクトップマシンも,SODIMMを使うような方向に動く傾向があるそうなので,通常のPentium 4はもちろん,モバイルPentium 4を使ったイノベイティブPCというソリューションもあるかもしれない。

 でも,そんなオリジナリティあふれる製品を作る余力があるメーカーが,少なくなってきているのではないかというのが心配なのだ。

 かすかな期待はWindows XPだ。コンシューマー向けのPCの世界を大きく変える魅力を持ったOSだと思う。でも,PCの世界は企業ユースが原動力になって推進されているような面があるので,コンシューマー市場が,多少盛り上がったところで,大きな変革は起こらない。メーカーとしても,コンシューマー市場はなかなかビジネスになりにくいので,熱心になれないという事情もある。でも,今の時期だからこそ,コンシューマー市場主導のPCのトレンドが作れるんじゃないだろうか。

 いにしえのパーソナルコンピュータが,本当に個人のものであったにもかかわらず,その地位は,すっかりゲームコンソールに奪われ,ビジネスの武器としてのみの面がクローズアップされるようになって久しい。

 Intelは,Pentium 4のリリースにあたって,最初は,コンシューマー市場にフォーカスしたものの,その浸透には思った以上に時間がかかり,ビジネスユースへのフォーカスが始まった。だが皮肉にも,845チップセットの登場により,コンシューマーに手の届きやすい価格で,Pentium 4システムが入手できるようになる。にもかかわらず“業務用冷蔵庫を家庭で使う”ような状況は,まだまだ続くのだろうか。でも,Pentium 4が時代のニーズを満たすプロセッサであるのなら,Windows XP登場の追い風を利用して,大きくはばたいて欲しいものだ。

 IDFのキーノーツスピーチでは,米国の発明家,Charles Ketteringの言葉が,繰り返し引用された。

「I believe business will come back when we get some products that people want to buy」(1933)。

 訳すまでもないだろう。分かっているなら,努力して欲しい。IT不況はきっと乗り切れる。

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関連リンク
▼ IntelのIDF 2001公式サイト

[山田祥平, ITmedia]

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