News 2001年9月7日 10:02 PM 更新

電波時計――残された普及までのハードルは?

 10月1日から,九州に建設中だった長波帯標準電波送信施設が「はがね山標準電波送信所」として正式運用を開始するそうだ。新しい送信所は,福岡県と佐賀県の県境羽金山山頂付近に設置され,送信周波数は60KHzとなる。

 ちなみに,従来から運用されていた「おおたかどや山標準電波送信所」(福島県田村郡都路村)の周波数は40KHzだった。従って,今後発売される電波時計の中には,九州局と福島局の周波数を切り替えられるものが出てくるだろう。

 これで,日本全国をほぼカバーできるようになるので,実用性も向上するはずだが,新しい周波数の電波を捕まえるためには,時計を買い換える必要がある。また,安定して受信ができる有効半径を500キロと考えると,新送信所の運用後も,北海道の北の方ではちょっと辛いところもあるかもしれない。電波という有限の資源を使っている以上は,こういうことが起こってしまうということだ。

 ターミナル駅周辺の時計量販店をのぞいてみると,ひとつのコーナーというよりも,かなり大きなスペースで電波時計を扱っているのを見かけることができる。最初は,無骨なデザインのものしかなかった電波時計も,置き時計,腕時計を含めて,デザイン的な余裕も出てきた。

 うちで使っている時計のほとんどは,電波時計に置き換えてしまった。そのうちのひとつ,セイコーのSQ609Sなんかは,かなりデザインが気に入っているのだが,せっかくの電波時計なのに,秒の表示がないのがちょっと惜しいところだ。

 このコラムでも,2年ほど前に,電波時計を取り上げた(1999年11月12日の記事参照)。あのときに紹介した腕時計は,今も現役で時を刻み続けている。懸念された電池も,まだ,交換時期には至っていない。普段常用しているのは,まさに,この時計だ。

 カシオの腕時計製品を見ても,バリエーションは増えている。さらに,9月の新製品として,wave ceptorシリーズのニューモデルが4タイプ7モデル追加された。

 ぼくが今使っているものは,針式の時計にデジタル液晶表示が浮かぶ,ツインセプトというタイプのものだが,デジタル表示の時刻は正確でも,しばらく使っていると分針に誤差が出てくるので,針を手動で合わせてやらなければならないのがめんどうだ。今度,買い換えるときには,デジタル表示のみのものにしようかなと,いろいろな製品を物色中だ。

 カシオの新製品は,先日,同社本社で開催されたPress Galley (9月4日の記事参照) で見せてもらってきた。ただ,腕時計の電波時計に関しては,新製品もすべて40KHzの受信のみで,新しく運用を開始する60KHz電波に対応できないのが残念だ。が,現時点ではまだ書けない製品なども参考出品されていたので,今後に期待が膨らむ。

 こうして,選択肢が増えてくるのはうれしい。ただ,今は,腕時計の売り上げが飛躍的に伸びているわけではない。これは,携帯電話の影響かと思っていたのだが,実際,カシオの広報の方の話を聞くと,携帯電話があるから時計を持たないというのではなく,携帯電話の通信費を払うために,時計を買う余裕がなくなっているというのが正解なのだそうだ。

 何種類かの腕時計をそろえておき,その日の気分や洋服に合わせて付け替えるというのは,その昔には常識中の常識だったわけだが,今ではとてもそうはいかないんだという。

 加えて,電波時計などは,なかなか内部の回路やアンテナ部分を小型化するのが難しく,女性の華奢な腕に似合うようなデザインの腕時計に仕上げにくいという点もある。今度はどれがいいかなと,もらってきたカタログを見ていると,家人がうらやましそうにのぞき込むのだが,どうも彼女の腕にぴったりと収まるような小さな電波時計が出てくるには,もうちょっと時間がかかりそうだ。

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[山田祥平, ITmedia]

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