News 2001年9月17日 11:34 PM 更新

ディールタイムはなぜ消えた――国内ドットコム企業がサービスを止めるまで(1)

設立から1年半でサービスを中止した商品比較・検索サービスのディールタイムドットコム。大手企業が資本参加し,国内ドットコム企業では磐石の地盤を持つと思われた同社がなぜそうなったのか。山田社長自身に語ってもらった。

 これほど短命なドットコム企業も珍しい。8月末にサービスを中止した商品比較・検索サイトのディールタイムドットコムのことだ。2000年2月の設立から1年半。実際にサービスを提供した期間は1年にも満たない。会社を法的に清算したわけではないが,事業再開の可能性はゼロに近い。

 米DealTimeの日本法人であるディールタイムには,ジャフコや三井物産,オムロン,ならびにクレディセゾンなどの大企業が出資し,資本金は10億6000万円にのぼった。それにもかかわらず,短期間で「予定していた資金の調達が行えず資金繰りが悪化し,サービスを継続することが困難になった」(同社広報)のはなぜか――。ディールタイム社長の山田哲氏に話を訊いた。

 同氏によれば,10億6000万円というドットコム企業の日本法人にしては大規模な資本金は,「最初の1年で使い切るために用意された」ものだった。一般消費者向けに商品の比較・検索サービスを提供するからには,サイトの認知度が重要だという考えから,ディールタイムでは資本金の3〜4割を新聞・雑誌への広告掲載に費やした。

 マーケティング費用に3億数千万円の金額を投じたのは,最初の1年は規模を拡大するための投資期間と位置付けられていたからだ。「2002年に黒字化を達成し,2003年にIPOする計画だった」(山田氏)。

ドットコム企業への厳しい風当たり

 ところが,ネットバブル崩壊が決定的になると,雲行きが怪しくなってくる。

 ディールタイムの事業計画では,最初の1年で資本金を使い切り,2年目以降に増資を行うことになっていた。しかしながら,「2000年7月頃は,増資計画について株主の同意を得られていたのだが,連日のようにドットコム企業の不振が伝えられるようになると,ディールタイムの将来性についても懐疑的になってきた」(山田氏)。

 また,米DealTimeは2001年内の黒字化を目指して正念場を迎えているだけに,日本法人に資金を提供する余裕はなかったという。

 ただ,これは全く予想しなかった出来事というわけでもない。もともと,設立当初の株主は資本金を用意することが主な役割であり,10億6000万円という金額を提供している以上,必ずしも増資に応じる必要があるという条件ではなかった。そして,山田社長は増資に関しては新規株主を見つけることも必要かもしれないと考えていた。  そこで,「会社を設立した頃に挨拶を交わした関係者に,増資を打診してみた」。しかしながら「山のような名刺も意味をなさなかった」(同氏)。

 このとき,山田氏が受けた印象は,商品比較・検索サービスへの評価が低いというよりも,ネットビジネス,特にコンシューマ向けのビジネス自体が敬遠されているというものだった。

 確かに,ネットバブル崩壊でドットコム企業への風当たりが強くなっている状況で,利益の出ていないディールタイムの増資引受先を探すのが困難を極めるのは,当然と言えば当然のことだったのかもしれない。

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