News 2001年9月17日 11:34 PM 更新

ディールタイムはなぜ消えた――国内ドットコム企業がサービスを止めるまで(2)

事業計画の見直し

 増資が見込めない以上,ディールタイムには,事業計画の見直しを図るしか道は残されていなかった。そこで2001年1月以降は,マーケティング活動を一切ストップ。社員の新規採用も中止した。

 また,ビジネスデベロップメントを強化するため,リクルートの「ISIZE」と提携するなど,他サイトに商品検索エンジンを提供する共同ブランド戦略を強化。2001年3月には,日本テレコムのインターネット接続サービス「ODN」と提携する。

 さらに,「5〜7月は営業が好調で,大手ポータルサイト2社に検索システムを提供することも決まっていた」(山田氏)という。

 続いて,今年の秋にはパートナーサイトへの誘導にアフィリエイトプログラムを導入する予定だった。

 ディールタイムのWebサイト,ならびに提携サイトから検索エンジンを通じてパートナー企業のECサイトにユーザーを誘導した場合,ディールタイムには1ユーザー当たり最大で50円支払われる仕組みになっていたが,アフィリエイトプログラムでは,そのユーザーが実際に商品を購入した場合にパートナーから料金を徴収することになる。

 資本金の範囲内で事業を継続し,利益を上げる体質へと改善を図っていたディールタイムだが,その甲斐空しく2001年8月末で資本金が尽きてしまう。山田氏は「あと2〜3億円の増資があれば,2002年3月には黒字に転換することは可能だった。この段階でサービスを中止するのでは,すべてが中途半端だ」と唇を噛んだ。

山田氏への批判

 「ネットバブルの崩壊が分かっていたのに,大規模なマーケティングを行う必要があったのか」。サービス中止決定以降,山田氏はこう批判されることがあるという。

 「確かに,2000年4月のナスダック暴落でネットバブルは崩壊した。だが,当時は陰りが見え始めたという程度の認識でしかなかった。それは,ディールタイムも株主の企業もそうだった。今から振り返ると,マーケティングの費用を抑えてもよかったのかもしれないが,それは結果論でしかない」(山田氏)。

 また,山田氏は「大企業が株主にいる会社で,当初計画にある資金繰りに苦労するとは想像していなかった」と自らの“油断”を認めたうえで,「自分で資金調達をしていれば,他にやり方があったかもしれない」と振り返る。

 実は,山田氏はディールタイム設立の枠組みがある程度決まった段階で日本コカ・コーラからヘッドハンティングされてきた経緯がある。「当初から関わっていて,株主の“期待度”に接していれば,その時点で信頼関係を築くことができただろう」(同氏)。

 現在は,ディールタイムの残務処理をこなすとともに,就職活動中という山田氏。東京銀行(現東京三菱銀行)から,消費者を直接相手にしたいという思いで日本コカ・コーラに移ったように,「これからも,消費者の“顔”が見えるビジネスに挑戦したい」とコンシューマービジネスへの意気込みは健在だ。

 ただ,ドットコム企業にこだわるつもりは,もうないという……。

【お詫びと訂正】9月17日付け記事の中に,一部事実とは異なる内容が含まれていました。山田哲社長ならびに関係者各位にご迷惑をおかけしたことをお詫びし,訂正いたします。

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[中村琢磨, ITmedia]