News 2001年11月1日 04:35 AM 更新

ピンク屋根の向こうに,パソコンショップの明日が見える――「有楽町ソフマップ」オープン(2)

 よーく見ていくと,違和感の正体が次第に見えてくる。たとえば,店の中央。この一番良い,しかも広い場所を占めているのはMacとソニーのVAIOだ。一般的なパソコンショップでは,MacはMacの売り場を作り,VAIOはWindows系のPCと並べてあるはず。だが,このお店はそうしていない。その他のメーカーのPCなどは,(近くだが)また別の場所に置いてある。あくまで,“VAIOとMac”なのだ。

VAIOコーナーとMacコーナー。その他のPCは“パソコン本体”コーナーにある

 「特にソニーやアップルとタイアップしたとか言うわけではない。ただ,今回のお店のコンセプトと,この2社の製品ポリシーがよく合っていたので,自然と中心になった」(同)。パソコンはOSなどのテクノロジードリブンで分けて展示するもの――パソコンショップならアタリマエに守ってきたこの暗黙の了解が,ここでは崩れている。あえて言うなら,このお店はまずデザインありきだ。若い女性が「かわいい!」と言いそうなものから,良い場所を占めている。

 そしてVAIOのそばにあるのは,AIBO。VAIOやMacを見ながら,AIBOでちょっと遊んで……。同じようなスペックのマシンが一箇所に集まっていて,カタログ片手にスペックで比較検討してという従来型量販店での店内行動の常識とは,ちょっと違うのだ。

VAIOコーナーにはAIBOがいる。AIBOのオプション類も置いてある

 掟破りは,店内の配置にも表れている。680坪という店内は,入り口に携帯。入ると右にデジカメとPDA,シリコンオーディオ,左にDVDのソフトとハードだ。次が右にアクセサリ類で,メディアや雑貨も置いてある。左はゲーム類だ。

アクセサリコーナーには,パソコンとは縁のなさそうな文具・雑貨も。私はどこにいるのでせう?

 柱を挟んで次が雑誌・書籍。そしてVAIOとMacのコーナーを中心に,左にパソコンソフト,右に本体やプリンタ,ディスプレイ,かばんなどがある。その奥は,ドライブ/通信機器,アセンブリパーツや中古と続く。

雑誌売り場にはパソコン書籍と並んで女性雑誌のコーナーも

 並べ方の意図がわからなかったので尋ねたのだが,答えを聞いて思わず笑ってしまった。「技術的なサポートをしなくてもよいものを入り口近くに置き,奥に行くほどだんだん難しくなっていく」(畠副店長)のだそうだ。よって店の一番奥の奥,行き着く果てにメモリ売り場のカウンターがある。

 こうなるとなぜ中古のマシンや周辺機器を積極的に置いてあるのか不思議だ。中古は訳のわかったユーザー向き,というのが「過去の常識」だからだ。

 だが,店の考え方は違う。「どこか小汚いイメージがこれまでのパソコン中古にはあったが,それを払拭したい。例えば古着屋で古着を買うような印象を持たせたかった」(加藤店長)。だから中古品の売り場にも製品カタログがある。製品もちゃんと磨かれている。並べ方もきれい。無論,保証を付けることも出来る。動作保証をしないジャンクなんかは置いていない。

 接客も丁寧で,売らんかなのやり方はしないと言う。「重視しているのは顧客満足度」(同)。店員ではなく“アテンダント”。その名刺には「次回も私が対応します」と刷り込んである。アパレルなんかのように,店員(失礼! アテンダントだ)が顧客のアドバイザー役になり,その固定化を図っていこうとしているわけだ。

 パソコンショップはここまできた。「うちは相性の問題はサポートしないよぉ」とか「おたくぅ,これSCSIだけどいいのぉ」とタメで話し掛けてくる無愛想な互換機ショップの時代は,遠い遠い過去のものになりつつある。ここなら,余裕でデートコースにも加えられるだろう。

パソコンを知らない女の子もこれなら大丈夫? しかしここはどこ……

 ピンク屋根の中には,新しいパソコンショップの形があった。未来はいい方向に進んでいる――それは間違いなさそうだ。ただ,だんだん自分の居場所がなくなっていきそうなのが,ほんのちょっとだけ,寂しい。

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[中川純一, ITmedia]