News 2001年11月22日 11:57 PM 更新

真の“癒し系ロボット”はどこに?

ロボットの役割の1つに,“癒し”があることは間違いない。だが,実際にロボットに癒された経験がある人はいるのだろうか?

 癒し系ロボットについて考えてみたい。癒し系と聞いて,どんなロボットを想像するだろうか? ある人は,井川遥のような女性型ロボットを思い浮かべるかもしれない(そんなもの存在しないが)。またある人は,「AIBOが癒し系」と言い張るだろう。

 はっきりいって,定義するのは不可能に近い。言ったもの勝ちの世界だ。自分で記事を書いておいて何なのだが,癒し系をうたったタカラの「む〜(Mu)」は,記者には正直なところ,どこが癒し系なのか分からなかった。何に癒しを感じるかは,人によって違うのだ。

 ところが,だ。“最大公約数的”な癒し系ロボットがいたのだ。国際電気通信基礎研究所(ATR)メディア情報科学研究所の「む〜(muu)」である。


これぞ癒し系ロボットの大本命,ATRメディア情報科学研究所の「む〜(muu)」。奇遇にも,タカラの癒し系ロボットと同じ名前だ(英語表記がMuとmuuという違いはあるが)。このmuuという言葉は,「目」を意味する中国語に由来するという

 む〜の姿を見て,「どこが癒し系なんだ!」と怒る人もいるだろう。記者も,最初はそう思った。だが,だんだん可愛らしく思えてくるから不思議なのだ。ATR情報科学研究所によれば,その理由は,む〜は,動物行動学者のKonrad Lorenzが「幼児図式」として整理したものと良く似た特徴を持つからだという。

 例えば,大きな目,ふっくらとしたほほ,ぎこちない動き,丸みを帯びた体型,やわらかくて弾力的な体表……などは,Lorenzの幼児図式を踏襲したのだという。幼児図式は,「赤ちゃんらしさ」と言い換えることもでき,成人が保護欲をかきたてられるのは,必然なのだとも言える。ただ,なぜあんなに目玉がギラギラしなければならないのか,疑問は残るのだが……。


写真で見ると(しかもアップで),気味が悪いだけのような気もする……

 動きでは,「ぎこちない動き」ができているかが重要になるが,む〜は,ビクビク振動しながら関西弁を喋る。デザイン同様,ちょっとやり過ぎなような気もするのだが,トータルバランスがいいせいか(デザインがデザインだけに,控えめなパフォーマンスはかえってバランスを悪くする),意外にすんなりと受け入れることができた。気がつけば,む〜の虜というわけだ。

 だが,全ての癒し系ロボットがむ〜のように前衛的でも困ってしまう。む〜は,誰もが納得する究極の癒し系ロボットであることは認めるとして,もうちょっと,マイルドなやつもほしい

 例えば,三洋電機の「Hopis」(ホピス)がなんかどうだろう。


「ペット型健康管理ロボット」のホピス

 ホピスは,在宅健康管理用のペットロボットである。遠隔医療のインタフェースになるロボットで,血圧計や体重計で計測したデータをホピスに転送すると,自動的に主治医の端末にそのデータを送ってくれる。

 そして,医師の問診や栄養士のアドバイスを音声で知らせてくれる。その何ともいえない,アンニュイな表情が,主人に安心感をもたらしてくれそうだ。三洋はお掃除ロボットの「じそうじ丸」でもそうだったように,ロボットのデザインは可愛らしい路線で統一していく方針のようだ。


こちらは,1人暮らしの高齢者を対象にした松下電器産業の対話型ロボット「こうちゃん」。やはりこういった用途では,ロボットらしくないぬいぐるみのようなデザインが受け入れられるのだろう

 そしてやはり,NECが今年3月に発表した「PaPeRo」も癒し系ロボットから外すことはできない。癒し系ロボットとはいいつつも,実は本当の機能は別にあったりするのが相場だが,PaPeRoの場合,純粋に「癒し」を求めたところが潔い。む〜が癒し系ロボットの極北だとすれば,PaPeRoは王道といったところだろうか。


「ロボフェスタ2001神奈川」の会場でAP通信のカメラマンも目を付けたPaPeRo。でもどうせなら,お姉さんのほうに癒されたい──が記者の本音だったりもする

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[中村琢磨, ITmedia]

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