News 2002年1月12日 00:37 PM 更新

Transmeta,統合型プロセッサで家電市場に進出

Transmetaは今年10月に出荷予定の統合型プロセッサ「TM6000」で,家電市場への進出を図る方針を明らかにした。また,同社幹部は,噂される東芝との関係悪化について「事実ではない」と否定した。

 Transmetaのブランディングディレクター,Frank Priscaro氏は「Consumer Electronics Show2002」会場近くのホテルでインタビューに応じ,今年10月に出荷予定の統合型プロセッサTM6000で家電市場への進出を狙うと話した。

 PCクラスのパワーを必要とする「ネットワーク化されたワイヤレスデバイス」へと売り込みをかけるほか,「レジデンシャルゲートウェイ」など家庭向けサーバへの搭載も狙う。また256ビットアーキテクチャを採用する次世代Crusoeに関しては,2003年前半に登場する見込みだ。

 TM6000は,昨年秋のマイクロプロセッサフォーラムで名称が明らかになった,PCのシステムをワンチップに収めた統合型のプロセッサ。従来のCrusoeも,PCチップセットのうち,メモリコントローラやPCIコントローラなど“ノースブリッジ”に相当する部分が統合されていたが,TM6000ではPCに必要とされる各種I/Oやディスクコントローラ,DVD再生支援機能付きグラフィックコントローラなどを内蔵。メモリコントローラも,DDR333をサポートするようになる。

 なお,これらのデバイスが新たに統合されるため,x86命令のエミュレーションを行うCMSのバージョンは現在の4.2から5.xへと変更されるという。これはグラフィックやディスクI/Oの処理を,CMS(Code Morphing Software)環境下でより効率よく処理するためだ。

 TM6000のプロセッサコアは,今年2月に量産体制へと移行する0.13ミクロンプロセスの第2世代Crusoe TM5800と同じもので,クロック周波数は1GHzになる見込みだという。一方,2月に800MHzでスタートするTM5800も,第2四半期になるまでは1GHzに達しないようだ。

 Transmetaは,このTM6000を,従来Crusoeが採用されてきた小型ノートPC以外へもプロモーションしていく方針。TM6000はTM5800にグラフィックスコントローラやサウスブリッジを組み合わせた時と比較して,実装面積で1/3以下(約790平方ミリ),消費電力は2/3で済むという。つまり,より小さく,より低消費電力なデバイスへの応用が可能になってくるわけだ。


Priscaro氏は上からも下からも,あらゆるデバイスがCrusoeの得意とするゾーンに入ってくると話す

 Priscaro氏は「PCよりも小さなコンシューマデバイスにも,ワイヤレスの広帯域ネットワークが整うにつれ,PC並のパワーが必要になってくる。一方でPC側もワイヤレス化が進めば低消費電力で小型のデバイスへとニーズが向かうのは自明だ」という。

 その上で「米国のベンダーは新しいカテゴリの開発やフォームファクタの改良に対して保守的だが,日本のベンダーは非常に革新的なパッケージの製品を開発しようとする。我々は引き続き,イノベーティブな製品を作ろうとするベンダーに対して,様々な提案を行っていきたい」と,日本企業に積極的にアプローチをかけていく」と話した。同氏によれば「TM6000を利用すると,最終製品の価格を下げることができる。小型デバイスの価格下げ圧力は強いため,この点でも優位点がある」という。

 一方,256ビットの次世代Crusoeに関しては,昨年前半の勢いから比較するとかなりトーンダウンしている。既存のCrusoeに対して2〜3倍の性能を発揮するとアナウンスされている次世代Crusoeだが,出荷は2003年の前半,製品に搭載されて実際に市場に登場してくるのは2003年後半になる見込みだ。

 高性能かつ低消費電力で小型のノートPCに向けて開発されている次世代Crusoeだが,時期的にはIntelのBaniasと真っ向からぶつかるタイミングだ。Priscaro氏は「Baniasの出荷予定は後ろにスリップすると思う」と話すが,一方のインテル筋の情報では2003年の前半にはBaniasの最初のプロダクトが登場する見込みだ。

 一方,業界内の一部ではTM5800搭載モデルが発表されていない東芝が,Librettoの搭載プロセッサをCrusoeから超低電圧版モバイルPentium IIIへとスイッチするのでは?という憶測も流れていた。これは東芝が小型PC向けにインテルに対して超低電圧版モバイルPentium IIIを大量に発注したとの情報から端を発したものだ。

 しかしPriscaro氏は,「「東芝との関係は未だに良好だ。Librettoの次期モデルがCrusoeを搭載して出荷することは間違いない。2月にTM5800が量産出荷されるようになれば疑惑は晴れるだろう」と,この噂を真っ向から否定した。

 「東芝はCrusoeとその将来のロードマップを評価しており,低熱設計電力という特徴を活かしたイノベーティブな製品開発計画を持っている。東芝が手帳型のタブレット型PC試作機をCrusoeベースで開発していることも,我々との関係が良好であることを示す要素だ。問題はない」(Priscaro氏)。

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[本田雅一, ITmedia]

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