News | 2002年2月1日 05:45 PM 更新 |
開幕を翌日に控えた2月1日,東京・お台場の日本未来科学館では,2足歩行ロボット王座決定戦「ROBO-ONE」主宰者による開催趣旨説明ならびにエントリーマシンによるデモンストレーションが行われた。
これが,世界初2足歩行ロボット格闘技のバトルフィールド。もちろん,ROBO-ONEのネーミングはあの「K-1」からきている |
ROBO-ONEには,ロボット好きのホビーイストが,仕事のあいまや休日にこつこつと作り上げた38台のロボットが参加。まさに,“ホビーイストによるホビーイストのための大会”である。日本科学未来館館長の毛利衛氏は,「今後も,日本のロボット技術が発展していくために,ホビーイストの情熱が欠かせない。アトムやガンダムを自分で作りたいという参加者の熱意を感じてもらいたい」とエールを送る。
大会協賛メーカーであるベストテクノロジーの五味渕弘毅氏によれば,参加者のプロフィールとしては,「35〜40歳の電機メーカーのエンジニア」が多いという。「余裕ができたいまこそ,昔ながらの夢を叶えようという人が多い」(同氏)とか。
エントリーロボットの顔ぶれを見てみると,なかなかバラエティに富んでいる。研究関係の仕事に携わっているという松本大介氏は,小型サーボを内蔵した「RC-GUNDAM」で参戦。また,「ハードウェアの分かるソフトウェア技術者を育成するためにロボット製作に取り組んでいる」という小林浩氏は,安価に仕上がるようにリサイクル品や廃材を使ってロボットを組み立てた。
ほかにも,大学時代にNHKロボコンに参加した実績のある大森智氏の「和風先行者」や,プラモデルベースの「YRCドム」など,かなりの個性派揃いだ。
エントリーナンバー001の「R-BlueIII」。この日,エントリーロボットの中で唯一デモンストレーションを披露した。西村ロボットクラブの「NR-TWO」を相手に,華麗な必殺技も披露した。NR-TWO はROBO-ONEには出場しない |
さきほどは見事にノックダウンされてしまったNR-TWOだが,実は腕立て伏せをしたり, |
レギュレーションはほとんどないに等しい。ハードウェア・ソフトウェアともにレギュレーションは存在せず,2足歩行であること,ロボットの身長が幅・奥行きよりも長いこと,ならびに足が“極端に”大きくないこと,といった取り決めがあるだけだ。
つまり,理屈では“手”がなくてもいいことになる(“ビグザム”もありだ!)。また,身長は20〜120センチの範囲に収まっていなければならないが,重量は無制限。作り手の自由度はかなり高い。しかしながら,五味渕氏によれば,参加ロボットのほとんどが「バランス的に作りやすい」という50センチ程度にまとまっているという(120センチのロボットがあれば“サイコガンダム”級だ!)
こちらは,ベストテクノロジーの2足歩行ロボット「フリーダム」。同社サイトで48万円で販売されている。NR-TWO 同様,ROBO-ONEには参加しない。フリーダム同士の熱戦も繰り広げられた |
フリーダムのマイコンボード。CPUに32ビットRISCプロセッサ「SH-2/7045F」を搭載する。「価格的にも手頃で,スペックもこの程度で十分」(五味渕氏)。無線モジュールは,アイ・オー・データ機器のRS-232C無線トランシーバ「WNA-RS(x2)を改造したもの |
NR-TWO の操作パネル。エントリーロボットのほとんどが,PCから無線で操作するタイプ |
西村ロボットクラブを組織する西村氏。ROBO-ONEの発起人でもある |
デモンストレーションが行われたのは平日だっため,“本業”のある参加者は姿を見せず,実際にエントリー機を見ることはできなかったが,西村氏は,「2足歩行ロボットの開発は簡単なものではない。今回は初めてということで,3歩歩ければいいほうだ。実際に歩けるのは,エントリーしたロボットの半分くらいだろう」と話す。
また,エントリーした38台すべてが,試合を行えるわけではない。まず,予選を突破することが条件である。予選の内容は,1分間のデモンストレーション(自由演技)。5名の審査員が採点し,上位16台が本選に進出できる。
苦労して作り上げた“わが子”の勇姿を見られないのは残念だろうが,大会のレベルを保つためにはしょうがない。本選は,1分5ラウンド制で行われ,ラウンド間の調整時間は3分以内,攻撃までに2歩以上歩くこと,ならびにダウン後10カウントでノックアウト負けなどのルールが定められている(ダウンしても起きあがる驚異的なロボットがいるかもしれないので,10カウント制を導入した)。
ただ西村氏は,「上位進出の条件として,試合の勝ち負けよりも,いかに観客を楽しませたかという点。そして,技術的にチャレンジしたかという点を重視する」(西村氏)と話す。要するに,スキーのジャンプで言う“芸術点”のようなものも評価に加えるのである。そのため,単に倒れにくいだけのロボットや,積極的に攻撃をしかけていかないロボットは高い評価を受けにくくなる。
エンターテインメント性を重視したROBO-ONE。あくまで“ホビーイストの祭典”であり,莫大な資金を投じて開発された企業のロボットは参加していない(スーパーロボットはレギュレーション違反になるらしい……)。だが,参加者の魂が込められたロボットたちは,きっと心に残る名勝負を見せてくれるに違いない。
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