News 2002年2月26日 04:11 PM 更新

今こそ前進と投資を――Intel社長,IDFで基調講演

「IT業界の最良の時期はまだこれから」とIntelのCraig Barrett社長。同社は新技術の開発によって最良の時期に備えるという。

 PCを中心にしたデジタルデバイスのネットワークのコンセプトや,どこでもどんなデバイスでも情報機器を利用できる環境を作る取り組みなど,このところのIntelのビジョンは,どこかMicrosoftと似たところがある。そして今,両社のトップは世界的な景気後退の中で,「まだまだコンピュータ業界はイケル」と,異なる方面からアピールしている。

 MicrosoftのBill Gates会長はコンピュータ業界の景気が後退していることについて,昨年のCOMDEX/Fallで,「この業界はまだ若い。業界立ち上がり時の興奮が冷めたばかりであり,産業として本格的に盛り上がるのはこれからだ」と話し,そのために技術的な進歩が継続しなければならないと説いた。

 それより前,昨年2月の時点でも,IntelのCraig Barrett社長(当時)が「株価の動きを見るのは辛い状況だが,次の波に乗るためには投資の継続をやめてはならない」と話していた。


つりが趣味という“Mr. Fish and Chips”CraigBarrett氏

 そして今年,Barrett氏は「IT業界の最良の時期はまだこれからだ。IT業界に注目が集まり,必要以上に投資が集まりすぎた結果,期待できるほどの成果が上げられず混乱しているというのが現在のステータス。ビジネスモデルを整理,再検討し,この先にある本当の成長に備えなければならない。そして,そのためには投資を継続し,新しい技術を開発していく必要がある」とした。

 「私がIntelで過ごしてきた25年。オイルショックや湾岸戦争など,ビジネス的に落ち込むさまざまな出来事があった。9回目となる今回の景気後退は,これまで経験したことがないほどひどいものだが,私はまだまだ希望を持っている。しかし“そろそろ不景気は終わりだ”などという,根拠のない経済アナリストのようなことは言わない。ただ悪い時期が過ぎて不景気を抜け出すというのではなく,自ら努力して新しい技術を開発していく必要がある。消費者はいつまでも古い技術にお金を支払ってはくれない。われわれは常に前へと進んでいなければならないのだ」(Barrett氏)


Barrett氏が経験してきた半導体業界,景気の波。「第10のピークは必ず来る」と力説

 Barrett氏はコンシューマーを驚かす新技術は既にあるが,それを市場に根付かせることは1社だけでは行えないとし,PC業界全体が新技術を持ち寄り,組み合わせ,共同で市場環境を変えていかなければ,とも話す。そして会場に集まった開発者たちに「現代の世界経済が技術によってドライブされているとするなら,われわれにできることは何なのか?」と問いかける。

 Intel自身はムーアの法則を継続すること――20億個のトランジスタを集積し30GHzで動作する半導体を作るために,原子のサイズに匹敵するできるという。さらにオレゴン州で稼働し始めた12インチウェハ(300ミリウェハ)の製造ラインを18インチに拡大することも,技術的には可能であり,それによるローコスト化が見込めるという。同時にセキュリティ,ブロードバンド,Webサービス,ワイヤレスの4分野では,他社と協力しながら,エンドユーザーに対して魅力的な環境を提供することを目指す。

 Barrett氏は通信デバイスの業界に,PCと同様にハードウェアのモジュール化と,各モジュールの水平分業といった文化が根付きつつあることを指摘。市場を活性化させる新しい分野の製品を構成要素ごとに標準化し,業界を挙げて世の中を変えるための投資を継続しようと呼びかけた。

 「各社独自のUNIXやRISCプロセッサは,年々シェアを落としている。オープンスタンダードを作り上げる必要がある」(同)


業界は今,タービュランス――つまり乱気流の中にいるだけだとBarrett氏は言う

 今こそ前へ進むための投資を行うべきだ。そして業界標準を作り上げ,新しいアプリケーションを市場で受け入れられるものに仕上げていこう。Barrett氏のメッセージはこの1年,変わることなく繰り返されている。Intelは今年,研究開発や設備などに200億ドルもの投資を行うという。それは,投資の継続とそれによる技術革新こそが市場を牽引するエンジンだと考えているからだ。

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[本田雅一, ITmedia]

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