News 2002年3月1日 07:43 PM 更新

IT業界は“混乱期”から“合理的な成長期”へ移行する――IntelのCEOが来日講演

来日したIntelのCEO(最高経営責任者)Craig Barrett氏は「インダストリ フォーラム 2002」の基調講演の中で「IT業界は,やがて“合理的な成長期”へ移行する。現在ような“混乱期”は飛躍のチャンス。不況の今だからこそ,前進する姿勢と積極的な投資が必要」と低迷するIT業界への楽観的な見方を示した。

 「IT業界が直面している現在ような低迷の時期は,成長するテクノロジーや産業にはこれまでも多く見られた“混乱期”にあたり,やがて“合理的な成長期”に入っていく。不況の今だからこそ,前進する姿勢と積極的な投資が必要」――インテルが3月1日に行った「インダストリ フォーラム 2002」の基調講演で,来日したIntelのCEO(最高経営責任者)Craig Barrett氏は,頭打ちが叫ばれているIT業界の将来に対して,楽観的な見方を示した。


来日したIntelのCEO(最高経営責任者)Craig Barrett氏

 Barrett氏は,「新しいテクノロジーをともなうビジネスには,成長のサイクルがある」と指摘する。

 同氏がいうビジネスサイクルとはこうだ。

 新しいテクノロジーが誕生して導入されると,当初,新市場にユーザーの期待が集まって急速に伸びをみせる“非合理な発展期”を迎える。次に,その市場に目をつけた企業が過剰投資を行うことで“混乱期”が訪れる。しかしその後には,安定した右肩上がりの“合理的な成長期”に入っていくというのだ。

 「産業革命後,新しいテクノロジーが数多く発生したが,いずれもこのようなサイクルの成長を示してきた」(Barrett氏)。


新しいテクノロジーをともなうビジネスには,成長のサイクルがある

 Barrett氏は,日本では馴染み深い鉄鋼業界を具体的な例として挙げ,新技術の創造・導入から急発展,混乱,安定成長といったサイクルを鉄鋼業界がたどってきたことを指摘。「IT業界も,このようなサイクルの上に成長していっている。そして,IT不況が叫ばれている現在は,このサイクルの“混乱期”に入っている」(Barrett氏)。


鉄鋼業界も同様の成長サイクルをたどってきた

 そして同氏は「鉄鋼も最初は建築材料への利用しか考えられていなかったが,現在では年間8億トン以上が生産され,何万もの製品の基盤材料となっている。同様に,今後5年,10年,20年先を考えたとき,コンピュータは安定して世界中に普及・発展していくだろう。現在の一時的な不況に悲観的になる必要はない」と述べ,これから“合理的な成長期”に向かう過程にあると力説した。

 ただ,他業界の成長サイクルが,単純にそのままIT業界に当てはまるとは限らない。この点に対してBarrett氏は,IT技術が我々の現在の生活に必要不可欠なものになっていることを強調する。

 「昨年9月に起こった米国同時多発テロでは,事件があったわずか2時間の間に,AOLでは12億件のインスタントメッセージが交換され,Yahoo!Newsには普段の40倍ものアクセスが殺到し,CNN.comには900万ものページビューがあった。さらに,事件後の2週間で5000万ドルの救援基金がオンラインを通じて集まった。情報へのアクセス方法や友人や家族とのコミュニケーションのとり方などに,IT技術が欠かせなくなっている」(Barrett氏)。

 そして,インターネットを中心としたIT技術は,企業の競争力を飛躍的に高めていくとBarrett氏は説く。「ITを導入しない企業は競争から取り残されるだろう。将来の競争力に向けた技術基盤の整備により,さまざまな成長のチャンスが訪れる。ITへの投資とeビジネスの導入を加速することは,成功への重要なステップである。日本やアメリカが今まで示してきたリーダーシップを今後も継続するのには,この(“混乱期”の)チャンスをモノにできるかにかかっている」(Barrett氏)。

 現在の“混乱期”は,Intelにとっても重要な時期となる。「コンピュータにはさらに飛躍的な処理能力が望まれ,半導体製造にもさらなる微細化技術が求められている。新しいマイクロアーキテクチャも必要だ。我々は,最悪の不況下でも製造能力を増強し,研究開発へ大規模な投資を継続して新しいテクノロジーを提供している」

 Barrett氏が最新技術の一例としてあげたのが,ノートPC向けの新プロセッサ「モバイルPentium4-M」だ。「新しいCPUは,デスクトップ並みの性能をモバイルで実現できる。この新CPUを搭載したノートPCは,来週にも各社から発表される見込みだ」。


モバイルPentium4-Mのデモでは,ビデオ編集の際の高速MPEG-2エンコーディングを紹介

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[西坂真人, ITmedia]

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