News 2002年3月18日 09:02 PM 更新

2002年度は取引金額5000億円――本格普及を狙うデビットカード

昨年,目標通り取引金額3000億円を達成したデビットカードの「J-Debit」。今年は,ICキャッシュカードの導入を背景に,昨年を上回る成長を目指す。

 日本デビットカード推進協議会(JDCPA)は3月18日,2002年度通常総会を開催し,JDCPAが普及を促進するデビットカード「J-Debit」の今年度の事業目標(取引金額目標)を5000億円(対前年比164%)に決定した。取引件数は,対前年比146%の900万件を目指す。

 J-Debitは昨年,目標に掲げていた取引金額3054億円(対前年比を達成(2001年12月20日の記事参照)。今年は,キャッシュカードのIC化などを背景に,昨年を上回る成長を期待する。

「オフラインデビット」「キャッシュアウト」

 通常総会後に行われたJ-Debitフォーラム2002で,JDCPA事務局長の小池浩氏は,J-Debit普及の重点項目として,1)認知度向上に向けた継続的な取り組み,2)セキュリティ対策,3)商品性のレベルアップ――を挙げた。この,2,3を実現するのが,ICキャッシュカードの導入である。

 ICキャッシュ―カードは,今春より金融機関各社から発行される予定だが,これを受けて,JDCPAではJ-DebitのシステムをICキャッシュカードに対応させる。店鋪用端末としては,東芝テックがICキャッシュカードの読み取り・書き込みが可能な店鋪用端末「CT-2100」を開発。JDCPAではCT-1200の店鋪への導入を進める計画だ。

 ICキャッシュカードの導入により,J-Debitでは新サービスとして,「オフラインデビット」ならびに「キャッシュアウト」という2種類を提供できるようになる。オフラインデビットとは,ICキャッシュカードの中に利用残高情報を記録し,金融機関のネットワークに接続していない端末でも料金の支払いができるようにするもの。利用者にとっては,J-Debitのサービス時間外でも,キャッシュレスで買い物できるようになるというメリットがある。

 キャッシュアウトのサービスは,欧米では一般に普及しているものだが,国内では法的整備が進んでいないということで導入に待ったがかけられていた。具体的には「金融庁からセキュリティに関して懸念があった」(小池氏)ためだが,磁気カードよりも強固なセキュリティを持つICキャッシュカードの導入により,実現に向けて大きく前進することになる。

 キャッシュアウトとは,J-Debit対応店鋪をATM代わりに使ってしまおうというサービス。例えば,7000円の商品を購入する際に,J-Debitから1万円で支払うことにする。すると,おつりは現金で3000円が渡される。いちいち銀行やATMに行かなくても,買い物ついでに現金を引き出せるという利便性がウリだ。

 さらに,利用者にとっては,手数料がかからないというメリットもあるかもしれない。銀行のATMでは休日やサービス時間外だったりすると,利用者が手数料を負担することになる。しかしながら,J-Debitでは店舗側が手数料を負担する仕組みになっているので,これをキャッシュアウトでも踏襲すれば,いつ,どこでキャッシュアウトサービスを利用しても,全く手数料がかからないというサービスが実現する。

 さらに,海外では,単純に,J-Debit店鋪で現金だけを引き出すことが可能なケースもあるという。こうなるとATMはもはや不要になってしまう気もするが,小池事務局長は「ATM戦略を重視している金融機関もある。手数料のシステムもいろいろなスキームが考えられる。キャッシュアウトの導入に関しては,バランスを大事にしたい」と慎重な構えを示した。

J-Debit使用平均単価はクレジットカードと同じ

 J-Debitフォーラム2002では,このほか,J-Debitカード導入事例として,加盟店各社からプレゼンテーションが行われた。

 京都市内の32の商店街,ならびに8つの同業種組合で構成する任意団体「きょうと情報カードシステム」(KICS)の樋爪保氏は,「J-Debitの利用平均単価とクレジットカードのそれが,ほぼ同じになった」と話す。

 同氏によれば,2001年1月〜12月までのクレジットカード取り扱い総件数は63万4411件。1人当りの平均利用単価は1万7881円だった。一方,J-Debitの取り扱い総件数は4万7590件とクレジットカードの10分の1以下ではあるが,平均単価は1万7530円とクレジットカードとほぼ同額に。「当初は,クレジットカードとJ-Debitの利用平均単価は2倍近い開きがあった。普及活動が実を結んできた証拠だろう」(樋爪氏)。

 また,「eコレクト」というデビットカード対応モバイル決済端末を使用している佐川急便の大西雅春営業本部長は,同社の2001年度〜2002年度のJ-Debit決済データ比較。「決済金額が約2.4倍と順調に伸びているのに対し,取引き件数はほぼ横ばいで,思うように伸びていない」と現状を説明した。

 「ATMが普及し,現金を引き出すのが便利な日本においては,欧米よりもクレジットカード・デビットカードの普及が遅い。もっと,普及を目指すのならば,日本では何か付加価値を持ったサービス展開が必要だろう」(大西氏)。

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[中村琢磨,ITmedia]

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