News 2002年4月16日 11:59 PM 更新

有機ELの進化と課題――電子ディスプレイ展「EDEX2002」

電子ディスプレイ展「EDEX2002」が開幕した。会場では,次世代ディスプレイとして期待されている有機ELやに注目が集まっていた。

 電子ディスプレイ展「EDEX2002」が4月16日,東京・ビッグサイトで開幕した。会場では,次世代ディスプレイとして期待されている有機ELや,高解像度化が進む携帯電話やPDA向けの小型液晶パネルに注目が集まっていた。またビッグサイトの隣にあるTFTホールでは,電子ディスプレイ関連のフォーラム「EDF 2002」も同時開催されている。


電子ディスプレイの展示会「EDEX2002」

 会場のあちらこちらで話題となっていたのは,やはり有機ELだ。FOMA端末やカーオーディオ用などで,一部製品には採用が始まっている期待の次世代ディスプレイだが,寿命や大画面化,コスト面など,量産に向けて課題も多い。特に大画面化が難しいとされ,これまで携帯電話やPDAといったモバイル向けのディスプレイとの見方があった。

 そんな中,東芝と松下電器産業の電子ディスプレイ事業が統合して今月1日に設立された東芝松下ディスプレイテクノロジーのブースでは,大画面の有機ELディスプレイを参考出展し,来場者の注目を集めていた。


大画面の有機ELディスプレイは来場者の注目を集めた

 これまで有機ELディスプレイで最大を誇っていたのは,ソニーが昨年第1四半期に発表した13型の試作機。昨年10月のCEATECでも参考出品され,順番待ちをしなければ製品を見れないほどだった。今回,東芝松下ディスプレイテクノロジーが参考出展したのは,ソニーのそれを大きく上回る17型ワイドというサイズ。もちろん,有機ELでは世界最大となる。解像度はXGA-W(1280×768ピクセル)で,これもソニーの試作機(800×600ピクセル)を上回った。輝度は100〜300カンデラ,コントラストは200対1となっている。


17型ワイドで解像度はXGA-W(1280×768ピクセル)

 この有機ELディスプレイは,東芝側が開発していたもの。「大画面TFTアレイ基盤の画素隔壁孔にインクジェットヘッドを使って高分子有機材料を塗布する『インクジェット法』によって,17型という大画面を可能にした」(東芝松下ディスプレイテクノロジー)。

 この高分子有機ELをアピールしていたメーカーには,他にセイコーエプソンがある。2.1型で展示していた有機ELは,同社独自のインクジェット成膜技術によって,高画質,高精細を低コストで実現している。「低分子タイプのようにマスク蒸着が必要ないため,材料コストや製造プロセスで有利。これまで培った液晶製造技術の資産を転用できるのもメリット」(セイコーエプソン)。


インクジェット方式の仕組み

 鳥取三洋電機や東北パイオニアでも有機ELを出展。すでに実用化されている車載用や,次世代携帯電話向けなど2〜5型のモバイル用途向けの展示を行っていた。量産体制に入っている鳥取三洋電機の2.2型有機ELは,今年中にauの携帯電話に採用される予定。一方,以前から展示していた5.5型の方は,現在のところ製品化の予定はないという。


鳥取三洋電機の5.5型有機ELは,現在のところ製品化の予定はない

 有機ELは,寿命の短さも指摘されているが,東北パイオニアによると,現在の有機ELは色によっても寿命が違うという。「当社の有機ELの場合,1番の長寿命はイエローで約2万時間,次にグリーンが1万時間,その他の色は7000〜8000時間ぐらい。フルカラー化には,色による寿命の格差をなくすことも課題」。

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[西坂真人,ITmedia]

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