News 2002年4月19日 11:55 PM 更新

薄型大画面テレビ――やはり課題は“価格”

電子ディスプレイフォーラム2002のセッションでは,薄型大画面テレビ用のFPDとして期待が高まるPDPと液晶の課題について語られた。

 薄型大画面テレビをめぐって,PDP(Plasma Display Panel)と液晶がしのぎを削っている。

 電子ディスプレイフォーラム2002のセッションで,Flat Panel Display(FPD)市場の調査会社DisplaySearchの松野智吏・上級副社長が,「フラットパネルテレビの市場予測」と題した講演を行い,薄型大画面テレビ用のFPDとして期待が高まるPDPと液晶の課題について語った。

 ワールドワイドで1億3000万台超というカラーテレビ市場の中で,液晶やPDPといったFPDの台数ベースのシェアは,現時点で数%とごくわずか。しかし,28型以上のいわゆる大型テレビの市場予測では,そのシェアは2005年段階で40%と,大きく伸びていくと見られている。「FPDは,特に大型テレビの市場で巨大なポテンシャルを持っている」(松野氏)。

 FPDでは,有機ELや無機厚膜ELといった新しいデバイスも大画面テレビ向けパネルとして期待されているが,「寿命やコスト面などで課題が多く,当面は20型以下の中・小型タイプにとどまる」(松野氏)。つまり液晶とPDP以外は,大型テレビ市場に本格参入してくるFPDは当分ない。

 PDPは大画面化で先行しており,すでに32〜50型クラスの量産体制に入っている。一方,小・中型から徐々にサイズアップしてきた液晶は,昨年シャープが30型の量産を開始しており,現時点で40型までの製品化が技術的に可能と明言している。また,韓国のサムスン電子は,昨年から展示会などで参考出展している40型の液晶テレビを今年第2四半期に市場に投入する。32〜43型が薄型大画面テレビの普及サイズといわているが,画面サイズではPDPも液晶もほぼ同じ土俵に上がったといえる。

 普及へのカギは,やはり価格だろう。薄型大画面テレビは「1インチ1万円」の実現が,普及が進むための1つの目安と言われている。液晶は,15型以下の中・小型ではインチ1万円はすでに達成されているが,20〜30型では1インチ2万円前後とまだ高い。ライバルのPDPも,1インチ1万5000〜2万円となっている。「市場が立ち上がっていないため,部材の量産効果が得られず,高い固定費がかかっているのがコスト高の原因。製造技術面でも改善の余地があるほか,歩留まりの悪さもコストに影響している」(松野氏)。

 ただ,PDPに関しては,パネル・装置・部材メーカーなどの総合的なコスト削減の取り組みで,モジュールコストは今後4年間で1/3に低下すると松野氏は予想する。「韓国・台湾メーカーの本格参入で競争原理が働き,1インチ1万円は2003年に達成される。2005年には1インチ5000円となるだろう」。

 一方,液晶は1メートル角という大きな基板を作る第5〜6世代生産ラインをいかに順調に立ち上げ,稼働率を高めるかがコストダウンに向けて重要になってくると指摘。「特に,テレビ用パネル専用工場となる第6世代ラインは,他に逃げ場のない“背水の陣”の気持ちで取り組まなくてはならないだろう」(松野氏)。

日本以上に価格にセンシティブな欧米市場

 大画面テレビの需要は,北米のほうが日本よりもあるといわれている。しかし,価格に非常に敏感なユーザーが多いせいか,40〜50型クラスでも2000ドル前後で買えるプロジェクションタイプが大画面テレビの主流となっている。「PDPも,最近になって42型VGAワイドタイプが実売4000〜5000ドルで店頭に並び始めたが,ユーザーの関心は低い」(松野氏)。

 米国の世帯あたりの年収は,80%以上が5万ドル以下といわれている。現在のPDPや大型液晶テレビの価格は,米国ユーザーにとって年収の1/10に相当する。松野氏は,「価格は世界市場への普及にむけて重要な課題。全世界で普及するためには,2000ドルを切る価格が絶対条件になる。1インチ5000円を切る2005年以降に,本格的な需要期を迎えるだろう」(松野氏)。

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[西坂真人,ITmedia]

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