News 2002年4月19日 06:49 PM 更新

「通信との融合」を語るIntel。デスクトップ上のHyper-Threadingデモも

Intelが通信にこだわる理由は? WinHEC 2002でIntel社長が説明。またエンドユーザーアプリケーションにおけるHyper-Threading技術の効果もデモしてみせた。

 Microsoft主催のハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2002」の最後の基調講演を担当したIntelのPaul Otellini氏は,既報の通りBaniasのワーキングサンプルを紹介したが(別記事参照),ほかにも大きく2つのテーマについて言及した。1つは「コンピューティングとコミュニケーションの融合」,そしてもう1つは「ムーアの法則をさらに拡大すること」だ。


来年登場の64ビットプロセッサ「Madison」のウエハーサンプルを手にするOtellini氏

 Intelは先日発表した決算で,予想よりも堅調に推移したプロセッサ部門に対して,通信デバイス事業の業績が予想を下回ったことを明らかにしていた(4月17日の記事参照)。Intelは以前から,脱マイクロプロセッサカンパニーを目指してさまざまな戦略に打って出いていたが,いまだマイクロプロセッサの会社という見方に変化は訪れていない。

 Otellini氏は「われわれはマイクロプロセッサの会社だ。しかし,同時に世界第3位の通信機器向け半導体企業でもある」と強調。今後も通信分野への注力は緩めないと話した。その理由はコンピューティングとコミュニケーションは,今後,融合の時を迎えると考えているからだ。

 両市場はかつて全く異なるものだったが,現在は互いに近づき,オーバーラップするところが多くなっているという。今日,ワイヤレス通信機能を持ったPDAやインターネットアクセスが可能な携帯電話,ショートメッセージサービスやインスタントメッセージング,テレコミュニケーションアプライアンスなど,オーバーラップした市場に存在する製品はその数が増え続けている 。  「Intelの役割は持ち前の半導体技術で両市場に求められる機能を統合し,両分野の収れんを後押しすることだ」とOtellini氏は言う。

 そして今後,いつでもどこでも,あらゆる経路を駆使してデバイスがネットワークに接続される世界がやってくる。ユビキタスなワイヤレスネットワークなど,通信インフラの整備が進み,ハンドヘルドコンピュータは携帯電話などの通信機器と融合,ネットに常時接続してモバイル機器を使うのが当たり前となり,一家に一台パーソナルホームサーバが置かれるようになる。

 その時代になれば,プロセッサと通信半導体の両方での優位性を持つIntelは,本来の強みを活かすことができる。例えば,Intelはフラッシュ,ベースバンドチップ,組み込みプロセッサなどの各分野でトップ企業であり,かつこれらの機能を1チップに統合するだけの半導体製造技術を有する。

 そして,その先にある究極のビジョンとして,すべてのIntel製チップがワイヤレスで相互接続され,地球全体がネットワークで接続されたマクロコンピュータのように強調動作するチップレベルのネットワーク統合が進む。このビジョンをIntelでは「Radio Free Intel」と呼んでいる。

 さらにOtellini氏は,成熟した市場ではなく,PC市場が未発達でこれから伸びる地域にフォーカスを当てる必要性があると話した。その最大のターゲットとなるのは言うまでもなく中国だ。Otellini氏は,今後2カ月ほどで中国市場は日本市場よりも大きなものになると述べた。

 次に取り上げたテーマは「Moore, more moore」。Mooreとはムーアの法則のことで,ムーアの法則に従ってパフォーマンス向上を続けたことにより,PCは次々に新しいアプリケーションを実用的なものにしてきた。ムーアの法則は現在でも生き続けているが,Otellini氏はムーアの法則をさらに上回る“more moore”の性能向上が必要だと話す。

 半導体製造技術による進化(Moore)を超えるためには,アーキテクチャ上の改良で性能を向上させなければならない。そのための手法の1つが,Xeonプロセッサに実装されたHyper-Threadingだ(2月13日の記事参照)。Hyper-Threadingはプロセッサが持つハードウェアリソースを有効に使い,複数のタスクを同時に実行した際,20%前後の性能アップを実現する。

 デモンストレーションでは,これまでサーバでしか使われていなかったHyper-Threadingを初めてデスクトップPC上で動かしてみせた。まずマルチプロセッサ対応のビデオ編集ツールで圧縮処理が高速に実行できるデモ。そしてもう1つはメディアデータの圧縮処理を行いながら,サラウンド音声付きのDVD再生をソフトウェアで行うデモである。特に後者の使い方では,DVD再生のクオリティに明らかな差が出た。Intelは2003年にHyper-Threading対応のPentium 4を投入する予定。

 このほか,Intel Developer Forum(IDF)Spring 2002でも紹介した2003年のデスクトップPC,あるいは2003年に投入予定の64ビットプロセッサ「Madison」にも言及。

 Otellini氏はハードウェア開発者たちに向け,「われわれは各分野でベストのプラットフォームを提供し,プラットフォームの強化を進める。またワールドワイドのPC市場を成長させるべく努力する。そして技術の統合を行うことでコンピューティングと通信の分野を収れんさせることを約束する」と話して講演を締めくくった。

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[本田雅一,ITmedia]

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