News 2002年5月24日 10:01 PM 更新

ITワーカーへのフルサポートビジネスに転進――ピーエイ・加藤社長インタビュー(1/2)

IT関連の人材斡旋大手、ピーエイがこのところ矢継ぎ早にM&Aや新会社設立を発表している。雇用情勢が過去最悪水準にある中、積極的に打って出ているピーエイの狙いを、同社の加藤博敏社長に聞いた

 完全失業率が5%超の記録的な水準で推移し、雇用情勢の悪化とともに人材斡旋市場の冷え込みもきつくなっている。これまで比較的堅調だったIT関連分野にもその余波は及んでおり、IT専門の人材斡旋で大手のピーエイが5月13日に発表した2002年12月期第1四半期(1-3月)決算も、前年同期比で大幅な減収になった。

 高成長を続けてきたIT関連の人材斡旋ビジネスにとって、はじめてとも言える難局。しかし、同社はここに来て予想外の一手を打ち続けている。4月にLinux関連ソフトの開発で知られるホロンを買収、子会社化したのに引き続き、5月13日には業務アウトソーシングの受託を行う子会社「アルメイツ」(本社・新潟市、社長・本間一浩氏)を設立したのだ。

 求人情報誌の発行や人材斡旋などを核に拡大してきた同社が、今、M&Aや新規事業進出など積極策に打って出た狙いを、同社の加藤博敏社長にうかがった。(聞き手・構成、中川純一、文中敬称略)

ZDNet:4月にホロン買収、そして今月はアルメイツ設立と、このところ“大人しい”という印象のあったピーエイが突然積極策に出て、業界関係者を驚かせています。

加藤:いや、企業の買収や設立には時間がかかりますから、急に起きた話ではありません(笑) ずっと仕込みをしてきた、それがちょうど今、表に現れたと考えてください。まだ詳しくはお話できませんが、M&Aに関して言えば、検討中の案件も数件あります。


ピーエイ代表取締役社長・加藤博敏氏

ZDNet:足元の景気は決してよくありません。景気の影響を受けやすい人材斡旋業を取り巻く環境も、決してよいとはいえない。このほど発表された御社の決算にもそれが表れています。その時期に積極策に出ることに、リスクを感じませんか?

加藤:こんな状況だからこそチャンスなんですよ。社長はどこもみんな青い顔をしている(笑) そんな人に、一緒にやりませんかと声をかけているんです。

 最近は以前とうって変わって、IT関連と言うだけで証券市場から相手にもされない。焼肉屋さんのほうがまだマシというぐらいでしょう(笑) おかげで上場を計画していたのに、取り止めたITベンチャーも少なくない。業績は悪くないのに、です。

 その上、小さなところがたくさん上場しても、上場維持コストが嵩むだけなんですよ。IR(投資家向けの情報開示)とか、いろいろ大変なこともありますし。それなら一緒にやったほうがいいでしょう。

 それと、景気の話ですが、私は景気は底を打ったと見ています。求人は景気の半年前の先行指標といわれますが、東京だけでなく、地方も上向きつつあります。

ZDNet:私は国際的なIT関連製造業の多い長野県の求人動向に注目しているんですが、どうでしょうか?

加藤:業務請負が急速に回復しています。ということは製造業が良くなっているんでしょう。  先ほど言われたように、今四半期の当社の決算は大幅な減収になりました。しかしこれは前四半期が前年対比で非常に良かったので、その反動が出ました。ですから常態に戻っただけともいえます。今後は本業の回復と、M&Aを含めた新規事業の効果で、収益は大きく伸びていくと見ています。

単一のビジネスモデルからの脱却

ZDNet:ソフト会社であるホロン買収は、ピーエイの中核事業とのシナジー効果が一見薄そうに見えます。どういう狙いがあるのでしょう?

[中川純一, ITmedia]

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