News 2002年5月24日 10:05 PM 更新

ITワーカーへのフルサポートビジネスに転進――ピーエイ・加藤社長インタビュー(2/2)


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加藤:そんなことはありませんよ(笑) 私たちは元々、人材斡旋だけをやっていくつもりはなかったんです。ITプロフェッショナルなどIT系の人たちにフルサポートを行う企業と、自分たちを位置付けています。さらに言えば、ネット社会におけるインフラストラクチャーを提供する企業と考えています。

 これまで私たちは「JobMail」などの人材紹介ビジネスを通じて「キャリアアップ」の支援を行い、また資格取得支援事業「LicenseWorld」などを通じて「スキルアップ」のお手伝いをしてきました。今後は「ライフスタイルサポート」を含め、3分野でビジネスを展開していく計画です。

 簡単に言えば、単一のビジネスモデルからの脱却ですね。これまではキャリアアップをメインにやってきましたが、第2ステップとして、e-ラーニングなど「スキルアップ」の部分を深堀りしたい。そして、第3のステップとして、ITエンジニアに対するビジネス支援や生活支援などの事業に進出する。また、キャリアアップでも、人材斡旋だけでなく、アウトプレイスメント分野などを強化していきます。

 本当はもっと早くやるつもりだったんですが、こういう経済情勢ですからね。目先のハエを追うのに忙しく(笑)、予定が少し遅れました。


3分野で事業を展開し、単一ビジネスモデルからの脱却を目指す

コンテンツアグリゲータを目指す

ZDNet:たとえばホロンはそこでどう位置付けられるのでしょう?

加藤:ホロンはLinux関連のノウハウや開発者を有しています。組み込み関連などこれから有望な分野での経験も豊富です。そのホロンでLinux教育やCG教育などeラーニング関連のデジタルコンテンツを開発、ピーエイのマーケットに対し販売していくといったことが考えられます。

 もちろん教育以外でもさまざまなツールを開発、販売していくでしょう。その際も、ピーエイのマーケットが利用できる。これが2番目のシナジー効果です。さらには、こういった開発を行うホロンやその協力会社にIT人材を紹介していくことが考えられる。協力会社を含めるとけっこうな規模になりますからね。これが第3のシナジーです。


ホロンのもたらす3つのシナジー効果

 最初のシナジー効果で補足すると、ポイントになるのはe−ラーニングなどのコンテンツビジネスでは専業者から勝者は出てこないだろうということです。教育ソフトをそれ専用に開発するのは、コストがかかり過ぎますからね。開発は別にあって、それを再利用するというのが良い。ホロンで言えば、自社でLinux関連のソフトなどを開発し、その資産をベースに教育ソフトを開発するという考え方です。

 ピーエイのここでの役割は、良いコンテンツを集めて、自分たちの持つマーケットに流していくというプロデュース役ですね。そういうポジションを築くことを目指しています。

ZDNet:IT系人材に対するコンテンツアグリゲータを目指すということでね。そうなると、企業買収はホロンだけでは足りそうにありませんね(笑)。この分野で第2、第3のM&Aを仕込み中ということですか?

加藤:残念なんですが(笑)、その質問にはちょっとお答えできません。

履歴書の行間にビジネスチャンスがある

ZDNet:加藤社長のおっしゃる3つの事業分野のうち、キャリアアップはいわば現在の本業ですし、スキルアップもe-ラーニングなど、その中身が想像できます。しかしライフスタイルサポートとなると、今ひとつ見当がつきません。いったいどんなことを考えていらっしゃるのでしょうか。

加藤:これも詳しいことは申し上げられないんですが、こう考えてみてください。私たちの手元にはITエンジニアに関する膨大な数の履歴書があります。そして人材斡旋を通じて、給料の何カ月分といった形でフィーを得ている。趣味や経歴から、新しい仕事、給料といった情報までもっているんです。

ZDNet:究極の個人情報ですね。

加藤:そうです。私たちはこれまで、この履歴書の“経歴”が変わる部分でビジネスを展開してきました。つまり転職(キャリアアップ)です。しかし、1人の人が転職する回数は、1回か2回、せいぜいが3回でしょう。しかも、最近はなかなかお給料が上がらないから転職してくれない(笑)

 しかし経歴が変わる間にも、その人はさまざまなことをしています。まず教育。転職してお給料が上げるために、人はその間準備している。それが今手がけているスキルアップのお手伝いです。

 でも、実際にはそれだけじゃありません。例えば、結婚するかもしれないし、子供が生まれるかもしれない。家を買うことだってある。そんな大きなことでなくても、ちょっとしたイベントならいろいろあるでしょう。本が買いたい、ガールフレンドがほしい……。そこに私たちの大きなビジネスチャンスがある。

ZDNet:そういったサービスには既存の企業もありますが、ITの人材というカテゴリーに絞って各種のサービスを提供するというわけですね。

加藤:そうです。ただ、これまではITプロフェッショナルをターゲットにしてきましたが、それよりは対象の裾野を広げることができるでしょう。今後はITプロフェッショナルだけでなく、「読み書きパソコン」を学習する層、言い換えれば「ITリテラシー層」も、当社のビジネスターゲットになっていきます。


ITプロ層からITリテラシー層に対象を拡大、より大きなマーケットへ

 もちろん、私たち1社ですべてのサービスを提供することはできません。これからM&Aはもちろん、事業提携なども積極的に行っていくことになります。

ZDNet:お話をうかがっていると、この分野のほうが今後、売上が大きくなっていきそうですね。

加藤:そうですね、実は私もそう考えているんですよ。

[中川純一, ITmedia]

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