News 2002年5月27日 11:49 PM 更新

写真画質のフォトプリンタ、どの方式が一番いい?

PCを使わなくてもプリンタ単体で写真画質を気軽に印刷して楽しめる「フォトプリンタ」の新製品が次々と登場している。「昇華型熱転写」「Printpix(TA)」「インクジェット」というフォトプリンタの3方式を、「画質」「ランニングコスト」「プリントスピード」の面で比べてみた

 フォトプリンタは、PCを使わなくてもプリンタ単体で写真画質を気軽に印刷して楽しめるのが、最大のメリットだ。最近、このフォトプリンタの新製品が次々と登場している。

 神鋼電機が3月に発表したCOLOR PETや、キヤノンが5月30日に発売するCP-100は、インクリボンに熱を加えて塗布されたインクを昇華させ、樹脂でコーティングした専用紙に付着させる「昇華型熱転写」方式を採用している。

 また先週、富士写真フイルムが発表したフォトプリンタに採用されているPrintpix(TA)方式は、ペーパー自体が加熱によって発色する感熱層を持っており、プリンタ本体にインクカートリッジやインクリボンを装着させる必要がない点が特徴だ。

 3月5日に発表したColorioPTシリーズや、6月6日に発売されるキヤノンのPIXUS 895PD/同535PDといったPCカードスロットを装備したインクジェット方式も、フォトプリンタの1種と考えてもいいだろう。これらの機種も、PCを介さずに写真プリントを行える。

 「昇華型熱転写」「Printpix(TA)」「インクジェット」というフォトプリンタの3方式を、「画質」「ランニングコスト」「プリントスピード」で比べてみた。

画質面では階調表現ができる昇華型熱転写/Printpix(TA)方式が有利

 昇華型熱転写方式やPrintpix(TA)方式は、銀塩フィルムにせまる高画質印刷ができることは以前から知られている。これらの方式では、1つ1つのドットで色の濃淡が表現できるため、高解像度を保ちながら細かな階調表現ができるのだ。1ドットあたり256階調が出せるため、解像度(dpi)の数値以上の見た目の美しさを表現できる。

 インクジェット方式でも“写真画質”をうたうものが増えているが、その印刷方式はインクを付けるか付けないかという2値記録によるもの。ドットの集まりで階調表現をしているため、階調数を上げるとその分だけ解像度が低下するというデメリットがある。画質面では、細かな階調表現ができる昇華型熱転写/Printpix(TA)方式が有利といえる。

ランニングコストではインクジェット。専用ペーパーのみのPrintpix(TA)方式にも期待

 また、気軽にデジカメの画像をプリントしたいと思ったときに、本体の価格以上に気にしなくてはいけないのが、ランニングコスト。画質面では、まだまだ銀塩写真に追いついていないだけに、せめてプリント代では安くなるようにしたい。

 ちなみに銀塩写真は、全国に約1200店舗を展開するDPE店「パレットプラザ」の料金(現像代500円、プリント30円/枚)を参考に計算してみると、25枚撮影したときの料金は1枚あたり50円だ。0円プリントなんてのもあるが、0円の場合は現像料金が700〜1000円ぐらいするので、1枚あたりのコストは結局20〜80円ぐらいになる。また、最近取り扱い店が増えてきたデジタルプリントサービスは、1枚40〜60円のところが多い。

 フォトプリンタでは、ランニングコストの低さをアピールするインクジェット方式が、セイコーエプソンのカラリオPM-850PTで31.2円となっている(127mm幅のPM写真用紙ロールタイプLサイズでカラー印刷した場合)。A4など大きなサイズで印刷できるのも、インクジェット方式の魅力だ。

 Printpixシリーズの新しい専用ロールペーパー「RL-SD40」(1700円)は、Lサイズプリントで約40枚の印刷が行えるため、Lサイズ1枚の単価は約42円となる。さらに、同社独自の印刷方式は、専用ペーパーさえあればインクリボンやインクカートリッジは必要ない。さらに「普及が進んで大量生産できれば、専用ペーパーの大幅なコストダウンも可能」(同社)という。

 昇華型熱転写方式では、神鋼電機のCOLOR PETが専用紙とリボンカセットのセットで1250円。25枚の印刷が行えるため、ランニングコストは1枚あたり50円となる。 また、キヤノンのCP-100は、Lサイズのプリントが36枚できるカラーインク/ペーパーセット「KL-36IP」が1700円なので、1枚あたりのコストは約47円となる。リボンカセットや専用紙はOEM製品を使用するケースが多いので、各メーカーともコストダウンしづらいところだ。

プリントスピードは、昇華型熱転写方式がややリード

 プリントスピードはどうだろうか。

 Printpixの場合、Lサイズ1枚あたりの印刷時間が約88秒、昇華型熱転写方式のキヤノンのCP-100が約73秒となっている。インクジェット方式では、PM-850PTがメーカー公称値で約2分2秒(Lサイズカット紙)となっているが、最高画質の設定にした場合は5分を超える。印刷スピードを売りにしたキヤノンのPIXUS 895PDも、デフォルトでは65秒と高速だが、最高画質の設定では2分39秒とこちらも2分を超えている。写真画質の印刷スピードでは、昇華型熱転写方式がややリードといったところか。

フォトプリンタ各方式の機能の違いをまとめてみた。

Printpix(TA)方式昇華型熱転写方式インクジェット方式
画質
ランニングコスト×
印刷スピード×
画像保存性×
本体サイズ×
機密保持×
プリントサイズ×
消費電力×

 そのほか、コーティングを行わないインクジェット方式は画像保存性で不利であったり、インクリボンを使う昇華型熱転写方式はリボンに印刷内容が残ってしまうため機密漏えいの恐れがある、消費電力の大きなPrintpix(TA)方式はモバイル用途に向かないなど、それぞれ一長一短だ。

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[西坂真人, ITmedia]

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