News 2002年5月31日 12:05 PM 更新

インタビュー
新CEOが語る「Transmetaの現状と展望」(1/2)

Transmetaは今、将来に対してどんな展望を持っているのか。そして現在の課題は? ZDNetでは来日した同社新CEO、Matthew Perry氏にインタビューし、Transmetaと同社を取り巻く業界の動向について、詳しく話をうかがった

 Transmetaの社長兼CEOに先頃就任したMatthew R. Perry氏がこのほど来日。5月29日には記者会見を行い、「Crusoe1000構想」や「ジャパン・ファースト」などの新戦略を明らかにした(別記事を参照)。

 Perry氏はAMDやMotorolaで職歴を重ねた後、95年からCirrus Logicに移籍。98年からは同社副社長兼ジェネラルマネージャとして、主に組み込みプロセッサや光デバイスのディビジョンを率いている。家電ベンダーとの接点が多かったという同氏は「いつも日本に来たら、新宿の量販店を覗いてみるんだ」と話す。特に家電市場への進出について、強い興味を抱いているようだ。

 ITmediaではそのPerry氏、および同社創設者でCTOを務めるDavid R. Ditzel氏にインタビューを行った。Perry氏が語るTransmetaの現状と展望、そして省電力プロセッサの未来は――。(聞き手・構成、本田雅一、文中敬称略)

ZDNet:社長兼CEOに着任されましたが、客観的に見てTransmetaの良い部分、そして改善しなければならないと考えている部分を挙げて頂けますか?

Perry:まず最初に申し上げておきたいのですが、私たちは世界最高クラスのエンジニアを社内に抱えています。私は半導体業界で長い間仕事をしてきましたが、今年4月に入社して以来、Transmetaの技術力の高さに興奮を憶えています。私たちは間違いなく優れた製品を創り出すポテンシャルを持っています。

 また、私がこの仕事を引き受けた理由のひとつに消費電力の低さが挙げられます。私は家電製品向けのデバイスを扱っていましたから、低消費電力の価値を十分に理解しているつもりです。この点で、Transmetaに大きな可能性を感じました。

 さらにバイオUをはじめとして、世界最高のデザインを持つ製品を生み出せる優れた技術とスピリットを持つ顧客との取引がすでにあります。自分自身、技術者出身であり、こうしたエキサイティングな製品の開発に関わりたいと思いました。常時ネットワークに接続したまま、一日中バッテリで利用できる製品を作りたいですね。

 一方、着任以降、私が社内で強調しているのは、製品のスケジュールや機能、性能などについて、間違いなく出来ることだけを外部に対してアナウンスしなさいということです。

 それと私は、私たちがもっと顧客(ここではPCおよび家電ベンダー)の声を注意深く聴かなければならないと考えています。現行のTM5800を使っている顧客の話を聞けば、そこに次に必要となる製品のヒントが隠されているはずです。逆にいくら技術的に優れていても、必要とされる製品を作れなければ受け入れてもらえません。

 今回来日した目的も、日本の顧客と直接対話するためです。3.5ポンド(約1.6キロ)以下のPCは、その大半が日本で作られています。ですから、日本顧客の意見は非常に大切なものです。そして、社長兼CEOとして、すべてのビジネスの方向性について検討していくつもりです。私はTM5800は本当に優れた製品であると信じていますし、今後の製品に関しても製品を適切な価格、適切な市場に対して、適切な時期に出していきます。

ZDNet:ジャパンファースト戦略の強化は、日本での収益向上にまずは注力するということですか? それとも日本で新しいモバイルアプリケーションのトレンドをキャッチアップしていこうということなのでしょうか。

Perry:超小型の新しい市場を拓くことができるモバイル製品を開発できるのは、日本のベンダーだけです。もちろん、他の地域にも力を入れていきたいとは思っています。それでもなお、ジャパン・ファースト戦略の強化を行うのは、私たちの戦略やビジョンを実現していくパートナーが日本にあるからです。本当に顧客が求めている製品を創り出す力が、日本のベンダーにはあります。

ZDNet:日本には熱狂的なCrusoeのサポーターもいます。しかし一方で、Crusoeは速度性能に劣るというイメージも一般に定着してしまっているようです。特に初期のCrusoeはCMSのバージョンが古いこともあり、Windows XPでのパフォーマンスで劣ります。現在はかなり解決しているようですが、このネガティブイメージを払拭する作戦はお持ちでしょうか?

Perry:特別な作戦はありません。しかし、最新バージョンのCMSはとても良いパフォーマンスを発揮しています。今後も継続して技術的な問題にも取り組み、Windows XPの性能に関しても、社内の各部署と良いコミュニケーションをしながら改善していきます。最高の製品を作る努力を続けることが、そうしたイメージを払拭するために必要なことでしょう。

ZDNet:小型ノートPCの市場では、インテルもかつての製品戦略を転換して低消費電力の製品を出荷し、継続的に低い熱設計電力のプロセッサが投入されるようになりました。バイオUなどによって新市場が生まれているとはいえ、かつてよりもCrusoeが置かれている市場のスペースは狭くなっているようですがいかがでしょう?

Perry:私たちは現在の状況をまったく悲観していません。まず、競合他社が私たちの製品をマネたという事実は、とても歓迎すべきことだと考えています。マネをされるということは、私たちが考えている方向性が正当であることを証明してくれているようなものです。私たちは何年も先行して低消費電力の製品を開発してますから。例えば、インテルの超低電圧版プロセッサは7ワットのTDPですが、私たちのTDPはもっともっと下げることができます。

 低消費電力のx86プロセッサという分野に対して専業で取り組んでいる唯一の企業でありますし、顧客もその点を非常に高く評価してくれています。そして重要な点は、トランジスタで設計されていた部分をソフトウェアにすることで、本来ならば何四半期もかかる修正や機能追加を、ソフトウェアの書換だけで行える柔軟性を備えています。

 実は就任してからの仕事として、すでに新しいCMSのプロジェクトの立ち上げを行いました。詳しい話はまだできませんが、これまで思いつきもしなかったアイディアを含んだユニークな機能が付加されます。同じ機能をトランジスタを使ってチップで組み込むにはかなりの時間がかかるでしょう。この新しいCMSについては、今年後半、デビッド・ディッツェルCTOから発表される予定です。

ZDNet:新しいCMSはどの世代のCrusoeをターゲットに開発しているのでしょう。次世代の256ビットCrusoeですか?

[本田雅一, ITmedia]

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