News 2002年6月5日 12:09 PM 更新

AMD、Hammerの逆襲

開催中のCOMPUTEX TaipeiでAMDがHammer対応のサードパーティ製チップセットやマザーボードを多数展示した。こうしたベンダーを巻き込んで新世代プロセッサでもIntelに逆襲しようとする同社の戦略は、まずは順調に滑り出したようだ

 IntelによるPentium4プロセッサの度重なる値下げ攻勢に対抗し、PCサーバやPCワークステーションにおけるIntelの牙城を切り崩すためのAMDの切り札がHammerだ。

 このHammer(AMD K8)には、IntelのPentium 4に相当する「ClawHammer」(第8世代Athlon)と、同じくIntelのXeonに相当する「SledgeHammer」こと「Opteron」の2シリーズがラインナップされている。特に、後者のOpteronプロセッサは、AMDにとっては悲願とも言うべきサーバやハイエンドワークステーションへのシェア拡大の役割を担う、同社の最終兵器だとも言える。

 現行のAthlon XPやサーバ、ワークステーションを狙ったAthlon MPは、CPUの世代という点で見れば、Pentium IIIプロセッサ相当。Athlonプロセッサがいかに同一クロックであればIntelプロセッサより高性能だといっても、新世代のPentium 4やXeonと真っ向から戦うには、コストパフォーマンスのよさや価格戦略だけで抗しきれるものではない。

 そこでPentium4が依然として32bitアーキテクチャのままであるのに対して、現行のプロセッサの互換性を維持した32bitソフトウェアと、加えて全く新しい64bitアーキテクチャによる64bitソフトウェアを実行可能な、「X86-64」を搭載しているのが、Hammerというわけだ。

 この全く新しい64bitアーキテクチャを加えたHammerには、当然ながら現行の32bitアーキテクチャによるAthlonやDuronとのハードウェア互換性が全くない。このため、CPUソケットはもちろんのこと、周辺チップセットも全く新規に設計しなければならないわけだ。

 これがもしIntelであれば、自社製の専用チップセットを同時にリリースすれば、それで終わりという流れであろう。だが、AMDの考え方は、より高性能で安価なチップセットを自社以外のメーカーがリリースしてこそ、システムのコストパフォーマンスが高まり、その結果として自社のプロセッサのシェアも高まるというもの。

 こうした戦略によって、複数のチップセットメーカーによる安定したチップセットの供給が可能になり、マザーボード専業メーカーにとっても、コスト面、バリエーションの広がりという面の双方から好ましい状況となるわけだ。

 今回のCOMPTEXにおけるAMDの発表では、Hammer向けのサードパーティ製チップセットやマザーボードがバラエティ豊富に展示されていたが、これにはこうした背景があるのであり、その意味で同社の戦略は見事に当たっていると言えるだろう。

 今回の発表では、AMDからはいわばリファレンスチップセットとして「AMD 8000シリーズ」が展示されていた。AMD8000シリーズには、第8世代Athlon専用の「HyperTrandport」及び「AGP3.0 Graphics Tunnel」をサポートしたノースブリッジの「AMD-8151」と、Opteron用ノースブリッジ「AMD-8131」(HyperTrandportと「PCI-X Tunnel」をサポート)がある。サウスブリッジとしては、「AMD-8111」があり「HyperTrandport I/O Hub」がサポートされており、ノースブリッジのAMD-8151/AMD-8131との通信を800Mバイト/Secで行う事が可能となっている。


AMD製チップセットAMD8000シリーズ

 無論、周辺I/Oに関してもUSB2.0はもちろんのこと、Ultra ATA/133のインタフェースもサポートされている。特徴的なのは、メモリ制御回路で、従来はノースブリッジに内蔵されていたのが、Hammerではプロセッサ自体にメモリ制御回路が内蔵されている。

 今回のデモではDDR266(PC2100)を使用していたが、実際に市場へ投入される製品版では、DDR333(PC2700)がサポートされるのは間違いないだろう。このようにプロセッサがメモリ制御回路を内蔵すれば、周辺チップメーカーの回路設計や製造が楽になっているのは容易に想像ができる。だからこそ今回のイベントで各社から早くもプロトタイプのチップセットが登場したともえいる。

 実際、今回サンプル展示されていたチップセットでは、Aliの「M1687」とSiSの「SiS755」、そしてVIAの「K8HTA」、およびnVIDIA製(名称不明)の4種類が確認できた。加えてAMDのAMD8000シリーズがあるので、都合5種類ものチップセットがあるわけだ。


SiS製チップセットSiS755のリファレンスマザーボード


Ali製チップセットM1687のリファレンスマザーボード


VIA製チップセットK8HTAのリファレンスマザーボード

 これらのチップセットやマザーボードは各社とも、第8世代Athlonの出荷予定である本年末には市場への製品投入を予定しており、加えてOpteron対応の製品も、Opteronが出荷される予定の来年第1四半期中には出荷予定だという。


FIC製第8世代Athlon用マザーボードはMicroATX仕様だ


GigaByte製マザーボードは、AMD製チップセットを搭載


MSI製マザーボードもAMD製チップセットだ

 いずれにしても、Intel Pentium4に対抗できるプロセッサは、AMDのHammerしかないのが現実であり、価格競争と性能競争によるメリットを一番受けられるのは、我々PCユーザーだ。そういう意味からもAMD Hammerの逆襲に期待したい。

[清水 隆夫, ITmedia]

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