News 2002年7月11日 09:40 PM 更新

Klezの感染拡大をとめるのは誰?

都内の大学に通うAさんには、連日、大量のKlezメールが届く。ヘッダを見てみれば全部同じISPから送信されている。「何とかならないのか」と考えたAさんは……

 Klezの勢いがおとろえず、ウイルスメールに迷惑している人も多いだろう。都内の大学に通うAさんも、毎日のように送られてくるKlez感染メールに頭を痛めている。Klezは、差出人のアドレスを詐称するため、自分で感染者に連絡してやめさせることもできない。

 あまりの量の多さにうんざりしたAさんは、何とか対策はないかと、とりあえずメールのヘッダを確かめてみた。すると、すべてのメールが同じISPを経由していることが分かった。そのISPは、利用者の「送信メール」に関してはウイルスチェックを行っていなかったのである。

 Aさんは、「感染したユーザーが問題なのは分かっているが、ISPにも対策を講じる義務があるのではないか」と疑問に感じた。

ウイルスチェックは受信時だけ?

 最近、多くのISPが、ウイルスチェック機能を提供するようになったが、受信だけでなく送信メールに関してもチェックしているISPはまだ少ない。「OCN」を運営するNTTコミュニケーションズでは、「われわれのアクセスサービスの利用者で、社内にメールサーバを持つ企業向けには、送受信時にウイルスを駆除するサービスを提供しているが、個人向けにはまだ考えていない」と話す。

 「企業の場合は、ウイルスを送ってしまったときの被害は甚大なものになるだけに、(送信時のウイルスチェックについては)要望が多い。逆に、個人ユーザーからはあまりそうしたサービスへの声は強くない。今後も提供しないというわけではないが、利用料金が高くなることを嫌がるユーザーもいるだろう。現状では、受信時だけで十分」(NTTコミュニケーションズブロードバンドIP事業部)。

 受信時だけでいいと考えるのは、各ISPが受信時にウイルスメールを駆除すれば、論理的にはウイルス感染の拡大を防げるからだ。ただし、ウイルスは駆除されても、メールボックスには駆除されたという“残骸メッセージ”がたまっていく。

 ソニーコミュニケーションネットワークの「So-net」も、現在は受信時のみのウイルスチェックサービスを提供している。NTTコミュニケーションズと同様に、「どれほど需要があるのかまだ分からない」と見ているものの、「これだけウイルスが蔓延しているだけに、送信時のウイルスチェックも導入しなければならないだろう」と前向きな姿勢を見せていた。

感染者には通知を

 しかしながら、ISP各社がウイルス対策サービスを強化したからといって、Aさんの悩みが解決するわけでもない。こうしたサービスは基本的に有料オプション(200〜300円程度)として提供されており、当然ながら、自分のPCにウイルス対策を講じておらず、ISPのサービスも使わないユーザーがいれば、まったく意味がないのである。

 そこで、Aさんは考えた。ウイルスメールを送信してきたISPに、会員がウイルスに感染していることを知らせて、ISPからウイルスを駆除するよう依頼してもらうことはできないだろうか?

 NECの「BIGLOBE」では、「(情報提供があった場合)、ユーザーに通知する」と話す。「これまでなら、ウイルスに感染したことをユーザー同士が連絡をとって教えていたようだが、Klezのように、差出人が特定できないケースでは、BIGLOBEから連絡することもある」。

 さらにBIGLOBEでは、情報提供がなくても、ウイルスに感染したと思われるユーザーには自主的に通知を行っているという。「(メールの)トラフィックは監視しているので、突然、メールの送信量が増えたりしている利用者には、“ウイルスに感染しているかもしれませんよ。大丈夫ですか”と尋ねたりする。もちろん、メールの内容をチェックしているわけではない。あくまで、トラフィック量から判断している」。

 利用者のウイルス感染に対して、ISPがどこまで責任を負うべきか、明確なガイドラインは存在しない。ただ、中にはウイルスにまったく“無防備”なユーザーもいる以上、ISPには、啓蒙活動も含めてより積極的な取り組みを期待したい。

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関連リンク
▼ OCN
▼ So-net
▼ BIGLOBE

[中村琢磨, ITmedia]

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