News | 2002年7月31日 11:21 PM 更新 |
日本AMDは7月31日、「AMD Developer's Conference 2002 Summer」を都内のホテルで開催した。システムデザイナーやチップ開発者を対象にした今回のセミナーでは、x86-64アーキテクチャを採用した第8世代Athlon/Opteronプロセッサや、その中心となるHyperTransport技術、64ビット対応次世代OS、BIOS、チップセット、ソフトウエア開発環境について語られた。
コードネーム「Hammer」で知られるAMDの次世代64ビットプロセッサは、ClawHammerと呼ばれる「第8世代Athlon」と、これまでSledgeHammerのコードネームで呼ばれていた「Opteron」の2シリーズがラインナップされている。両者の位置付けは、Intelでいうと前者がPentium 4、後者がXeonに相当する。
Hammerは、従来のプロセッサの基礎となっているx86アーキテクチャを拡張した独自の「x86-64技術」によって、従来の32ビットアプリケーションおよび将来の64ビットコンピューティングを全面的にサポートできるように設計されている。今回のセミナーで、64ビットに対するAMDのビジョンについてスピーチした同社CPGプロダクトマーケティング部長の秋山氏は、冒頭、「64ビットコンピューティングへのデマンドが予想より早く来そうだ」と切りだした。
その理由は、32ビットの“アーキテクチャ的な限界”だ。32ビット環境では、メモリの最大搭載量が4Gバイトに制限されている。また、現状の32ビット対応OSでは、さらに少ない2Gバイトのメモリ搭載制限がかけられている。
メモリ価格は、波はあるものの着実に低下し、そしてアプリケーションのメモリ要求はどんどん高まっている。PCにギガバイトクラスのメモリが搭載されてくるのも、遠い将来ではない。さらに、映像や音楽などデジタルデータを扱い始めると、ギガバイトという単位でも足りなくなる。秋山氏は、「アプリケーションは本当に、32ビットの限界である4Gバイトを超えることはないのだろうか」と疑問を投げかける。
「天気予報など自然環境を予測するアプリケーションや動物実験に替わる薬品テスト、遺伝子の分析に基づいた個人ベースの薬剤の提供などには、現在の32ビット環境では無理がある。また個人ユースでも、日常会話のスムーズな音声認識といったアプリケーションには、64ビットの処理能力が必要になってくる」(秋山氏)。
さらに、これらアプリケーションを高いパフォーマンスで使うためには、膨大なデータを指数的に扱う必要があると秋山氏は訴える。「われわれの扱うデータは毎年2倍ずつ増加しており、サイズだけでなく中身も複雑化している。今にでも32ビットの壁を越えそうな状況。32ビットの限界を打破し、拡大するデータを取り持つものが今後必要になる」(秋山氏)。
AMDが考える64ビットへの移行モデルはこうだ。まず、Hammerでx86-64技術を搭載することで、現行のプロセッサの互換性を維持した32ビットソフトウェアと、全く新しい64ビットアーキテクチャによる64ビットソフトウェアを実行可能にする。これによって、ユーザーは現在の32ビット環境を犠牲にすることなく、64ビットの高パフォーマンス環境が手に入る。Hammerが提唱するオープンプラットフォームによって64ビットに不慣れなユーザーもスムーズに導入できる。短期にみても長期的にみてもコスト低減につながり、結果的にユーザーは32ビットから64ビットへ無理なく移行できるというわけだ。
「x86-64アーキテクチャは、32ビット、64ビット両方のアプリケーションにまたがる“掛け橋”といえる。64ビットの第8世代AthlonやOpteronは、エミュレーションに頼らずに現行のアプリケーションを快適に動作可能。ユーザーはそれぞれの最適な時期に64ビットの環境に移行できる。つまりユーザーに移行のタイミングの猶予を与えてくれるのだ。ユーザーは使用中のシステムやアプリケーションを犠牲にせずに、64ビットへの移行できる」(秋山氏)。
同社は今後、プロセッサの生産体制を全面的に64ビットへ移行させる。
「来年、AMDは64ビット化を加速させ、年間3000万個以上の64ビットプロセッサをオープンソリューション向けに提供していく。シングルプロセッサから8プロセッサまでを標準でサポートしているOpteronは、2003年の前半に出荷予定。2003年にはハイエンドから64ビットAthlonへの移行が始まり、2004年末には出荷するプロセッサの全てが64ビットAthlonおよびOpteronになる」(秋山氏)。
セミナーでは、次世代64ビットプロセッサの中心技術となるx86-64アーキテクチャやHyperTransportのテクノロジー解説が行われたほか、UNITED Linuxなど64ビット対応次世代OSの最新状況が各ベンダーから報告された。また、チップセットベンダーやマザーボードベンダーから、X86-64やHyperTransportといった技術を踏まえた製品ロードマップが示された。
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[西坂真人, ITmedia]
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