News | 2002年9月5日 09:59 PM 更新 |
グループウェアインタフェース訴訟で、サイボウズが敗訴――。サイボウズが、同社グループウェア製品の著作権を侵害したとして、ネオジャパンを相手取り、ネオジャパン製品の頒布、ならびに使用許諾差し止めを求めていた訴訟で、東京地方裁判所は9月5日、サイボウズ側の主張を全面的に棄却した。サイボウズ側の主張を一部認めた昨年のl東京地裁の仮処分決定とは正反対の今回の判決に、サイボウズ最高経営責任者(CEO)の高須賀宣氏は、「非常に残念。ソフト産業全体がフリーライドの悪癖に染まる可能性がある」とコメント。サイボウズは、控訴する方針を固めている。
サイボウズは、ネオジャパンのグループウェア「iOffice2000バージョン2.43」および「iOffice V3」のインタフェースが、サイボウズの「サイボウズ Office」シリーズを模倣していると主張。著作権法と不正競争防止法に基づき、2001年8月に訴訟を提起した。同年6月には、ネオジャパンのiOffice2000バージョン2.43については差止めを認める東京地裁の仮処分決定を勝ち取っていたが、iOffic V3については著作権侵害が認められず、また、仮処分決定後もネオジャパンが両製品の使用許諾を続けたことから、本訴に至っていた。
サイボウズ弁護団によれば、判決では総論として「ビジネスソフトのユーザーインタフェースや、秩序のある画面遷移の方法は著作物として保護されるべきである。ただし、それは画面の1部分だけを指すのではなく、画面全体のオリジナリティがどれだけ共通しているかによる」と主張。「両製品の画面から受ける印象は同じではなかった」という理由から、サイボウズの主張を棄却したという。
「両社の間には、ソフトウェアの機能ないし、利用者による操作の便宜上等の観点からの発想の共通性を認める点はあるにしても、そこに見られる共通点から表現上の創作的特徴が共通することを認めることはできない」(判決文より抜粋)。ポイントになったのは、「表現上の創作的特徴」の部分。デザインが似通っていても、そのデザインがオリジナリティ溢れるものなのかどうかということが、問題になったわけだ。サイボウズ弁護団によれば、判決ではこの部分について、次のような説明があったという。
「ビジネスソフトというものは、提供する機能に制限があり、創作性が反映されるのはわずかである。また、グループウェアでは、黒板やホワイトボード、システム手帳など、既存の資産を引き継ぐことによる表現上の制約も発生する」。つまり、グループウェアソフトでは、そもそも、オリジナリティを発揮することは困難ということになる。「デッドコピー以外は、著作権侵害とは認めないというような考え方」(サイボウズ弁護団)。
今回の判決内容についてサイボウズ弁護団では、「著作権侵害事件の訴訟は難しい。画面の印象が似ているとか、似ていないとか、裁判官の主観で判断されてしまっている」と困惑の色を隠さない。また、高須賀氏は、「訴訟の争点となっている製品は、旧バージョンのもので、われわれにとっても、ネオジャパンにとってもビジネス的な影響はほとんどないだろう。だが、和解する気はない。この訴訟の意義は、ビジネス的なものではなく、ユーザーインタフェースの著作権について、はっきりとした前例を作ることだ」と強調した。
なお、勝訴したネオジャパン側では、「サイボウズは、画面の1部分を切り出して議論を行っている。画面全体として、似ているか似ていないか判断した正当な判決」としている。
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[中村琢磨, ITmedia]
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