News 2002年9月5日 10:20 PM 更新

プラズマクラスターイオンがウイルスを退治する?

シャープが、同社独自の空気清浄化技術「プラズマクラスターイオン」に、空気中のウイルスを死滅させる効果があることを北里環境科学センターとの共同研究によって検証した

 ウイルスを退治する画期的な方法が見つかった――と言っても、コンピュータウイルスのことではなく、風邪などの原因となる本物のウイルスのことだ。

 シャープはこのほど、同社独自の「プラズマクラスターイオン空気清浄化技術」が、空気中のウイルスを不活化(増殖能力を失わせて死滅させること)する効果があることを、北里環境科学センターとの共同研究によって検証。9月5日に、同技術に関する説明を行った。

 同社副社長の三坂重雄氏は「今までインフルエンザウイルスなどに対しては、ワクチン接種など人間の体内で感染を予防する方法しかなかった。今回は、人間の体の外で直接ウイルスそのものを不活化するという世界で初めての画期的な技術を確立した」と語る。

 そもそもプラズマクラスターイオンとは、どのような仕組みなのだろうか。

 空気中には、カビ菌のほかタバコの煙や排気ガスに含まれるNO(酸化窒素)といった有害物質、ダニ、ホコリといった臭いのモトがたくさん浮遊している。この汚れた空気中にイオンを放出すると、この浮遊する臭いのモトが分解されることが知られている。


イオンによる空気浄化の原理

 しかし、イオン発生ユニットなどで生成したイオンそのものは、空気中では非常に不安定となる。そこで同社では、プラズマ放電によって生成されたプラスとマイナスのイオン粒子のまわりに複数個の水分子をクラスター(ブドウの房)状に凝集させる「クラスターイオン化」技術を開発。現在、同技術の応用製品は、空気清浄機やエアコンのほか、冷蔵庫、掃除機、衣類乾燥機、加湿器などさまざまな家電製品に広がっている。


イオン粒子のまわりに複数個の水分子をクラスター(ブドウの房)状に凝集させる

 このプラズマクラスターイオンが、臭いのモトを分解するだけでなく、細菌やウイルスの活動を弱める効果があるということは、以前から言われていた。「実際に、購入ユーザーから“風邪をひかなくなった”“食べ物が腐らなくなった”といった声が寄せられていたのは事実。しかし当社としては、公的な試験機関でしっかりとした検証した結果が出るまでは、公表するべきではないとの姿勢を貫いてきた」(同社)。

 同社では2001年4月から、環境試験で有名な北里環境化学センターと共同で、プラズマクラスターイオンのウイルスに対する評価試験を開始。1年以上に及ぶさまざまな検証を経て、今回の発表に至ったという。

 北里環境科学センター所長の平野富雄氏は「細菌やウイルスの試験を行う機関はほかにもたくさんあるが、このような装置の研究ができるのはわれわれだけ。それでも、今回の検証成果に至るまでは試行錯誤の連続だった。プラズマクラスターイオンがウイルスを不活化するという結果は、画期的な発見。今後は、不活化のメカニズムの詳細な研究などを進めていきたい」と語る。

 説明会では、同社電化商品開発センターの野島秀雄氏から検証実験の内容が紹介された。

 実験では、2つの円筒状の容器内に除菌イオン発生素子を設置したものとしないものを用意。それぞれ片側からインフルエンザウイルスを噴霧し、1つはプラズマクラスターイオンが放出されている空間を通過させ、もう1つは単に空気中を通過させて、再びウイルスを採取。その活性状態を「培養細胞によるプラック法」「赤血球凝集反応法」という2通りの方法で検証された。


プラズマクラスターイオンが放出されている空間をウイルスに通過させる実験装置


 培養細胞によるプラック法では、採取したインフルエンザウイルスを生きた細胞に注入し、ウイルスに感染しやすい状態を作り出した。「単に空気中を通過させただけのウイルスを注入した方では、当然ウイルスに感染し、細胞がウイルスによって破壊されてしまう。それに対してプラズマクラスターイオンを放出した空間を通過したウイルスを注入した細胞の方は、注入前と同様に細胞が石垣のように整列したままだった。つまり、ウイルスが不活化され、感染しなかったのだ」(野島氏)。


細胞に対する感染実験の結果。上が除菌イオンあり、下が除菌イオンなし

 インフルエンザウイルスに対する効能評価として一般的な赤血球凝集反応法でも、通常はウイルスが赤血球と反応し、こう着してしまうのに対して、プラズマクラスターイオン側のウイルスは赤血球との反応はみられなかったという。

 「また、プラズマクラスターイオンによる不活化作用は、インフルエンザだけでなく夏風邪の原因であるコクサッキーウイルスや院内感染の原因として問題となっているMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対しても効果があることが今回の研究によって明らかになった」(野島氏)。


MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対しても効果を発揮

 もともと、プラズマクラスターイオンは「除菌イオン」であることをアピールしており、公的な試験機関(石川県予防医学協会)において、大腸菌や黒カビ(クラドスポリウム)といった浮遊菌の滅菌作用が検証されていた。

 ウイルスを不活化させるほどの効果があるプラズマクラスターイオンは、果たして人体にとって安全なものなのかが気になるところだ。「除菌イオンユニットで生成されるイオンの構造や化学組成は、自然界に存在するイオンと同じものであるため、人体にも影響は全くない」(同社)。

 他メーカーでも、空気清浄機や加湿器などでイオン発生装置を搭載した製品がある。これらも、プラズマクラスターイオンと同様にウイルス不活化の効果があるのだろうか。

 「他社製品は、マイナスイオンのみを発生させている。今回の検証では、プラス/マイナスそれぞれのイオンを単独で放出したケースでの検証も行われたが、その場合はウイルス不活化の効果は確認できなかった」(野島氏)。

 つまり、マイナスイオンだけを放出するだけでは、リフレッシュ作用は得られたとしても浮遊ウイルスや病原性細菌の不活化という効果は期待できないというのだ。「プラスとマイナスのイオンをそれぞれバランスよく放出することができるプラズマクラスターイオンならではの効果」(野島氏)。

 同社では、今秋発売予定の空気清浄機7機種とエアコン13機種に、ウイルスの不活化をうたった第3世代の除菌イオンユニットを搭載した製品群をラインアップする。ただし、同社が2000年6月から発売してきた第1、第2世代の除菌イオンユニット搭載の「プラズマクラスターイオン」シリーズでも、今回検証されたウイルス不活化の効果は得られるという。

 「今秋の新製品は、競合製品に比べて1万円プラス程度の価格差で出していく。プラズマクラスターイオン製品で、2004年度には1000億円の事業規模にするべく販売を拡大していく。空気のあるところすべてを、クラスターイオン空間にしていきたい」(三坂氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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