News:ニュース速報 | 2002年9月19日 07:17 PM 更新 |
NTT(持株会社)と科学技術振興事業団(JST)は9月19日、人工原子を量子コンピュータのメモリ(量子ビット)に応用できる可能性を確認したと発表した。人工原子中の電子スピンが、0か1を表せるメモリとして十分な時間、記録を保持できる可能性を示し、量子コンピュータ実現に一歩近づいたとしている。研究結果は「Nature」(9月19日号)に掲載される。
人工原子は、人工的に作製したナノオーダーの量子ドットのうち、電子が少数で通常の原子で見られる電子の性質を示すもの。研究は、人工原子の電子スピンが自然界の原子の電子スピンと同様の性質があることを証明。人工原子の電子スピンを使用する電子スピン量子コンピュータへの応用の可能性を導いた。
研究で使用した人工原子は、半導体の積層構造を電子ビーム(EB)露光技術で作り、電圧により電子の数を0個から正確に制御できる特徴がある。新たに「電気的ポンププローブ測定」と呼ばれる測定方式を考案し、光学測定では難しかった電子1個の出入りを時間的に正確に制御できるようにし、エネルギー緩和時間(エネルギーの高い状態に励起してから、エネルギーの低い基底状態へ変化する時間)を正確に測定可能にした。
その結果、人工水素原子(電子1個)のエネルギー緩和時間は3−10ナノ秒、人工ヘリウム原子(電子2個)では0.2ミリ秒だった。スピン変化を伴う人工ヘリウム原子では緩和時間が2万−6万倍の差が現れた。これは、自然原子と同様に、スピンが変化しない場合にエネルギー緩和が起こりやすいという「選択則」で説明でき、人工原子が自然原子と同様の性質を持つことを示した。
実験結果から、電子スピンをメモりに使用した場合のエネルギー緩和時間は1ミリ秒を超えると推定された。量子演算に必要な数ピコ秒を10億倍も上回り、電子スピンをメモりに利用できることを示唆している、という。
今後はメモリ読み出し技術や、論理演算を行う量子ロジックゲートの開発を進め、量子コンピュータの実現を目指す。
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