News 2002年9月25日 08:12 PM 更新

DVD-Rメディアはこうやって作られる――日立マクセルの工場を見てきました(2/2)


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メディア製造工程

 メディアの製造工程は、先のメタルマスターを使用し、実際のメディアを作成する工程だ。手順は、大まかにいって、(1)ポリカーボネートを使用したメタルマスターの複製の作成(基板の作成)、(2)記録層の塗布、(3)反射層の生成、(4)ダミー基板との張り合わせ、(5)プリフォーマット、(6)印刷、という順序で行われる。


基板に使用される「ポリカーボネート」。実際には、これを高温で溶かして使う

 (1)の「基板の作成」では、射出成型機と呼ばれる機械を使い、高温に熱したポリカーボネートをメタルマスターを取り付けた金型内に射出する。こうしてウォブルグルーブとランドプリピットが刻まれたポリカーボネート基板を作成する。


射出成型機を使用して基板を作成しているところ

 作成されたポリカーボネート基板は、次の記録層の塗布を行うべく運ばれていく。


次のステージへと運ばれていくポリカーボネート基板

 (2)の「記録層の塗布」では、スピンコートと呼ばれる方法で、記録層に使用される有機色素(日立マクセルではアゾ系の色素を採用している)が塗布される。スピンコートは、ポリカーボネート基板を高速回転させ、遠心力を使用して均一な厚さで有機色素を塗布できる。この工程は、市販のCD-ROMやDVD-ROMを作成する場合にはない。記録メディアでのみ必要となる工程だ。


スピンコートで有機色素を塗布されているポリカーボネート基板

 (3)の「反射層の生成」には、スパッタリングと呼ばれる方法を用いる。このスパッタリングは、真空で基板上に物質を付着させて薄膜を形成する方法の一種である。記録型DVDメディアやCD-R/RWメディアなどの反射層を生成する場合には、一般的に使用されている。この工程で、DVDで使用される0.6mmの基板の製造は終了する。


スパッタリングによって、反射層が付けられたポリカーボネート基板

 (4)の「張り合わせ」工程は、あらかじめ準備しておいた0.6mmのダミー基板と作成された基板を張り合わせる、DVD作成固有の工程である。両面メディアを作成する場合は、ダミー基板の代わりに、記録用に作成された基板を張り合わせることになる。

 この部分は、企業秘密ということで、残念ながら写真を撮影できなかった。

 ここまででメディアの製造工程としてはほぼ完了。日立マクセルでは、この工程が終了した段階で、DVD-Catsなどの測定器を使用し、品質に問題がないかどうかの記録前検査を抜き打ちで行っていた。


メディアの抜き打ちチェックに使用される「DVD-Cats」

 (5)の「プリフォーマット」は、コンシューマ用のDVD-R for Generalメディアのみで必要になるもので、規格で規定されている情報をメディアに書き込む工程である。この工程では、メディア1枚1枚に対して処理が行われている。処理に必要な時間は、メディア1枚あたり約1分ぐらいということだった。


プリフォーマットは、メディア1枚あたり1台のドライブを使用して行われている

 (6)の「印刷工程」は、出来上がったメディアの盤面に対し印刷を行う工程。これが終われば、後はパッケージングが行われ、いよいよ出荷だ。

工場見学を終えて

 駆け足の紹介になったが、工場はもちろんクリーンルームとなっており、製造でも人が極力介在しないように設計されていた。ほとんどは機械を使った自動処理で行われている。

 ちなみにDVD-Rメディアの製造で一番難しいのはどこか尋ねたところ、「メディアの張り合わせ工程」という答だった。「これをいかに短時間終えるかが、生産性の向上において最も重要になる」のだそうだ。

(編集部注:日立マクセルからの希望により、文中の写真を一部差し替えました)

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[北川達也, ITmedia]

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