News 2002年10月8日 11:10 AM 更新

「2002年のプリンタ」――その出来栄えは?(1/3)

エプソン、キヤノンの主要2社が新製品を発表し、プリンタの年末商戦が始まった。今年のウリは何なのか。画質や印刷速度、デジカメ対応は本当のところどうなのか。“2002年モード”のプリンタの出来栄えをチェックしてみよう

 エプソン、キヤノン。主要2社のプリンタ新製品が出そろい、今年もカラーインクジェットプリンタの年末商戦が始まった。この2社のシェア合計で、昨年の年末商戦は90%近くを占めたと言われる。まだすべての製品が市場に出荷されているわけではないが、今年の各社新製品を概観してみることにしよう。

速さを目指した新製造法ヘッドで、短所をひとつ克服

 エプソン製プリンタの今年のトピックは、なんと言っても上位2機種の速度アップだ。エプソン製プリンタが採用するマイクロピエゾ技術は、サーマル系技術を使うキヤノンやHPのインクジェット技術と比較してノズル配置密度が低く、結果として少ないノズル数で印刷しなければならない(速度が遅くなりがち)という問題があった。

 例えば昨年の最上位機種であるPM-950Cのノズル数は各色96本。これに対してキヤノンの対抗機種BJ F900は各色512本と5倍以上。サーマル系技術ではノズルを100%完全に利用することは難しく、またマイクロピエゾ技術で利用できるドットサイズ可変技術を用いれば、その差を大きく詰めることは可能だが、さすがに“同じ速度”というわけには行かなかった。結果、“きれいだけど、本当にきれいなモードでは遅すぎる”というのが、PM-950Cの大方の評価となっていた。

 そこでヘッドの製造工程を大幅に見直し、従来比2倍近いノズルを配置することに成功したのが、PM-970CおよびPM-930Cに搭載された新型ヘッドである。

 新型ヘッドは180dpiでノズルを配置し、PM-970Cは1インチの長さにノズルを配置している(PM-930Cはヘッド幅は同じながらノズル配置は0.5インチので、それを隣り合う列が重ならないように配置)。この結果、PM-970CはデフォルトのきれいモードでA4サイズの写真1枚を1分以内に印刷可能な速度を得ている。つまり昨年のキヤノンBJ 900が各色512ノズルヘッドで出した速度に追いついたことになる(ただし解像度が異なるため一概には言えない)。


2002年のエプソン最上位機種、「PM-970C」


新開発のMACHヘッドで印刷速度をアップ

 しかしエプソンは解像度の低いきれいモードではなく、より高い画質モードに設定した時の従来機に比べての速度アップをアピールしたいようだ。すなわち、PM-950Cの2880×1440dpi(PM-950C超高精細モード、全弾2ピコリットル)の縦方向解像度をアップさせ、2880×2880dpi(PM-970C超高精細モード、全弾1.8ピコリットル)と2倍の解像度にしながら、ほぼ2倍に相当するスピードを得ている――ということである。昨年末、速度が遅くとも予想以上に売れた最高画質プリンタを、さらに高画質にして速度も2倍とアピールしているわけだ。そこには“一番きれいなプリンタの立場を維持し、さらに弱点の速度を解決すれば負けない”という目算があるのかもしれない。

 まだ評価機のテストをすべて終えていない段階ではあるが、「最高画質のプリンタはどれか?」と聞かれた時、今年もPMシリーズ最上位機種との結論に導くことになりそうだ。ただ、画質は粒状性や部分的な階調の滑らかさだけでは評価できない部分も多い。その最たるものが、“色味”だろう。

 エプソンは今年、自動調整時の色味を大きく変化させてきた。これまではデータに対して忠実な絵作り+記憶色再現を目指した彩度や色相の微調整を行う、家庭向け写真プリンタとしてはオーソドックスなやり方をしていたが、今年はPCディスプレイ上で見るデジタルカメラ画像を意識して、低彩度領域の彩度アップを図った新しい色設計を採用している。

 これはsRGBで作られたデジタルカメラ画像をディスプレイ上で表示した時、自発光ディスプレイであるCRT、LCDでは低彩度の色が実際の色よりも彩度が高く感じことから、反射原稿(低彩度領域は控えめに見える)の低彩度領域で彩度を持ち上げることで、ディスプレイ上での見た目に近づけた、というもの。なお、高彩度の領域は補正を行わないため、彩度のダイナミックレンジを圧縮する処理と言い換えてもいいかもしれない。

 実際に印刷を行ってみると、確かにディスプレイ上の色(特にLCD)に近い印象の色で出力される。特に補色系の冴えない色で写ったデジタルカメラ写真を印刷すると、まるで原色系フィルタのデジタルカメラ画像のように見える。高彩度領域は変わらないため、全体的な絵の破綻もない。カラーマッチングシステムを用いた印刷に慣れていると違和感を感じるだろうが、一般には「きれいに出力される」と思うだろう。なお、ICMやsRGBを用いたカラーマッチングモードでは、こうした処理は行われないようだ(従来の色設計を踏襲している)。

[本田雅一, ITmedia]

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