News 2002年10月8日 11:16 AM 更新

「2002年のプリンタ」――その出来栄えは?(2/3)


前のページ

 一方のPM-930Cは、かなりお買い得な価格設定だ。PM-970Cと共通のきょう体デザインと機能で最小ドットも1.8ピコリットル。最高画質モードはPM-950Cの2倍の解像度ながら、速度は従来と同じになっている。これで実売が3万円を切っており、ダークイエローが省かれた6色構成ながら最高レベルの写真画質を低価格で楽しみたいユーザーには注目の製品と言えそうだ。

 このほか、USBデジカメダイレクト機能を搭載したPM-860PTもあるが、今年のエプソンは中級機以下のラインナップにあまり大きな変化がない。上位2機種に全力投球した結果だろうか?

ベストバランスのPIXUS 850iで勝負するキヤノン

 キヤノン製プリンタは、昨年あたらしく投入したブランドPIXUSを製品名に織り込み、BJの名称を取り払ってしまった。さらに写真画質重視の6色系Fシリーズと実用性能重視の4色系Sシリーズも統合している。

 これは新ブランドの戦略がうまく浸透していることを示していると考えられると共に、FとSで異なる広告戦略を行う必要がなくなったと判断していることを示している。その背景にあるのは、サーマル系インクジェットプリンタとしてははじめて製品化した、2ピコリットルの極小インク滴である。

 まず昨年までのF系プリンタを引き継ぐ製品として、最上位に各色512ノズル(全ノズル2ピコリットル)6色インク印刷のPIXUS 950iを設定している。これにより、従来機のBJ F900/F930に対して大幅な画質アップが図られた。


キヤノンの最上位機「PIXUS 950i」


2ピコリットルの極小インク滴に対応した「スーパーフォトノズル」

 BJ F系のプリンタは従来機種の4ピコリットルでも、ライトインクの濃度が1/6と薄い(エプソンPMシリーズは1/4)ため、ハイライト領域の粒状感は少なかった。しかし、レギュラーインクとのつなぎ目では濃度差が大きくなり、たとえば青空、夕焼けなどのグラデーションでインクの切り替えが目立つ場面が見受けられた。同様に人肌のシャドウ部への階調表現で、ざらつきが出る場合があった。

 しかしドットサイズが小さくなったことにより、レギュラーインクがより目立ちにくくなり、従来滑らかさが失われていた部分が大きく改善されている。ライバルのPMシリーズ最上位機種が、さらに滑らかさを向上させたこともあり、粒状性で追いついたわけではないが、PM-950Cの超高精細モードと同等レベルの画質にはなった。粒状性にのみテーマを絞って詳細な比較を行う場合はともかくとして、エプソンとキヤノンの最上位機種に差はほとんどない。

 これはドット配置にも言える。BJ F850以降のキヤノン製6色機は、なぜかキャリッジに対して垂直方向に、細かい筋がハーフトーンのように並ぶ現象があった。しかも、この問題は以前からあるにも関わらず、なぜかほとんど改良を重ねられないまま年を重ねてきた。しかし、理由は明らかではないものの、PIXUS 950iにはこの現象が全く見られない。ドットは均一に配置されており、ドットサイズの縮小と共に滑らかさ向上につながっているようだ。

 それでいて、印刷速度は従来機と同じレベル。ドットサイズが小さくなり、デフォルト時の解像度は2400×1200dpiに、最高画質時の解像度は4800×1200dpiへと向上したが、ノズル利用率の向上で、A4サイズ1枚をデフォルト時約1分、最高画質時約2分を維持している。デフォルト設定時の速度はPM-970Cに追いつかれたが、同程度の解像度ではPIXUS 950iの方が高速になる。

 確実に画質を向上させた950iも良い製品だが、それ以上に注目されるのはPIXUS 850iである。この機種は昨年の高速4色プリンタBJ S700の進化バージョンだが、従来ノズルに加えてシアンとマゼンタに通常ノズル(5ピコリットル)と同数の2ピコリットルノズルを配置した。2ピコリットルノズルはライトインクの代わりに使われる。


ベストバランスの「PIXUS 850i」

 2ピコリットルという数字は、かつてヒューレット・パッカードが研究段階で飛ばした時「将来、2ピコリットルのインク滴を製品で採用したならば6色は不要になる」と話した、レギュラーインクのドットが見えにくくなるスレッショルドでもある。4色インクでも2ピコリットルならば、最適配置にすることで粒状感を抑えられると、インクジェットプリンタの技術開発に関わっていた人たちは考えていたわけだ(ちなみにエプソンによると、PM-950Cの2ピコリットルノズルは正確には2.4ピコリットル程度だったそうだ)。

 では実際のPIXUS 850iの画質はどうなのか?

[本田雅一, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/3 | 次のページ