News 2002年10月28日 09:40 PM 更新

日本を狙う――Dell CEOが来日会見

米Dell Computer会長兼CEO(最高経営責任者)のMichael Dell氏が来日会見を実施。業績報告や今後の方針、日本市場への期待などを語った。また、PDAやプリンタなど新規分野への取り組みにも言及した

 米Dell Computer会長兼CEO(最高経営責任者)のMichael Dell氏が10月28日、都内ホテルで来日会見を行い、不況の中でも好調に推移する同社の業績報告や今後の方針、日本市場への期待などを語った。


CEO(最高経営責任者)のMichael Dell氏

 Dell氏は冒頭、今年第3四半期のPC市場全体の動向と同社の業績について触れ「世界のPC市場は、昨年第3四半期は対前年比13%ダウンのマイナス成長だったが、今年第3四半期は5%以上成長するなど少しずつ好転してきてはいる。だが、まだ厳しい。このように市場成長率が鈍化している中、われわれはユーザーにフォーカスすることで、確実にシェアを伸ばし、主要PCメーカーの中で唯一利益を上げている」と述べた。


PC市場とDellとの成長率の差

 Dell氏は、過去5年間で176%と大きな伸びをみせている同社の売り上げや、1997年の第3四半期に5.8%しかなかった全世界での台数シェアが今年第3四半期は16%まで拡大している点を示すなど、同社の好調な業績を数字面で披露。そして、HPとCompaqの合併によって奪われていたPCシェア首位の座を、今第3四半期では再び奪取したことを報告した。利益面でも、今年第3四半期は22%増(同社予測値)、営業利益が36%増(同社予測値)と、こちらも好調だ。


PCメーカー各社の台数シェアの推移

 これらの数字が物語るように、同社の業績拡大のポイントは、シェアアップとともに利益もしっかり伸ばしている点だ。「PCメーカーの中で、当社だけがシェアと利益の両方を伸ばしている」(Dell氏)。

 なぜ、Dellだけが好調を維持できるのか。Dell氏はその理由について「ユーザーの声を反映したダイレクトマーケティングというビジネスモデルが、パワーを発揮している」と強調する。

 PC業界には、“独自仕様”“標準仕様”という2つの大きな流れがあると語るDell氏は「独自仕様は、技術を守ろうというメーカーの考えに基づくもの。独自仕様でユーザーを囲い込むのではなく、ユーザーに選択の幅を与えるのが標準仕様。コストパフォーマンスが高く、ポテンシャルをフルに生かせるものを提供できるほか、企業の大量ニーズをカバーできる」と、標準仕様の重要性を訴える。

 「新規参入が難しいサーバやストレージ市場で当社が成功したのも、標準仕様を重視したから。この分野では、競合他社と比較しても、当社の成長率がもっとも高い」(Dell氏)。

 順調に売り上げと利益を伸ばす“Dellモデル”だが、この好調さはいつまで続くのだろうか。Dell氏は、「1970年代初頭から販売されたPCは、全世界で10億台に達した。だが、これからの10億台は、さらに速く到達するだろう。これは、Dellにとっても大きなチャンス。この中でシェアをしっかり獲得していき、売り上げを倍増させる」と、さらなる成長目標を語る。


Dellの製品別売り上げ。成長分野への注力で売り上げ倍増を目指す

 「エンタープライズ/サービス/周辺機器といった成長分野に注力することで、売り上げ倍増は達成可能。今後も、市場は厳しい状況が続くだろうが、その中でDellはユーザーのニーズを捉え、ユーザーの信頼を得てそれを生かしていくというビジネスモデルを続けていくことで、この大きな目標に向かっていく」(Dell氏)。

PDAは検討中。プリンタは日本市場も視野に

 Dell氏が挙げる成長分野の中には、周辺機器への取り組みが含まれている。先日同社は、プリンタの開発・製造で米Lexmarkと提携、2003年に自社ブランド製品でプリンタ市場へ参入することを明らかにした。また、PDAなどモバイル分野への参入の可能性も、アナリストが指摘している

 この点に関してDell氏は「プリンタ製品は日本市場でも投入していく。PDA市場に関してはアナウンスできる段階ではないが、以前から注目してきた。現在は注力分野としてサーバやストレージを挙げているが、PDAをまったく考えていないわけではない。Tablet PCに関しては、大きな市場になるかニッチ市場なのか、現在見極めている状況。Dellとしては、ボリュームある市場に参加していきたい」と語った。

日本市場に大きな期待

 好調に推移する同社の売り上げの中でも、成長著しいアジアエリアの貢献は大きい。Dell氏は「アジア地域は近年、2ケタ成長を続けており、日本とアジア・太平洋の両市場をあわせると、2003年にはヨーロッパを追い越して当社の第2位の市場となる。2005年には、(米国も抜いて)第1位となるだろう。特に日本は重要な市場で、大きな期待を寄せている」と語る。

 同社の製品やサービスには、日本市場から生まれたものも多い。例えば、現在同社がPC量販店で展開中の展示スペース「Dell Real Site(デル リアル サイト)」のプログラムは、日本で始めたものだ。「PCショップで実物に触れ、インターネットサイトで購入するという日本発のビジネススタイルは米国にも持ち込まれ、カナダでも実験的に開始。中国やヨーロッパにも展開を予定している」(Dell氏)。そのほかにも、デスクトップPC「Dimension4500C」やノートPC「X200NoteBook」などは、日本市場をターゲットにした製品だ。

 同社はDell氏の今回の来日に合わせて、現行製品と比べ約半分に小型化した企業向けデスクトップPC「OptiPlex SX260」を発表した。これも、日本市場からの声をもとに開発された戦略製品だ。


省スペースを追求した企業向けデスクトップPC「OptiPlex SX260」

 デルコンピュータ社長の浜田宏氏は「工業デザインにおいて、日本はトレンドの最先端を走っている。日本で受け入れられる製品を作ることは、Dellの将来の上でも大切。省スペースで高性能なSX260という製品は、世界でも通用する」と語る。

 「日本のコンシューマ市場は、オンライン販売が中心となっている。日本のオンライン売上げ比率80%というのは、世界でもトップ。日本でもいずれは、ナンバー1コンピュータメーカーになりたい」(Dell氏)

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[西坂真人, ITmedia]

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