News 2002年11月15日 09:35 PM 更新

“Linux注入”によるPC延命サービスも――IBMのPCリサイクル事業

日本アイ・ビー・エムが、ワンストップの循環型PCリサイクル事業を発表。その中には、陳腐化したPCにLinuxをインストールし、ウェブなどの専用端末として再利用する新サービスも含まれている

 日本アイ・ビー・エムは11月15日、さまざまなPCリサイクル関連サービスをワンストップで提供する「IBMリサイクル・ソリューション・サービス」を発表。同日に都内で、同社のリサイクル事業に関する説明会が行われた。

 PCの普及が進むにつれ、産業廃棄物となる使用済みPCの量も年々増加している。同社環境担当の小林光男氏は「1997年には3万5000トンだった廃棄PCが、2002年には8万トンにまで拡大し、産業廃棄物の埋立地もひっ迫している。改正リサイクル法など、循環型社会に向けた法規制も始まった。この問題に企業としてどう取り組むか。メーカーとして社会的責任は増大している」と語る。


使用済みPCの廃棄予測重量の推移

 同社は1999年1月に、ユーザーが不要になったPCの廃棄に伴う作業を支援する「PCリサイクル支援サービス」を開始。2000年12月には、企業で不要になったPCを引き取って再生し、非営利団体に寄贈する「リユースPC寄贈支援プログラム」をマイクロソフトと共同で発表するなど、PCリサイクル事業には早くから取り組んでいた。

 また11月11日には、事業系PCや周辺機器の回収/リサイクル/廃棄などを一括して受託する「PC回収リサイクル・サービス」を、日立製作所と共同で開始すると発表した。これは、2001年 4月1日から施行された「資源の有効な利用の促進に関する法律(改正リサイクル法)」に基づき、「広域再生利用指定産業廃棄物処理者に係る指定」を受けて行われるもの。

 今回発表されたIBMリサイクル・ソリューション・サービスは、これまでの「PCリサイクル支援」「リユースPC寄贈支援」「PC回収リサイクル」に、新たに3つの新サービスを加えて、ユーザーのPC廃棄に伴う負担の軽減からPCのリユース/リサイクル/長寿命化の促進までワンストップのソリューションを提供するものだ。

 「これまでIBMは、エコデザインコミッティなどを通じて循環型社会構築を模索してきた。その1つの例が、電力使用量のピーク時間帯を避けて夜間に充電を行うという今年2月発表の電力ピークシフト対応ThinkPadだ。さらに社内で再資源化委員会を作り、この取り組みを推進している。今回の新ソリューションは、これまで積み上げてきたものの集大成」(小林氏)。


「新ソリューションはこれまで積み上げてきたものの集大成」と語る同社環境担当の小林光男氏

 今回新たに加わったサービスは、使用済みPCのHDD内データの消去を支援する「データ消去支援サービス」、リユースを前提にユーザーのPCを同社が買い取る「お客様所有PC買取サービス」、スペックが陳腐化したPCの再利用を促す「PCロングライフ・サービス」の3つ。また、従来の「PCリサイクル支援サービス」を、PC以外の電子機器のリサイクルを支援する「機器リサイクル支援サービス」に改めた。

 IBMリサイクル・ソリューション・サービスのサービスメニューと内容、開始時期は以下の通り。

サービスメニュー内容開始時期
データ消去支援サービス使用済みPCのHDD内に保存されている業務データの消去を支援12月初旬
お客様所有PC買取りサービスリユースを前提にユーザーのPCをIBMが買い取る11月18日
PCロングライフ・サービススペックが陳腐化したPCの再利用を促す12月2日
機器リサイクル支援サービスPC以外の電子機器のリサイクルを支援11月18日
PC回収リサイクル・サービス事業系PCや周辺機器の回収/リサイクル/廃棄などを一括して受託11月18日
リユースPC寄贈支援プログラム企業で不要になったPCの非営利団体への寄贈を支援2001年2月より実施

Linuxで、陳腐化したPCを復活・延命

 注目したいのは、スペックが陳腐化したPCの再利用を促す「PCロングライフ・サービス」。これは、Windows 95/98の環境で使われていた企業内の古いPCを、同社の綾瀬IFC(インテグレーテッド・フルフィルメント・センター)に持ち込んで稼動テストやクリーニングを行い、企業で再び利用できるPCとして復活させるサービスだ。

 このサービスのポイントは、再利用PCにはLinuxをOSとしてインストールする点。軽量動作のLinuxを使い、ウェブ閲覧/メール/ワープロ/社内研修用など用途を限定した専用PCとして再生するのだ。

 「スペックは低くなってしまったが、まだまだ使えるようなPCを長期にわたって使用できるようにするサービス。Linuxを使って用途を限定すれば、低いスペックのPCでも企業内で十分実用的に使える。このサービスによって、廃棄PCを減らすことができる」(PC製品事業部長の須崎吾一氏)。


PC製品事業部長の須崎吾一氏

 Linuxは、3社のディストリビュータが提供するものから、ユーザーが希望のものを選択。その配送にも、ごみを出さないマルチパック(専用通い箱)を使用するなど、徹底した環境への配慮が施されている。申し込みは10台以上からで、料金は1台あたり8000円(10台契約の場合)から。

 同社は、ユーザーのIT関連コストの削減や生産性向上への寄与を目指したPC事業の新戦略「Thinkストラテジー」を推進している。このThinkストラテジーのもとで提供されている関連サービスとして「ThinkService」があるが、今回のIBMリサイクル・ソリューション・サービスは、このThinkServiceの一部と位置付けられている。

 「製品の開発から製造、販売、廃棄、リユースという製品ライフサイクル全体を通じて、“環境への配慮”を大きな柱の1つとしている。大量に出る産業廃棄物としてのPCをいかに少なくし、有効に利用し、資源としていくかを、PC事業の一環として取り組んでいる。例えば、ThinkPadは設計段階から環境に配慮したものになっている。今後もThinkストラテジーを通じて、社会の問題やユーザーの期待に応えていく」(須崎氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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