News 2002年12月2日 08:33 PM 更新

デジカメからプリンタに直接印刷できる新規格「DPS」とは?

キヤノンとセイコーエプソンなど日米のデジタルカメラ/プリンタメーカー6社が、PCを介さずにデジタルカメラの画像を直接プリンタから印刷できる新規格「DPS(仮称)」を共同で策定。2日の技術説明会では新規格の仕組み策定に至った背景が説明された

 キヤノン、富士写真フイルム、Hewlett-Packard(HP)、オリンパス光学工業、セイコーエプソン、ソニーの6社は12月2日、PCを介さずにデジタルカメラの画像を直接プリンタから印刷できる新規格「DPS(仮称)」を共同で策定したと発表。同日都内で、6社による新規格の技術説明会が行われた。


説明会に集まった6社

 DPSは、画像入力デバイスと画像出力デバイスとをPCを介さずに直接接続して、さまざまなデジタルフォトソリューションを提供するためのアプリケーションレベルのインタフェース規格。“DPS”という規格名称はまだ正式決定ではないが、その意味は「Direct Print Service」「Digital Photo System」「Digital imaging Protocol print Service」などを表すという。第1弾となるDPS規格Version 1.0では、デジカメの画像をプリンタに直接印刷する“ダイレクトプリントサービス”にフォーカスした規格化を行っている。


Version 1.0では、デジカメ画像をプリンタに直接印刷する“ダイレクトプリントサービス”にフォーカス

 規格策定の背景についてキヤノン DCP開発センター副所長の櫻田信晶氏は「プリントを前提とした銀塩カメラは、撮影枚数以上のプリント需要がある。一方、年間平均約800枚の撮影枚数があるデジカメは、その70%(約560枚)がHDDなどに保存されているにもかかわらず、撮影枚数のわずか8%にあたる約65枚しかプリントされていないという調査結果がある」と語る。

 デジカメの画像は、なぜプリントされないのか。その理由について櫻田氏は「デジカメの画像は画面上で楽しめるためプリントする必要がないといった意見もあるが、最も大きな理由は“プリントするのが面倒だから”ということ。PCを使わないと印刷できない点が、プリント枚数の少なさに反映されている。逆にデジカメから簡単に印刷できれば、プリント枚数も増える」と述べる。

 デジカメから簡単に印刷するために、メーカー各社は独自のダイレクトプリント方式で製品化を進めている。しかし、独自規格ゆえに接続可能な組み合わせに制限があるなど、ユーザーにとっての利便性に欠けていた。今回の規格標準化により、DPSに対応した機器同士ならメーカーや機種に関係なく接続してPCなしでのプリントが可能になる。


DPSに対応した機器同士ならメーカーや機種に関係なく接続してPCなしでのプリントが可能に

 DPS規格では、デジカメとプリンタはUSBケーブルによって直接接続される。PCと周辺機器を接続するためのインタフェース規格として、USBは現在多くのPC関連機器に採用されている。しかしUSB接続によるデータ転送は、ホスト(親)とペリフェラル(子)という“親子関係”を前提としており、従来のホストはPCに限られていた。

 新規格では、例えばデジカメとプリンタの場合、デジカメが通常のUSBデバイスとして動作し、プリンタがUSBホスト機器として動作する。この時にDPSでは、アプリケーションレベルのインタフェースを規格化しているため、物理インタフェースなどハードウェアに依存しない。そのため、機器メーカーにとっても特別なチップを使うことなくDPSを実装できるというメリットがあるわけだ。Version 1.0では、米I3Aが策定した画像転送の標準プロトコル「PTP」(Picture Transfer Protocol)による転送を前提としている。

必要十分な機能は網羅

 だが、アプリケーションレベルでの規格化で、どの程度のことができるのだろうか。

 「まず、デジカメの液晶モニターを使って、見た画像をすぐに簡単に印刷できるほか、複数印刷やDPOF画像の自動プリント、メモリ内の全画像のインデックスプリントなどが行える。また、画像のトリミングやサイズ指定、日付印刷なども指定できる」(ソニーMNCパーソナルイメージングカンパニー1部統括部長の黒田修氏)。


デジカメ上で画像のトリミングを行って印刷することも可能

 そのほか、印刷の進行状況や、印刷ジョブやプリンタエラーの有無、用紙切れといったエラーの内容も表示することができる。つまり、「画像を印刷するための“必要にして十分”な機能は網羅されている」(黒田氏)というわけだ。

 DPSはキヤノン、HP、セイコーエプソン、ソニーの4社で規格化をスタートし、このほど富士写真フイルムとオリンパス光学工業というデジカメメーカー2社を加えて規格発表に至ったという。新規格は、ロゴ認証によって普及を図る方針で、DPSロゴ認証のための仕様書策定は、2003年5月までに完備する予定。DPS規格に準拠した製品の登場は、仕様書策定以降になるが、具体的な時期については未定という。

USB On-The-Go(OTG)との違いは?

 USBを使った周辺機器同士を接続するインタフェース規格としては、「USB On-the-Go(USB OTG)」がある(詳細は別記事を参照)。USB推進母体の「Universal Serial Bus Implementers Forum(USBIF)」が昨年12月にUSB規格の追加仕様として発表したUSB OTGは、周辺機器同士をPCなしでダイレクト接続できる点についてはDPSと同じだが、ホストとペリフェラルというUSBの“親子”関係を接続し合った2台の周辺機器にそれぞれ設定できるほか、USB OTG1.0規格に定められている標準転送レートでは12Mbpsという高速データ転送をサポートしている。

 一方、アプリケーションレベルでのインタフェース規格であるDPSはホストはプリンタに固定され、転送レートも従来のUSB1.1と同程度でしかない。より高機能なソリューションが見込めるUSB OTGを採用しなかったのはなぜだろうか。

 「今回、シェアの高い6社が集まっての規格策定だけに、ハードの仕様にまで言及すると独禁法に抵触する恐れがあった。そのため、DPSのVersion 1.0では、ハード設計は各社に任せるという方針になっている。また、USB OTGは対応チップを機器すべてに搭載しなければいけなく、コスト高にもつながる。ただし、アプリケーションレベルでDPSに対応しつつ、各社の判断で、物理インタフェースレベルでUSB OTGにも対応するといったことは可能」(セイコーエプソン情報機器企画設計部長の西澤克彦氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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