News 2002年12月6日 11:42 PM 更新

世界初の「成層圏無線中継」で見えてきた通信・放送の“新たなプラットフォーム”(2/2)


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 デジタル放送の実験ではUHF帯を使用。HDTVの高画質映像を実現するため、ビットレートは最大20Mbpsを確保し、HDTVの放送信号は日本の標準規格であるISDB-T方式準拠とした。この実験は成功し、20キロメートル上空で中継されたハイビジョンの美しい映像が、地上で見事に映し出されたという。


デジタル放送の実験構成図

 「今回の実験では、中継器からの放送信号出力はわずか1ワットだった。成層圏プラットフォームでは、非常に小さな出力でもハイビジョンの映像まで送れることが実証できた」(三浦氏)。

 一方、IMT-2000の通信実験では、机上の計算では予想できなかったトラブルに見舞われたという。

 実験システムの構成は、第3世代携帯電話システムのW-CDMA方式を使い、周波数は日本でも3Gケータイに割り当てられている周波数帯を利用。地上で送受信する端末も、一般ユーザー用として売られているFOMA音声端末やFOMAカードを使い、音声(12kbps)、動画(64kbps)、パケット通信(384Kbps)の実験を行った。


IMT-2000通信の実験構成図

 IMT-2000通信実験の最初のフライト(全体では飛行2回目)は、3時間以上に及ぶ滞空飛行にもかかわらず、通信接続実験は失敗に終わった。「トラブルの原因は、リターンリンク側の中継器受信アンテナへの同一チャンネル干渉。干渉源は200キロメートルも離れたオアフ島で運用されているGSM方式携帯電話サービスの基地局からの信号だった」(三浦氏)。

 原因が分かったため、CRLでは干渉波を影響を最小限にして利得をかせげる新しいアンテナを開発。約1カ月後のフライトでは、見事に実験を成功させたという。

 「地上ではオアフ島からの干渉波は測定されなかった。この失敗で得られた教訓は、電波の見通しはわれわれの予想以上だったということ。このことは逆に、成層圏プラットフォームの有効性を実証することにもなった。今回、世界初の成層圏無線中継実験に成功したが、次回はミリ波帯などもっと高い周波数を使って、IP接続などをやってみたい」(三浦氏)。



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[西坂真人, ITmedia]

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