News 2002年12月6日 05:58 PM 更新

っぽいかもしれない
ケレンの魅力〜「CyberModeler Handy light」

プロ向けのお堅い展示会で、ふつーのユーザー向けの3D画像の自動作成ソフトを見つけた。実売6500円ぐらいとお手頃で、これがけっこう遊べそうだ。海洋堂のフィギュアを被写体にしたコンテストも行うとかで……

 12月4−6日まで、パシフィコ横浜で開催されている「'02国際画像機器展」に、三洋電機ソフトウェア(エヌ・ティ・ティ・データ三洋システム)が「CyberModeler」というシステムを展示していた。被写体を回しながら、各方向から撮影した写真をもとに3Dオブジェクトを自動的に作成するものである(*1)。

 「CyberModeler」には2種類の製品がある。プロフェッショナル向けの(修飾語なしの)「CyberModeler」と、コンシューマ向けの「CyberModeler Handy light」とだ。もともと、国際画像機器展というのは、プロ向けの堅い展示会だ。だから、展示でメインになっているのは「CyberModeler」のほうである。


プロフェッショナル向けの「CyberModeler」

 カバが乗っかっている黒くて丸いのがターンテーブル。この上に被写体を置く。ターンテーブルはコントローラー経由でパソコン(*2)とつながっており、任意の角度で回転させることができる。これをやはりパソコンで制御されているデジタルカメラで撮影する。つまり、被写体の角度を少しずつ変えながら撮影っていうのが全自動でできるわけだ。

 被写体の後には単色のホリゾントがある。クロマキーを使って被写体を抽出するためだ。ホリゾントなしでできる画像間差分モードもあるのだけど、精度はやはりクロマキーのほうが高い。

 撮影が終ったら画像データをパソコンに取り込む。一方、どの画像が何度のアングルから撮影されたかという情報もパソコンに送られる。ここからはソフトウェアの出番だ。各画像ごとに輪郭データを抽出し、それらをもとにボクセルデータを作成、さらにポリゴンを用いた表面形状モデルを作成する(ポリゴン数は最大で1000万)。そして、最後にそのモデルにテクスチャマッピングを行う。もともとが写真だったのだから、テクスチャデータはそれがそのまま使えるわけだ。


デモ画面を撮影したものなのであまりきれいじゃない。公式サイトにきれいな「サンプル」があるので、そこを見てほしい。

 作成されたデータはSense8 NFF、WaveFront、VRMLの各フォーマットで保存できる。

 「CyberModeler」システムはとっても正統派だ。きちっと元データをとってきちっとデータを生成する。プロフェッショナルユースとしては、これは大事なことだ。価格は130万円。

 一方、「CyberModeler Handy light」(公式サイト)は、コンシューマー向けのソフトだ。価格も実売で6500円程度。こっちはずっとケレン味のあるソフトだ(*3)。実はわたしはこっちのほうが好き。


コンシューマ向けの「CyberModeler Handy light」

 なんだかいろいろ写っているけど、まず、後ろにある四角いカラーパターン。実際に使うカメラでこのパターンを一度撮影してその特性データを得る必要があるのだ。これは、そのカメラに対して1度だけやればよく、毎回やる必要はない。もちろん、三洋以外のデジカメでも構わない。

 下の円盤が撮影台。被写体はこの上に乗せて、円盤ごと回して撮影する。回すのは手。回す角度は適当でOK。ソフトウェアは、円盤に書かれた色つきの丸を使って、どの角度から撮られたデータかを認識するのだ。これがミソ。だから、撮影のときには、少し上からの角度で、円盤も一緒に写るようにしなきゃいけない。同じ理由で円盤がかくれてしまうような大きな被写体には対応しない。

 気がついたかもしれないけど、この円盤は実はCD-ROMだ。ソフトウェアの入っているCD-ROMがそのまま撮影台なのである。なんか、これすごく気に入ってしまった。こういう使いまわし感覚って好きなのだ(*4)。

 一回りで大体10カットくらい撮ればいいらしい。お望みならもっと細かくすればより細密なデータが得られる。ソフトウェア的には100カット(3.6度刻み!)まで対応している。ちょっと回して撮ってを100回やるのは大変だけど(*5)。

 光源は拡散光が望ましいけど、あんまり気にすることはないそうだ。ただし、ストロボはだめ。カメラは三脚で固定する必要はなく手持ちでも構わない(上下方向の角度が少しくらいずれても平気)。

 撮影が終わったら、画像データをパソコンに取り込んで、アプリケーションでそれを指定すれば、フルオートで3Dオブジェクトを生成してくれる。

 光沢物、透過物、(杯みたいな)凹面のある物体、あんまり複雑な形状のものは苦手だそうだ。このあたりがコンシューマ用ソフトの限界かもしれない。これはまぁしょうがない。

 しょうがないって言えないのは、出力データが独自フォーマット(SANYO ssf)のみだってことだ。いくらコンシューマ用だとは言っても、汎用データが得られなければ、ほんとにおもちゃで終わってしまう。そう思って聞いたら、いま、コンバートソフトを開発中だそうだ。完成したらサイトで公開されるそうなので、これは期待することにしよう。また、もっと大きな撮影台の円盤(直径25センチ)も計画しているそうだ。

 というわけで、このソフト、かなり気になりだしてしまった。海洋堂のフィギュアを被写体にしたコンテストも行われるようで、ちょっとやってみようかなと思っている。


*1 新製品というわけではない。ZDNetでもリリース記事が7月に出ている。
*2 Windows 95/98/ME/NT 4.0/2000/XP、Pentium/300MHz以上推奨。ハードディスクの空きは500Mバイト以上。
*3 ハードウェアの要求仕様は、(*1)の「CyberModeler」と一緒。
*4 この人なら、自動撮影装置を作ってしまうかもしれない。
*5 ソフトの不正コピー防止にもなるね。

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