News 2002年12月17日 01:55 AM 更新

未来コンピュータの研究で、着実に成果を上げる「WISS」(3/4)


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 WISSの場合には、その場にいる人同士が、チャットでコミュニケーションを取っている。もちろん、匿名ではない。その結果、その場にいて場を共有している、という感覚を参加者全員が抱くことができるのである。このチャットでは、プレゼンテーションで現れた細かな疑問点などを参加者が互いにフォローするような役割も果たしており、発表者のプレゼンテーションを妨げずに、理解を深められる。

 匿名でないので、議論が対立した場合でも、深刻な問題に発展することが少ない。実際、WISSでの運用を見てみても、110人ほどの参加者のうち、最終的には70名以上がチャットに参加したという。進行スタッフや発表者を除けば、全員に近い参加率である。

 ちなみに、このログの一部は、Wikiで作成され、現在も引き続き公開されている。ご参考いただければ、WISSの雰囲気が、さらに少しつかめるだろう。


WISS2002プログラム委員長 増井俊之氏のサイトに設置されたWikiによるWISSのログページ


チャットシステムを説明している大阪電気通信大学総合情報学部情報工学科の魚井宏高氏

 余談だが、「新世紀エヴァンゲリオン」では、近未来の中学生が学校でコンピュータを用いて授業を受けるというシーンが何度か描かれ、未来的な雰囲気を作るのに一躍買っていた。机の上にノート型のコンピュータがあり、生徒はそれを用いて授業を受けるというのである。

 あれはあれで十分未来的だと感じさせるところがあったが、あのシーンでは、単に教科書とノートの代わりにコンピュータが使われているということを描くだけで、実際にコンピュータを用いた場合に、どのように使われるのか、というところまで踏み込んだ描写にはなっていなかった。

 コンピュータの教育では、CAI(Computer Aided Instruction)という言葉があるが、単にコンピュータを○×の判定に用いるだけでなく、相互コミュニケーションに用いることができれば、教育の広がりをもたらすだろう。その意味では、相互コミュニケーションに用いているこのWISSの会場は、未来の教室を先取りしていると言えるかもしれない。学校の先生も必見、である。

 WISSに見るように、もしコンピュータとネットワークを活用した創造的な空間が作られるのだとすれば、相互作用は不可欠だ。相互作用こそが、未来を実感させるのではないか。

 プレゼンテーションも多彩で、昨今のプロジェクターの普及を反映するように、昨年は3台だったプレゼンテーションの画面が、2002年は講演用、講演サブ用(立体物などを提示する書画カメラ)、チャット用、投票用と4つに増えてパワーアップした。

 いわばWISSの会場は、それ自体が映像空間というか、バーチャルリアリティ空間というか、コンピュータネットワークの没入空間のなかなのだ。そこでリアルなプレゼンテーションが行われているわけであって、この会場そのものがWISSなのだ。

 Webを用いた投票システムでは、プレゼンテーションと同時に、その内容やプレゼンテーション内容に関する支持率がリアルタイムで会場内に表示された。

[美崎薫, ITmedia]

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