News 2002年12月17日 00:30 AM 更新

盛り上がった「お蔵入りユーザーインターフェース救済シンポジウム」(2/2)


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 この研究は、ユーザーが外部から得る刺激(情報)によって、心理的に人の肉体と物の肉体が融合することは可能か、というアイデアから生まれた。そこで、多視点カメラを切り替えることで、視野を再現しようというのである。


N社のH氏による「コンピューティングによって“人”と“物”との融合は可能か?」の予備実験で制作された多視点カメラ


多視点カメラで融合感覚を得られるか?

 ちょうど映画の「マトリックス」や「ソードフィッシュ」のように、静止画を並べて動画を作り出し、視野としようとするわけである。

 実際に、H氏は16台の小形カメラをマルチプレクサを用いて同一線上に配した試作機を作成し、HMDと組み合わせることで、視点の移動を再現した。さらに、実験車両にこのシステムを配備し、擬似的に頭部を回転する機能を作り出し、実験をしてみたという。これがうまくいけば、人は車と同一視できるような感覚を実現できるだろう、ということなのだった。

 すごい。人は車になれるかもしれない。

 だが実験の結果、残念ながら「16台程度のカメラでは擬似的なものであれ、十分な融合感覚を得ることはできなかった」(H氏)。

 だからお蔵入りしているのだが、その結果の考察によれば、融合感覚を得るためには、(1)微細であれ、水平がずれていてはいけないこと、(2)安物のCCDカメラでは色のばらつきが大きいこと、(3)左右に首を振るためには多数のカメラが必要であること、(4)人間が左右に首を振る場合には、首を振る前の動作として視線自体が先行して動くこと、などが分かったそうだ。

 予備実験として、十分な成果があったといってもよい。視線を走査したり、カメラの台数を増やして本格的に実験すれば、擬似的な融合感覚を得られる可能性は否定できないわけである。

 心理学者の吉村浩一氏と川辺千恵美氏による『逆さめがねが街をゆく』での逆さメガネ実験で知られるように、人間は逆さメガネ(上下が逆さまに映るメガネ)をかけ続けると、ある瞬間からそれが普通に見えてくる。その瞬間は2週間程度でやってくるのだ(吉村浩一氏のホームページ)。

 そうだとすれば、この実験を続ければ、車と一体化した感覚や、あるいはロボットと一体化した感覚などを得られる可能性は、少なくないのではないか。ロボットと一体化するイメージは、古くは特撮の「ジャンボーグA」や「小さなスーパーマン ガンバロン」などに見られたものだが、あの世界が実現することだってあるのかもしれないのである。

 H氏によれば、予算が続かなかったのでお蔵入りしているとのことだが、かなり残念な気もする。予算の潤沢な自動車メーカーの出馬を願いたいところだ。

 ちなみに、このH氏、ソニーのVAIO Uのディスプレイとキーボードを取り外してウェアラブルPCを自作するほどの研究熱心な方でもある。ウェアラブルPCでは、Xybernaut(ザイブナー)などの製品が知られているが、H氏によれば、「こうした既存の製品は、機能があまりにも低いので、実用になりにくい」のだそうだ。

 模型自作系の能力と、各種のプロ向け機材を使って、ほとんど製品といえるくらいの完成度をもった世界で唯一のVAIO U(ウェアラブル版)をお使いなのであった。


H氏の「ウェアラブル版VAIO U」。キーボードもディスプレイも取り外されている。仕上げも完璧

関連リンク
▼ 特集 インタフェースの冒険――WISS2002レポート:人とマシンのインタフェースはどうなっていくのか?

[美崎薫, ITmedia]

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