News 2002年12月25日 08:02 PM 更新

どうなる次世代光ディスク 最終回
普及が「2005年以降」になる理由(1/2)

順調に行けば、来年中には次世代光ディスクの製品出荷が始まる。キーパーツとなる青紫色レーザーの開発も、急ピッチで進行中だ。しかし、次世代光ディスクの普及には、しばらく時間がかかりそうというのが、業界関係者の偽らざる認識だ

 次世代光ディスクのスムーズな普及には、いくつかの課題を乗り越える必要がある。最終回はその“課題”をおさらいすると共に、取材を通じて得た情報から、初期投入時の製品価格や本格的な普及の時期を展望してみよう。

HDTVの普及が製品投入の前提

 「HDに対応したテレビは、来年には累積で300万台ぐらいになりそう。本当なら、1000万台ぐらいまで行かないと(次世代光ディスクレコーダは)商品的に苦しい。しかし、日本は、他の国と違い高額な商品でも売れてしまうという特徴がある。300万台までいけば、何とかいけそうな気もする……」。

 あるメーカーが、次世代光ディスクレコーダの製品化についてこう話していた。次世代光ディスクレコーダは、言うまでもなく「HD-TV(High Definition TV)」の再生/録画が主たる用途になる。ところが例え高画質の映像を録画しても、対応したTVがなければ現行と同等の画質(SD-TV=StanDard TV)しか得ることができない。つまり、次世代光ディスクレコーダの普及には、HD-TVに対応した高品位ディプレイがどれだけ普及しているかという点が1つのポイントになる。

 業界では、録画機器の普及のための目安の1つとして「視聴環境」、つまり、TVの普及具合が1000万台程度は必要と言われている。現在の状況からいくとHD-TVの普及はまだそれほど多くはない。

 しかし、プラズマディスプレイ(PDP)は、好調に販売実績を伸ばしており、今年1−9月までの出荷実績は、約13万台。前年比で364.8%と大きな成長を遂げ、確実に市場を形成しつつある。同様にBSデジタルテレビも約33万台、前年比193.7%と好調で、液晶TVも大画面化が進んでいるだけでなく、販売も好調だ。

 HD-TVに対応した機器は、現状を見ている限り、来年度はさらに出荷数を伸ばすだろう。国内では、比較的高価な製品でも購入する層がいることを考えると、次世代光ディスクレコーダは、第一世代の高価な製品でも“それなり”の数の販売を見込むことができそうだ。

ハリウッドと地上波デジタル放送の動向は不透明

 次世代光ディスクレコーダの普及において、実のところ最も大きな問題はコンテンツだ。高品位で魅力的なコンテンツがなければ、現在急速に普及しつつあるHDD内蔵のDVDレコーダでも十分、という話になりかねない。

 事実、BSデジタル放送がまさにそれに近い状況。BSデジタル放送受信機は、当初の予定では今頃は1000万台程度普及しているはずだった。それが今年9月時点でもまだ約150万台。あるメーカーの技術者は低迷の理由を「コンテンツに魅力がないから」と切って捨てる。

 来年から始まる予定の地上波デジタル放送も開始当初は、受信可能世帯が200万ぐらいと言われており、東京都に限っては、現行のアナログ放送との混信対策の遅れからかなり狭い範囲になると言われている。

 今のところ、2011年にアナログ放送の完全停止が予定されているが、デジタル放送への移行には、放送局側も多大な出費が必要で、実際には先の見えない状況。特に地方のローカル局では、資金繰りの問題点も指摘されており、いったいいつになったら放送が開始できるのかさえ不透明だ。これは下手をするとコンテンツがないから機器が売れない、機器が売れないから視聴者が増えないという悪循環を招きかねない。

 コンテンツに関するもう1つの問題は、ハリウッドなど映画産業の動向だ。現在のハリウッドは、DVD一色と言っていい状態。しかも、DVDはこれから先、売れば売れるだけ利益が出る構造だ。「ハリウッドは今、DVDですごく儲かっている。だから現時点では新しい技術に関心を持っているわけではない」(前出のメーカー関係者)。

 今の状況に何か変化が起らなければ、ハリウッドなど映画産業がすぐに次世代光ディスクへの移行に乗り出すという可能性は低い。結果として、次世代光ディスクレコーダは、製品の販売が開始されても、それを最も有効に活用できるコンテンツが当初は揃わない可能性がある。このため、次世代光ディスクレコーダは、現在急速に普及してきているHDD内蔵のDVDレコーダやビデオデッキを“徐々に置き換える”ことになるという公算が高いのだ。

次世代光ディスクレコーダの本格普及は2005年以降?

 早期には広範な普及が望めないという最大の理由は、なんと言ってもその価格の高さにある。当初の製品、とりわけ第一世代の価格が高くなってしまうのは、もちろん理由がある。

 まず、第一にドライブそのものの設計が難しいということ。加えて、キーパーツとなる青紫色レーザーの価格が、思ったよりも高くなってしまいそうなことがある。

[北川達也, ITmedia]

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