News | 2002年12月25日 08:02 PM 更新 |
発振時間の短さなどの問題点はすでに解決されてきているが、青紫色レーザーの量産は現在のところ開始されていない。当然だが量産開始時は、歩留まりも悪くなる。おそらく第一世代の製品では、レーザーを選別して使用することになる可能性が高い。実際、あるメーカーの技術者は、「第一世代の製品では、選別レーザーを使用することになると思う」と話していた。
選別レーザーとなれば、キーパーツとなる青紫色レーザーの単価は相当、上昇する。光磁気ディスク業界には「1:100原理」というものがあり、これは、レーザーの価格の100倍がドライブの価格になるということを意味している。例えば、レーザーの単価を5000円と想定した場合、ドライブの価格は50万円ということになる。
実際のレーザーの価格は量産が始まってみないと確かなことは言えないが、この想定と1桁変わるというようなことはないだろう。となれば、レーザーの単価から導き出されるドライブの価格は、かなり高くならざるえない。
他にもレーザー関係からみたコストアップの原因がいくつかある。まず、波長変換などを行わず純粋に405ナノメートルの波長を発振するGaN(ガリウムナイトライド)系の青紫色レーザーは、ノイズ対策等がかなり難しいということだ。この問題は以前から指摘されていたことだが、実際の製品化となれば、これによるコストアップが無視できない。事実、波長変換を行うSHG(Second Harmonic Generation)方式のメリットの1つがこの点にある。
次が、現行の赤色レーザーのDVDをサポートするかどうかである。例えばBlu-ray Discでは、ピックアップとメディアの表面までの距離がわずか0.1ミリぐらいしかなく、現行のDVDとはかなり距離が違う。このため、1つのピックアップで制御を行う場合、DVDとBlu-ray Discでこの距離を変更する必要が出てくる。
では、ピックアップを上下させるのか――そんなことをしてしまえば、制御が難しくなり、大幅なコストアップになってしまう。ちなみに、DVDフォーラムが策定中のAdvanced Optical Disc(AOD)では、対物レンズの開口数が0.65と赤色レーザーのDVDとほぼ同じであるため、両方に対応したピックアップがかなり作りやすい。これが同規格の売りの1つになっている。
いずれにせよ、405ナノメートルの青紫色レーザーと650ナノメートルの赤色レーザーの両方を1つのピックアップとしてまとめるのは、まだ時間がかかる話。事実、あるメーカーの技術者は、「当初の製品では、青紫色レーザー用のピックアップとDVD用のピックアップの2つを搭載することになるのではないか」と話していた。その技術者は「DVDでもそうだったが、当初はそのほうが(まだ)安価にドライブを作ることができる」とさえ言う。とはいえ、2つのピックアップを積むことが、コストアップ要因になることは言うまでもない。
さらにレコーダが高くなる要因がもう1点ある。それは、チューナーだ。例えば、現在BSデジタルチューナーが3万5000円ぐらいで販売されている。おそらく次世代光ディスクレコーダは、BSデジタルチューナーに加え、地上波デジタル用、アナログ放送用と3つのTVチューナーを搭載することになるだろう。こうなると搭載されるチューナーの単価だけでも相当なものだ。これがレコーダ全体で見たときのコストアップに大きく影響することは間違いない。
結果として、次世代光ディスクレコーダは、当初は定価ベースで30万円〜40万円ぐらいからスタートするのではないかというのが筆者の予想だ。これは、取材を行ったメーカーから「“常識的な価格”で出したい」という話が繰り返し出ていたことから導き出したものだ。
振り返ってみるとDVDレコーダは、当初25万円からスタートし、現在最も高価な製品でも29万8000円である。これから考えると一般のユーザーが購入できる常識的な価格は、「30万円」ぐらいということになるだろう。これに少し幅を持たせて40万円と予想したのは、レーザーの価格やDVDサポートなどのコストアップを考慮に入れたからだ。DVDの再生サポートなどを行わなければ、その分のレーザーも不要になり、コストダウンを図ることができる。つまり、どのぐらい機能を搭載するかによって、製品の価格は大きく変動する可能性がある。
また、メディアの価格は、おそらく実売で「3000円」ぐらいになるはずだ。CD-RやDVD-Rなど過去のメディアの発売当時の価格も、だいたいこのあたりからスタートしている。おそらくBlu-ray DiscやAODでも同じぐらいの価格からスタートし、販売量の増加によって価格が下がってくるということになる。
こうした状況を総合的に考えると、次世代光ディスクレコーダは、DVDレコーダやPDPが今年のサッカーワールドカップ開催によって大きく販売台数伸ばしたのと同様に、徐々に普及していき、こういったキラーコンテンツによって一気に弾みをつけるといいうことになるだろう。年を経るごとにレーザーの歩留まりも向上し、おそらくピックアップの集積化も進むはずだ。
とりあえずは、2004年にアテネオリンピックがあり、2006年にはサッカーワールドカップなどがある。このあたりで少しずつ動きが見られるはずだ。
「(次世代光ディスクレコーダが)普及していくのは2005年以降。(2003年に)次世代光ディスクレコーダが出たといってもドラスティックに変わっていくということはない。一気に普及するのは価格が安くなったときだ」(前出の技術者)。
筆者自身では、一気に普及する“時点”を、キラーコンテンツが重なる2006年が最有力と予想している。
[北川達也, ITmedia]
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