News 2003年2月27日 11:33 PM 更新

次世代薄型TVから脳の神経活動測定まで――「nano tech 2003」(1/2)

ナノテクノロジーの最先端技術が集まった「nano tech 2003」が、幕張メッセで開催。カーボンナノチューブを使った次世代薄型TVや携帯機器向け燃料電池、脳の神経活動を見ることができる計測装置などが紹介されている

 “10億分の1”の世界――「ナノテクノロジー」への取り組みが盛んだ。ナノ(1ナノは10億分の1)レベルで原子や電子を活用するナノ材料・加工技術によって開発された新素材や新技術は、これまで限界とされてきた技術開発のブレークスルーにつながったり、IT、エレクトロニクス、医療、バイオなどさまざまな分野での応用が期待されている。

 幕張メッセで2月26日から開催している展示会「nano tech 2003」には、これらナノテクノロジーの最先端技術が集まった。


幕張メッセで開催しているナノテクノロジーの総合展示会「nano tech 2003」

次世代薄型TVにもナノ技術

 ナノテクノロジーを代表する素材といえば、「カーボンナノチューブ」。特にエレクトロニクス業界では、高性能チップを開発する上での“シリコンに代わる半導体材料”として有望視されている。

 熱伝導性/電導性/強度などで優れた特性を持つこの新素材は、そのほかにもさまざまな応用が期待されているが、中でも近年注目が集まっているのが「FED(Field Emission Display:電界放出ディスプレイ)」への応用だ。

 産業技術総合研究所とノリタケカンパニーリミテド(ノリタケ伊勢電子)が共同出展していたのが、カーボンナノチューブFED。文字表示用途では世界最大となる40インチの試作機を展示していた。「印刷法によるナノチューブ電子放出源の作成技術によって大画面が可能になった」(ノリタケ伊勢電子)。


世界最大40インチのカーボンナノチューブFED

 カーボンナノチューブFEDは、ナノチューブに電圧をかけることで発生する放射状の電子を蛍光スクリーンに当てて光らせる仕組み。電子銃を使ったCRTと原理的には同じため、広視野角で発色に優れ、画面応答も速い。さらに今回の試作機は、スクリーンサイズが868.7(幅)×518.2(高さ)ミリと大画面ながら、厚さはわずか7ミリしかない。つまり、CRT並みの高画質ながら、厚さわずか1センチ弱という“夢の大画面薄型TV”が可能になるのだ。

 実用化への課題は、解像度の向上と駆動電圧の低減。試作機の解像度は342×204ピクセルとTV用途にはまだ不十分で、駆動電圧も目標の50ボルトには届いていないという。「駆動電圧が高いと高価な回路を使用しなければならず、コスト面で不利。そのほかにも克服すべき課題は多く、製品化の時期も未定。だが、10年後というような遠い将来ではない」(ノリタケ伊勢電子)。

ナノ技術を活用した携帯機器向け燃料電池――NECと日立

 NECブースでは、カーボンナノチューブの発展形である「カーボンナノホーン」を電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池を紹介。同社のTablet PC「Lavie TB」を燃料電池で実際に動作させるデモンストレーションが行われていた。


Tablet PC「Lavie TB」を燃料電池で動作させるデモ

 同社の燃料電池は、燃料としてメタノール(水溶液)を直接供給するダイレクトメタノール方式。「メタノールを触媒で水素イオンと電子に分解して電気を発生させる。電解質膜を通過した水素イオンは再び触媒で電子や空気(酸素)と結びついて水(水蒸気)となって空気中に放出される」(同社)。


同社の燃料電池の仕組み

 この方式では、メタノールを分解・組成する役割を担う触媒が重要になってくる。従来の触媒は、活性炭のような表面積の大きいカーボンに白金の微粒子をまぶして使うのだが、白金粒子は常温でくっつきあうので、粒が大きくなって触媒性能が落ちてしまうという問題があった。

[西坂真人, ITmedia]

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