News 2003年2月27日 11:37 PM 更新

次世代薄型TVから脳の神経活動測定まで――「nano tech 2003」(2/2)


前のページ

 「触媒としては表面積が大きい方がいい。そのためには、白金粒子は小さくなければならない。カーボンナノホーンは、栗のイガのような複雑な構造になっており、白金粒子が細かいまま定着する。表面積が広くなることで触媒の性能も向上し、それが燃料電池のエネルギー容量向上につながる」(同社)


燃料電池が実用化された際のノートPCをイメージしたモックアップ

 最終的には、現在のバッテリと同じ大きさのカートリッジ式にして、ユーザーが自由に交換できるようなコンパクトなシステムを目指しているという。ブースでは、燃料電池が実用化された際のノートPCをイメージしたモックアップも紹介されていた。「2004年末の実用化を目指している。製品としては最初にノートPCから搭載される予定。2005年には携帯電話にも採用していく」(同社)。


カートリッジにはメタノールの液体が封入される。モックアップでは燃料の減り具合が目視できるスケルトン仕様になっていた

 燃料電池は、日立製作所のブースでも紹介されていた。この燃料電池も、NECと同じダイレクトメタノール方式。「触媒となる金属をナノ分子化して分散させ、粒子の凝集を防ぐ仕組みに工夫を凝らしている。また、従来は電解質膜にフッ素系素材を使うケースが多いが、当社のは炭化水素系素材を使ってメタノールの透過を防ぎ、性能向上を図っている。実用化は2005年を目標としている」(同社)。


背面に燃料電池を搭載した試作機(左)と、実際に燃料電池で動作していたPDA(右)

脳の神経活動を見ることができる脳磁界計測装置

 ナノテクノロジーは、“思考”の科学的な解析にも活躍している。通信総合研究所(CRL)は、脳の神経活動を見ることができる脳磁界計測装置を紹介していた。


脳の神経活動を見ることができる脳磁界計測装置

 脳が反応する時、脳内の神経細胞に微細な電流が流れ、弱い磁場(脳磁界)を生じることが知られている。この磁場の変化を精密に測定し、分析できれば、脳機能の研究が飛躍的に発展する可能性があるのだ。しかし、脳の神経電流がつくる磁場は地球磁場の1億分の1程度と極めて弱く、さらに一般環境には車や電車など測定を妨げる磁場雑音が多いため、その測定は非常に困難だった。

 「従来、脳磁界の測定には大規模な磁気シールドルームが必要だった。また、良好なデータを得るためには車の通行がない場所で、しかも電車が走らない深夜に限定されていた」(CRL)。

 CRLが開発した新しい脳磁界計測装置は、ナノテクノロジーに基づく「超伝導SNS電子波素子」を応用した「SQUIDセンサー(超伝導量子干渉素子)」と、周囲の雑音をさえぎる超伝導体の円筒「超伝導磁気シールド」を採用した。


CRLが開発した脳磁界計測装置の仕組み

 「低周波雑音の小さいSNS電子波素子の特性と、超伝導磁気シールドの効果によって、1ヘルツ以下の磁気雑音成分を遮断。市街地にある病院や大学や会社の研究室など、ごく普通の環境でも高感度な脳磁界計測装置が利用できる」(CRL)。

 この装置での測定結果は、脳の深部に電極を挿して調べた動物実験と近い結果が得られたという。「脳の深い位置での働きを調べることで、記憶/学習/注意といった脳機能のメカニズムが分析できる。注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、学習障害(LD)、精神分裂症など脳機能の障害によるものといわれている病気の解明にも役立つだろう」(CRL)。

関連リンク
▼ nano tech 2003

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/2 | 最初のページ