News | 2003年3月5日 00:05 AM 更新 |
ICカードとRFIDに関する総合展示会「IC CARD WORLD 2003」が、3月4日から東京ビッグサイトで開催。近年、普及が著しい非接触型ICカードの最新動向が紹介されている。
国内の非接触ICカードでは、JR東日本のICカード乗車券「Suica」やプリペイド型電子マネー「Edy」に使われている「FeliCa」が、普及数・認知度の両面で他の方式を圧倒している。展示会場内の飲食店や自動販売機などではEdyのリーダ/ライタが設置され、来場者は小銭要らずの電子マネー体験を通じてFeliCaの便利さを実感していた。
FeliCaリーダ機能内蔵CLIEは、“NFC”への布石
FeliCa普及を推し進めるソニーのブースでは、2月に発売されたばかりのFeliCaリーダ機能内蔵CLIE「PEG-NZ90」を使ったFeliCa活用例とともに、Felicaをベースにした近距離無線通信技術の新規格「NFC(Near Field Communication)」を紹介していた。
FeliCaは日本国内や一部のアジア地域では普及が進んでいるものの、ワールドワイドでは蘭Royal Philips Electronicsが開発した非接触ICカードシステム「Mifare」が、各種交通機関やVISAカードといった金融機関などで広く採用されている。両方式は通信周波数は同じながらプロトコルが異なるため、これまでは互換性がなかった。
NFCは、ソニーとPhilipsが昨年9月に発表したもの。FeliCaとMifareの2方式のプロトコルをサポートするほか、NFC機器同士での通信を可能にする機器間通信プロトコルを備えた。NFCチップを搭載した携帯電話/PDA/デジタルカメラなどの機器間では、最大424Kbpsの無線通信が行える(規格策定当初の通信速度は212Kbps)。
「NFCはFeliCaとMifareのリーダにもなるほか、カードSAM(Secure Application Module)を装備することでNFC搭載機器自身が非接触型ICカードになる。FeliCaリーダ機能内蔵CLIEもNFCを搭載すれば、PDAがICカード代わりになる」(ソニー)。
つまり、PDAでFeliCaのデータを読み出せるFeliCaリーダ機能内蔵CLIEは、将来登場するNFC機器の布石だったわけだ。CLIEとNFCの開発グループが違うため、実際にCLIEにNFCが載るかは未定だが「可能性は十分ある」(ソニー)。NFCチップの生産は2004年の第2四半期から始まり、携帯電話やPDAなど情報機器への搭載は2005年からになる見込みだ。
“公開鍵”でFeliCaに挑むNTT
FeliCaの独走に、他社が指をくわえて黙って見ているわけではない。ソニーの牙城を崩すべくNTTが開発したのが、公開鍵暗号方式を使った非接触ICカード。NTTコミュニケーションズのブースでは、その次世代型多目的利用ICカード「eLWISE」を紹介していた。
FeliCaに使われている暗号方式は、カード間で同じマスター鍵を使う「共通鍵方式」を採用している。この方式はカード単価が安くて決済時間が短いというメリットがあるが、リーダ側に共通鍵管理用の専用装置が必要で、仮にこの鍵が解読されると、その影響はシステム全体に及ぶという問題があった。
NTTの公開鍵暗号方式は、リーダ側に組み込む公開鍵と、カード側の秘密鍵という2種類の鍵でセキュリティを確保する。「暗証を解除するリーダ側の鍵を公開できるので鍵管理の手間を大幅に減らすことができ、またカードごとに秘密鍵が異なるので、仮に鍵を解読されても被害はカード1枚で済む」(NTT)。
問題は、公開鍵方式はアルゴリズムが複雑になるため、共通鍵方式に比べて読み取りに時間がかかることだが、NTTでは高性能ICカードの採用やアルゴリズムの高速化などで共通鍵方式と同等の読み取りスピードを確保。さらにシステム全体の高速化により、交通系システムに組み込んだ場合の支払い処理時間は「世界最速」(NTT)となる0.08秒以下を実現した。
「無線方式は、国際標準で住民基本台帳向けネットワークカードの仕様にも準拠したISO/IEC 14443(Type-B)を採用しているので、応用範囲は広い。交通系や電子マネーだけでなく、電子チケットや商店のポイントサービスなどさまざまな用途に利用できる。FeliCaの市場に食い込んでいきたい」(NTT)。
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[西坂真人, ITmedia]
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