News 2003年3月10日 06:22 PM 更新

次期Photoshopの機能を先取り――Adobe Camera RAW & JPEG2000(1/2)

PhotoshopにデジカメのRAWデータ現像機能とJPEG2000サポートを追加するためのプラグインが4月上旬、アドビからリリースされる。使い勝手の悪いメーカー純正のRAW現像ツールを使っているユーザーには福音と言えるこの製品の機能を、β版をベースに紹介しよう

 先日、アドビシステムズから「Adobe Photoshop Camera RAW & JPEG 2000」が発表された。Photoshopの現行バージョンである7.0.1に組み込むプラグインソフトで、デジタルカメラのCCD(あるいはCMOS)センサーのRAWデータを現像する機能と、JPEG2000形式で読み書きする機能を追加するためのものだ。

 アドビはこの製品が、継続的にバージョンアップを行っていく製品ではなく、次のPhotoshopで取り込む機能を先行提供するものだと話している。つまり、これらの機能の機能アップやサポート機種の増加を希望する場合、単体のバージョンアップサポートはなく、Photoshop自身をバージョンアップしなければならない。価格は1万2800円で発売は4月上旬。主要な機種に関しては、今後もサポートを追加していく。なお、次期Photoshopは、10‐12カ月ほど先のリリースが予定されている。

 しかし、そうした点を考慮してもAdobe Photoshop Camera RAW & JPEG 2000は魅力的な製品だ。もちろん、JPEG 2000のサポートを必要とするユーザーにとって有益なのは当然だが、デジタルカメラの上級ユーザー、中でもキヤノン製や富士写真フイルム製のデジタルカメラユーザーにとっては福音となるはずだ。ここではCamera RAW現像機能にフォーカスを当てて、β版の機能を紹介する。

Camera RAWとは?

 まずRAWデータについて簡単に説明しておこう。Camera RAWデータとは、デジタルカメラの撮像素子(CCDセンサーやCMOSセンサー)から得られた信号をそのまま記録したものである。イメージセンサーは通常、各画素ごと完全な情報を持っているわけではなく、画素ごとに異なるカラーフィルタを通して得られた信号しか持たない。例えば、減色カラーフィルタの場合、4個の画素は2個のグリーンと1個ずつのレッドとブルー画素によって構成される。

 デジタルカメラは、こうした不完全な情報から色情報を補完し、完全なカラーイメージを生成しなければならない。その処理を撮影時に行い、JPEG画像として保存することが多いが、カメラの中には処理前のイメージセンサーから読み取った情報をそのまま記録できるものもある。そのデータのことをRAW(生)データと言うのだ。

 ただしRAWデータには決まった形式が存在しないため、カメラメーカーや機種によってフォーマットの互換性がない。たとえ形式が共通だったとしても、カラーフィルタの分光特性やセンサーの過渡特性は機種ごとに異なるため、JPEGのように扱うことはできない。

 しかしRAWデータには長所もある。まず、後処理で時間をかけてイメージを生成できるため、複雑なアルゴリズムを用いてより画質重視の処理を行うことが可能だ。また、ホワイトバランスの調整や露出補正、増感処理を行う前の素材データであるため、後処理の段階でそれらのパラメータを変更できる。さらにRAWデータには、各色12ビット程度の階調があり、各色8ビットのJPEGデータよりも多くの階調が存在する。

 このため、画質を重視する場合や失敗が許されない場合は、RAWデータで撮影されることが多い。

RAWを独自に分析して現像処理

 RAWデータはメーカーごと、機種ごとに互換性がないが、アドビはRAWデータを独自の処理アルゴリズムでPhotoshopに直接画像を生成することを目的に、このプラグインを開発した。アドビによると、一部のカラーフィルタやセンサー特性の情報をメーカーから得ているものの、基本的にはカメラの生成するRAWデータを分析し、現像することに成功しているという。

 カメラ純正ではない現像ツールということで、色の違いなどが気になるところだが、基準となるカラーチャートでのマッチングを機種ごとに取り、色を合わせているそうだ。写真としての見栄えを重視した絵作りを求められるカメラメーカーの現像ツールよりも、むしろ正確な色再現が期待できるかもしれない。

 機能面も期待していい。現像パラメータは多彩で、ホワイトバランスはもちろん、露出補正、シャドウのレベル、明るさ、コントラスト、彩度、シャープさ、色変化の滑らかさなどがスライダーバーで選択でき、現像時に写真を回転させることもできる。出力画像の色空間はsRGB以外にAdobe RGB、ColorMatch RGB、ProPhoto RGBを選択でき、チャンネルあたりの深度も8ビットだけでなく、16ビットを選択可能だ。

 画面上に表示されるプレビューは、設定した現像パラメータはもちろん、モニタのICCプロファイルを考慮して補正されたものだ。このため、きちんとキャリブレートした環境ならば細かく露出やホワイトバランス、色の濃さなどを調整し、それを画面上で確認しながら現像作業を行える。作業の参考値として、ヒストグラムを表示させることもできる。


現像ツールのインタフェースはPhotoshopの他の機能と共通。ヒストグラムも表示できる


こちらはJPEG 2000の出力パラメータ

 またイメージセンサーの画素よりも多い、あるいは少ない画像を出力するオプションもある。実画素よりも多く(オーバーサンプルして)出力すると、ボケて中身のないデータになるだろうと想像するかもしれない。実際、2倍の画素で出力したからと言って、2倍の情報量を得られるわけではないが、後処理で拡大する場合よりも明らかに高い品質のデータを得られる。

 どの程度までオーバーサンプルできるかは、元画像の画素数によって異なるが、D60のRAWデータの場合は4096×2731あるいは5120×3413といった解像度が選択肢として現れた。

[本田雅一, ITmedia]

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