News | 2003年3月10日 06:22 PM 更新 |
本来はワークフロー簡略化のためにあるツールだが……
本製品は本来、ワークフローを簡略化するためのツールである。RAW現像ツールを用いて現像を行い、その結果をPhotoshopで読み込んで処理していたのが従来。それがAdobe Photoshop Camera RAW & JPEG 2000を使うことで、Photoshop単体で処理可能になる。
しかし、キヤノンや富士写真フィルムなど、RAW現像ツールの使い勝手やパフォーマンスが悪いメーカーのカメラを使っているユーザーにとっては、ワークフローの簡略化という以上に、純正ツールに取って代わるプラグインとして重要な製品となるだろう。
特にキヤノンのRAW Image Converterは使い勝手が悪い上、サムネイル表示が不快なほど遅く、EOS D60、D30、Powershotシリーズ用のコンバータは現像速度も非常に遅い。その上、生成後のJPEGデータにExif情報が付加されないなど、重大な問題を抱えたまま、今まで改善が図られていない。
このため、キヤノンのデジタル一眼レフユーザーの中には「RAWデータは重くて使い物にならない」と感じている人も多いようだが、今時のPCのパフォーマンスであれば通常は問題にならない。問題なのは純正ツールのソフトウェア的な性能である。RAWデータによる現像処理に興味があるキヤノンユーザーには、是非ともこのプラグインを入手するよう勧めたい。もちろん、Exifデータが引き継がれたり、色温度の数値データでの入力や細かなパラメータの設定しやすさなど、基本的な部分はキッチリと押さえられている。
本製品のサムネイル生成速度はJPEGファイルを処理するときと同等で、現像処理も600万画素クラスなら2.5秒ほどで終わってしまう(Pentium 4/3.06GHz使用時)。Pentium IIIクラスのノートPCで使う場合でも、10秒と現像時間にかかることは無かった。
今までRAWデータの処理が重すぎると諦めていた、あるいは評価していなかった人も再評価する価値がある。またメーカー製のRAW現像ツールがsRGBしかサポートしていない場合でも、本製品を使えばより広い色域で現像できる。この点も長所と言えるだろう。
良い意味でも、悪い意味でも、カメラとは異なる画質に
ただし現像ツールが変わるため、本来カメラメーカーが意図していた絵作り、画質と、Adobe Photoshop Camera RAW & JPEG 2000の絵作り、画質は異なるものだ。ケースバイケースであるため、画質の優劣に関してここでは言及しないが、メーカー純正の現像ツールとは異なる画質になることだけは間違いない。
傾向としてはAdobe Photoshop Camera RAWの方がローノイズで、シャープなメリハリのある絵になるように感じる(ニコンD1x、キヤノンD60の場合)。特にD1xの場合、ニコンキャプチャを用いた場合よりも長方画素による悪影響が出にくく、高感度モード時のノイズも少ないなどのメリットが感じられた。シャープと言っても、フィルタで無理にエッジを作った風ではなく不自然さはない。
また色が純正ツールとは異なって出力される。例えばPowershot S30の場合、純正ツールが暖色傾向に振れがちなのに対して、Adobe Photoshop Camera RAWの方は同じホワイトバランス設定でもニュートラルに近くなる。メーカー間の色の差が小さくなる傾向を感じるため、異なるメーカーのカメラで撮影されたデータのトーンを合わせるのにもいいかもしれない。
一方で、カメラ自身の味や特徴は多少失われてしまうため、人によっては嫌いという意見もあるかもしれない。良い意味でも、悪い意味でも、本来のカメラとは異なる絵作りになることは覚悟しておく方がいい(なお、例はD60とS30のデータを用いている。D1xのデータは筆者の撮影したデータではなかったため掲載できない)。
[本田雅一, ITmedia]
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