News 2003年3月20日 08:25 PM 更新

eMachines、復活の秘密は「ネットから店頭販売へのシフト」

eMachinesの日本進出から4カ月。そのセールスは計画を大幅に上回るペースで推移しているようだ。来日したセールス・サポート担当の上席副社長に、同社成功の秘密を聞いた

 米市場で急伸し、小売販売台数第2位になったeMachines。日本市場には昨年12月に進出したばかりだが、「4万9800円PC」のインパクトが功を奏し、「PC売り上げの伸びは倍では利かない」(提携先の九十九電機関係者)といった声が出るほど好調だという。

 その同社でセールス、サポートに携わるMichael Zimmerman氏(Customer Care & Quality担当 Senior Vice President)がこのほど来日。ZDNetでは同社好調の秘密や、日本におけるサポート体制などについて話を聞いた。


Customer Care & Quality Senior Vice PresidentのMichael Zimmerman氏

復活の4つの理由

 まず日本市場でのこの4カ月の成果について、Zimmerman氏は「早期成長に満足するとともに非常に驚いている」と評価する。初期計画では「月間販売台数3000台」だったのが、実際には月5000−1万台で推移しているという。

 日米ともに絶好調と言えそうなeMachinesだが、これまで決して順風満帆で来たわけではない。1998年から1999年にかけて急成長した同社は、米PC市場の冷え込みを受けて業績が急激に悪化。身売りが検討されたものの買い手すらつかず、2001年11月に当時の役員の一人が買収してなんとか存続できたほどだった。

 それが2002年のわずか1年間で急速に復活を遂げた。Zimmerman氏はその理由として4つ挙げる。「旧経営陣が退場したこと。ビジネスモデルを変化させたこと。PCのデザインを変更したこと。そして高品質なカスタマーサポートを提供できたことだ」。

 このうち「ビジネスモデルの変化」とは、意外にも“ライバル”のデルコンピュータと逆のアプローチ、「店頭小売販売の重視」路線を採ったことだった。「eMachines経営陣のほとんどは店頭販売を経験してきている。そのノウハウを生かした」。

 とはいえ、デルコンピュータは綿密な在庫コントロールとあわせて、販売チャネルをネットに絞ることで、販売関連コストを圧縮。高い価格競争力を生み出している。店頭販売方式はコスト面で不利に働くのではないだろうか。

 こうした懸念をZimmerman氏は「われわれはこの方式でも利益を生み出すことができている」と一蹴する。それどころか、店頭販売で直接ユーザーと接触するメリットを強調。「店頭でユーザーの意見を確認し、その内容を次の製品開発にフィードバックしている」と、店頭販売こそがeMachinesの強さの秘密と考えている様子だった。


サポートナンバーと製品IDをフロントに添付してある。ユーザーの意見を反映した「ユーザーフレンドリーな改良」の1つだ。eMachinesの製品でよく言われる「大きいきょう体なので、省スペース性に劣る」というのも、「ユーザーがメモリやHDDの増設で作業が行いやすいように」大きめのケースを採用したためという

販売員のレベルが重要

 店頭販売というと、外資系PCベンダーからは「日本のユーザーの嗜好と流通は特殊」という声がよく聞かれるが、eMachinesではこれについてどう感じているのだろうか。

 「流通事情は、米国とそれほど違いはない。ユーザーも、PCに詳しい人が多く、かつハイパフォーマンスを求めているなど、米国とそれほど変わりはない。だから、製品企画や販売の手法は、米国のそれとほとんど同じ」。Zimmerman氏の答えはちょっと意外なものだった。

 ちなみに同社がパートナーとして九十九電機と石丸電気を選んだのは「ともにPCの販売経験が長く、販売員のレベルも高かった」から。店頭販売を重視するeMachinesとしては、販売員のレベルが非常に重要になってくるわけだ。

 試しに九十九電機本店で、製品についての細かい質問(AGPスロットの有無、添付ソフトやOSの組み合わせ、サポートオプションなど)をしてみたが、すべてきちんと答えてくれた。グラフィックス機能の拡張手段として、PCIバス対応のビデオカードを勧めてきたあたりは(マニュアルがあるにしても)さすがだ。

 この販売員教育について、eMachinesは製品データを販売店に渡すのみで、実際の教育は販売店に任せている。ただし、クオリティチェックはeMachines自ら行っており、その方法は「あなた(記者)のように、店頭でお客のフリをして質問します」(Zimmerman氏)とのことだった。

10人体制の電話サポート

 日本のユーザーが外資系PCベンダーで不安に感じるのが「手厚いサポートをしてくれるかどうか」だ。この点、eMachinesは電話、メール、チャットと、3つのアクセスチャネルで365日、6:00〜24:00という、ほぼフルアクセス対応を提供している。

 とはいえ問題はその中身。十分な人員がいないと、電話が繋がるまでかなり待たされたりして、かえって不満が募るものだからだ。

 eMachinesは日本におけるサポート体制をこれまで明らかにしてこなかったが、Zimmerman氏は今回、その概要を教えてくれた。「サポートセンターにかかってくる電話は1日平均50件程度。この件数にあわせて、今は10人以内で対応している。これでほとんどの電話は平均1分以内で応答できている。1件あたりの対応時間は平均で15分程度」(同氏)。

ノートPCは「1カ月後に概要を発表予定」

 製品ラインアップでは、米国で販売されているAthlon XP搭載モデルが、日本では投入されていない。これについては「ユーザーの要望があれば、当然販売する」。しかし、Zimmerman氏によれば「今のところそのような要望がない」とのことで、日本におけるAthlon XP搭載モデルの投入はしばらくなさそうだ。

 また、以前から噂のあったノートPCについては、第2四半期に投入予定。ただし、3スピンドルのデスクノートか、2スピンドルのA4スリムノートかは「検討中で、現段階では答えられない」(Zimmerman氏)。その答えは30日後に米国で予定している説明会で明らかになる予定だ。



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[長浜和也, ITmedia]

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