News 2003年4月18日 11:59 PM 更新

回収対象PCに“グレーゾーン”――判断基準で課題の残る「PCリサイクルシステム」

今年10月1日から「家庭系PCの自主回収・再資源化システム」がスタートする。電子情報技術産業協会(JEITA)が、同システムについて説明会を行った

 電子情報技術産業協会(JEITA)は4月18日、今年10月1日からスタートする「家庭系PCの自主回収・再資源化システム」について、都内で説明会を行った。

 資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」として、PCの回収・再資源化が2001年4月からスタートしている。すでに事業用PCは省令で同法の対象になっていたが、家庭用PCはこれまで対象となっていなかった。それが4月7日に環境/経済産業両省が省令を改正して家庭用PCが同法の対象に追加。これを受け、JEITAが旗振り役となって、メーカーによる家庭系PCの自主回収・再資源化システムを構築することが4月7日に正式決定されたのだ。

 資源有効利用促進法では、各メーカーは自社で設置した「指定回収場所」に持ち込まれた自社のパソコンを引き取り、再資源化することが定められている。

 「だが家庭系PCは購入者の持ち帰りが多く、流通経路も複雑で多岐にわたる。そして、新品購入とそれまで使っていたPCの廃棄が、必ずしも同時に行われるとは限らない。そのため、販売店を経由しないメーカー独自の回収システムを構築する必要があった」(JEITA)。

 メーカーによる回収・再資源化は今年10月1日からスタートする予定だが、回収するPCは日本郵政公社が小包便「ゆうパック」として取り扱うことが決められた(別記事を参照)。


回収システム図

 「全国的なネットワークを持ち、かつ宅配機能を有する民間の宅配事業4社と日本郵政公社を回収ルートの候補として選び、JEITAから見積もりを請求。コスト面/指定回収場所となる拠点の数/サービス可能地域の広さなどから、最終的に日本郵政公社を採用した」(JEITA)。

 日本郵政公社との提携によって家庭系PCの回収・再資源化システムを構築するPCメーカーは以下の21社だ。

 東芝/富士通/日立製作所/日本電気/日本アイ・ビー・エム/三菱電機インフォメーションテクノロジー/沖電気工業/ソニー/セイコーエプソン/松下電器産業/シャープ/三洋電機/リコー/カシオ計算機/日本ヒューレットパッカード/日本ユニシス/ソーテック/NEC三菱電機ビジュアルシステムズ/ナナオ/アップルコンピュータ/デルコンピュータ。

 料金システムは、リサイクルや回収の費用を製品価格に上乗せする方式で行う方針で、メーカーに無償回収が義務付けられる10月1日以降販売の家庭向けPCには、JEITAが策定した各メーカー共通の「PCリサイクルマーク」が付けられる。ただし、上乗せ前(9月30日以前)に販売したPCの回収については、各メーカーが一定額を徴収できるシステムとなっている。有償時のリサイクル費用は、今後各メーカーで検討される予定だ。


各メーカー共通の「PCリサイクルマーク」

回収対象PCに“グレーゾーン”――判断基準に課題多し

 回収対象となる製品は、各メーカーで販売した家庭向けのデスクトップPC/ノートPC/PC用ディスプレイ(CRTおよび液晶ディスプレイ)。プリンターやスキャナなどの周辺機器や、ワープロ専用機、PDAなどは回収対象となならない。

 「そのほか、回収の対象とならないものは、倒産企業やPC事業を撤退したメーカーの製品、個人輸入品、そして自作PCなど。これらは『義務者不在』として扱われ、今回のシステムでは回収できないため、これまで通り、粗大ゴミとして自治体などに廃棄を依頼することになる」(JEITA)。

 ただし、現状では回収対象PCの判断基準が非常にあいまいとなっている。例えば、最近増えているホームサーバやセットトップボックスのような「中身はPCだがパーソナルコンピュータと呼ばれていない製品」は、回収対象とならないケースも出てくるという。

 また、ユーザーが購入後に周辺機器を増設したり、回収前にメモリやHDDなど使えそうな部品を取り除いてから排出した場合に回収対象となるかの判断は、各メーカーの判断に任されるなど、不確定要素も多い。さらに、事業者系PCと家庭系PCを、どう明確に区分けしていくかといった問題もある。

 「10月1日のシステム施行以降、粗大ゴミとしてのPC回収を取りやめる自治体も出てくる可能性もある。そうなると、自作PCなど『義務者不在』の製品の廃棄方法が断たれてしまう。このような多くの課題については、各メーカーや国(環境/経済産業両省)などと協議を重ね、慎重に決めていきたい」(JEITA)。

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関連リンク
▼ PCリサイクル関連サイト
▼ 電子情報技術産業協会(JEITA)

[西坂真人, ITmedia]

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