News:アンカーデスク | 2003年4月21日 01:58 PM 更新 |
先々週NAB取材のため渡米した際、ラスベガスはマッカラン空港にてHertzのレンタカーを借りた。そのフォードのバンには、衛星デジタルラジオの受信機が備え付けてあった。今年の初め、やはりラスベガスで行なわれたCESの会場で、衛星デジタルラジオのチューナーをかなり大々的にプロモーションしていたのだが、実際に使ってみるのはこれが初めてである。
放送事業に関して言えば、USという国は日本とはまるで対照的だ。日本では中央のコンテンツをいかにして地方の隅々にまで行き渡らせるかがイノチだが、USではテレビもラジオも地方局の独立心が強く、それぞれが非常に充実したコンテンツを制作している。
今回US対応の携帯ラジオを持ってったのだが、ラスベガス市内でチューニングしてみると、優に10局以上のFM放送が受信できる。各局がそれぞれに強い特徴を持っており、ラップ専門、ラテン専門スペイン語放送、女性ボーカル専門、メタル・ハードロック専門など、好みに応じた選択ができる。筆者のお気に入りは、80年代のロックを一日中放送し続ける『LasVegas 80's』だ。
だがこのFM局が威力を発揮するのは、市内だけ。ご存じのようにFM波は到達距離が短いので、ちょっと郊外までドライブすると、すぐに聞こえなくなる。これが日本ならば、すぐ隣の市からの電波が入ってくるので、チューニングすれば別の局が見つかるだろう。しかしラスベガスのような砂漠の真ん中に突然現われた蜃気楼のような街では、隣の市ははるか彼方だ。
基本的にアメリカ人は、車の運転が大好きだ。LAからラスベガスまでハイウェイを車でぶっ飛ばしてくるなんてのは、それほど苦痛でもないらしい。レンタルした車もカリフォルニア州のナンバープレートが付いていたので、おそらくそんなところだろう。直線距離でだいたい400キロぐらいである。東京−大阪間がだいたいそんな距離だが、ちょっと車で東京から大阪まで行ってくれなんて言われたら、日本人なら「そらあ、めんどいねぇ」と思う距離である。
さらにラスベガスの周りのハイウエイときたら、どこまで行ってもポロポロした石ころ平原とやる気なさげに生えているペンペン草みたいなのしかない。そんなところを延々400キロもラジオなしで走るってのは、ずいぶんと退屈な仕事である。
そこで衛星デジタルラジオなのである。とにかく空が見えさえすればどんなところだろうが受信できる衛星デジタルラジオが、米国の地方都市に住み、常時長距離を運転する人にとって必需品とも言える存在となっていったのは、想像に難くない。
デスバレーでも快適
衛星ラジオは、日本でまだ馴染みのないサービスなので、米国の事情をちょっと整理しておこう。
現在USには衛星デジタルラジオ局として、SiriusとXMの2社がある。それぞれのチャンネル数は、Siriusが102ch以上に対してXMが101ch。XMの1chは、別料金のアダルトチャンネルである。
チャンネルの内訳は、それこそ地方FMをさらに細分化したような感じで、ポピュラーで10ch、ロックで15ch、カントリー5chといった調子だ。もちろん音楽だけでなく、ニュースで15ch、スポーツで6chと、自分の好みに合うチャンネルを選び放題である。
衛星はそれぞれの会社が独自の衛星を打ち上げている。Siriusの方が周回衛星3機、XMの方が静止衛星2機だそうだ。
衛星自体はSiriusの方が先に打ち上げられたのだが、周回衛星からの受信を制御するチップの開発はなかなか難しかったらしく、衛星打ち上げが1年送れたXMのほうが先にサービスが始まるというケチが付いてしまった。だが周回衛星で4機という数がモノを言って、Siriusのほうがビルの谷間などでの受信制約は少ないという。
Hertzレンタカーに装備されていたのは、Siriusのほうだ。カーコンポーネントから横に飛び出すように付いているのがチューナー、天井には無指向性アンテナが取り付けてある。使い方は簡単で、チャンネルボタンをアップダウンするだけ。チューニングと同時に現在OA中の曲名とアーティスト名が、チューナーのディスプレイに表示される。
ラスベガス入りした2日目がまだ日曜日だったので、ラスベガスから車で3時間という距離にあるデスバレーまでドライブとしゃれこんだ。もちろんSiriusで80'sロックチャンネルかけっぱなしである。
[小寺信良, ITmedia]
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